Q 公益通報者保護法の関係で、企業は社員等に対しどんな研修をすべきですか。
2026/08/17 更新
公益通報窓口(に従事する者)
(1)公益通報者保護法により、常時雇用する労働者が300人以上の事業主は、公益通報窓口(に従事する者)を定めなければなりません(公益通報者保護法11条3項)。
令和8年12月1日より、公益通報の窓口の周知が義務付けられます(公益通報者保護法11条2項)。
(2)公益通報窓口に従事する者は、公益通報の実行を確保するための措置をとる必要があります。
この義務の一環として適切な研修をすることが必要になります。
企業は社員等に対しどんな研修をすべきか
1 対象者
(1)労働者、派遣労働者、役員、退職者が対象です。
(2)令和8年12月1日より、フリーランスも追加すべきかもしれません。
2 内容
以下のような公益通報についての基本的な知識を説明することになるでしょう。
公益通報窓口の周知
(1)令和8年12月1日より、公益通報の窓口の周知が義務付けられます(公益通報者保護法11条2項)。
(2)公益通報者保護法の保護対象は、フリーランスにも及びます。彼らにも公益通報の窓口を周知することが必要です。
(3)したがって、HPや、フリーランスの契約時に案内したり、フリーランスの名簿の確保して定期的に連絡することが必要になりました。
公益通報窓口への情報提供と、注意
1 公益通報窓口に情報共有
(1)部下から上司への相談も公益通報の一つとして解釈されます。
したがって、相談を受けた上司は、部下との相談のうえで、公益通報窓口に情報共有をする義務があります。
(2)また、公益通報者は正義感の強い者が多く、この意見を無視すると、監督官庁やマスコミ等にリークする等問題が大きくなりがちです。このような事実についても周知すべきです。
2 情報共有時の特定への配慮
(1)公益通報者の特定(犯人探し)は禁止されています(公益通報者保護法11条の3)。したがって、公益通報者を特定する情報を秘して、会社の公益通報窓口(に従事する者)に情報共有をする義務があります。
(2)例えば、「A部署の女性からの情報で」という公益通報の内容が、A部署に女性が3人しかいない場合に、個人の特定につながります。この点の配慮が必要です。
公益通報について記録する
(1)公益通報を受けた者は、通報者と相談して、公益通報窓口に情報共有をするか決めなければなりません。
(2)通報者がやっぱり秘密してほしいと言われて対応しなかった場合など、調査しなかった場合にはその理由が後日、説明できるように記録化しておく必要があります。
(2)例えば、通報者の被害妄想だと思える事案こそ、後日調査をしなかったことが問題になりやすいことも理解しておきましょう。
(3)管理職であれば他の管理職と相談する。平社員であれば上司等の相談する。一人で対応しないこと、その過程を記録化することが大切です。
事例の共有
(1)現場で、公益通報の取り扱いについて困ることが予想されます。
(2)したがって、具体的な事例をあげて、どうすればよいのか、事例を共有することが大切です。
口止めの禁止
(1)公益通報者を妨害したり、禁止したりする行為は禁止されています(公益通報者保護法11条の2)。したがって、フリーランス等に「この件は黙っていてほしい」と頼んだり、「機密情報保護を理由に公益通報を思いとどまるように説得する」ことは禁止されます。
(2)外注先等の契約書において、機密保持条項を入れるものが多いと思われますが、同項の違反とならないものとして、公益通報を明記するかも問題となります。
不利益行為の禁止
公益通報した社員、役員、フリーランスに対し、不利益処分をすることが禁止されます。
公益通報の濫用の禁止
(1)公益通報があれば、会社は調査義務を負い、コストを負担します。
(2)公益通報の要件を正しく伝えて、濫用的な公益通報が許されないことを伝える必要があります。
(3)公益通報における会社の義務は、正しく調査するまでです。例えば、調査しても違法行為が認められなかった場合には、それ以上の調査を求めることはできません。
感情的になって、同じ調査を、別々の名目で再調査を求めるような行為は、公益通報の濫用とされる可能性があります。
参考
ビジネスガイド2026年9月号30頁以下




