民事訴訟

Q 昭和47年度の旧司法試験の第2問の解答を教えて下さい。

2026/08/21 更新

第1 
1 問題
(1)①債権者甲が債務者乙に代位して乙の債務者丙を被告として提起した貸金返還請求訴訟の係属中に、乙が丙に対し同一の貸金の返還請求の訴えを提起することは二重起訴にあたるか。
(2)債権者代位訴訟が提起されても、債務者Zは、被代位権利について、自ら取立て等をすることができる(民法423条の5)。さらに、別訴提起まで認められるか。
二重起訴
(1)二重起訴の禁止は、既判力が衝突する二つの訴えについて、二重に審理をすることによる裁判所や当事者負担や、二つの請求の既判力が矛盾することによる混乱を回避することにある。
(2)①ある訴訟の係属中に、②当事者が同一で、③訴訟物が同じ訴えが、別訴や反訴で提起されることは認められない(民事訴訟法142条)。
(3)債権者代位訴訟の訴訟物は、被代位債権であるから、①と③は同じである。では、①はどうか。
3 債権者代位訴訟の既判力
(1)債権者代位は、法定訴訟担当であるから、債権者に対する判決の効力は、勝訴敗訴に関わらず、債権者代位訴訟の当事者である債権者(115条1項1号)のみならず、当該債権の帰属者である債務者にも及ぶ(115条1項2号)。
(2)よって、債権者代位訴訟の既判力は、債務者乙にも及ぶ。
4 結論
 以上より、債権者代位訴訟が提起されているときに、債務者乙が第三債務者丙に別途提起することは二重起訴の禁止に反し許されない。

第2
1 問題
 甲が乙に対して提起した売買代金債権不存在確認訴訟の係属中に、乙が甲に対して同一の売買代金の支払請求の訴えを提起することは許されるか。
2 反訴の場合
(1)債務不存在の訴えと、その債権について支払いを求める給付請求の訴訟物同一なので、この反訴は二重起訴にあたる(民事訴訟法142条)。
(2)しかし、支払いを求める給付請求が債権の存否だけを確認する確認の訴訟よりも紛争解決には適切であるから、債務不存在の訴えについて訴えの利益が消滅したとしして、両請求が係属しないことになる結果、二重起訴の問題は生じない。
(3)よって、乙の訴えは反訴であれば、許される。
3 別訴提起
(1)別訴提起しても、債務不存在訴訟について訴えの利益がないとして却下されるから、乙の訴訟は許されてよいだろう。
(2)これに対して、債務不存在訴訟がある程度進んでおり、債務存在の訴えがある程度進んでいる場合には、債務不存在の訴えの利益がある。
 その場合には、別訴提起は二重起訴に反することになり、乙の別訴提起は許されない。

第3
1 問題
(1)甲と乙の訴訟で提出した訴訟上の相殺の抗弁の自働債権について、乙が別訴で請求することは許されるか。
(2)二重起訴に該当しないか。
2 相殺の二重起訴
(1)相殺の抗弁は、訴え提起ではない。
(2)しかし、相殺の抗弁についても既判力が生じる(民事訴訟法114条2項)。別訴で請求している債権について、これを自働債権として相殺の抗弁を主張すれば、別々の訴訟で同じ債権について審理され、それぞれの判決が出てその判決の既判力の衝突が生じうるがため、二重起訴の禁止に反する(民事訴訟法142条)。
3 あてはめ
 よって、乙が別途提起することは二重起訴の禁止に反し許されない。
以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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