民事訴訟

Q 平成15年度の旧司法試験の第2問の解答を教えて下さい。

2026/08/29 更新

第1 
 1 問題
(1)甲は乙に対し、売買契約に基づき目的物の引き渡し訴訟を提起した。・・・①
(2)これに対して、乙は甲に対し、売買契約に基づき代金の引き渡しの別訴を提起した。・・・②
(3)②の訴えは、①の訴えの反訴として提訴できるか。また、①と②の訴えの争点は重なるので、別訴提起は不適法となるか。
 2 反訴の要件
(1)反訴の提起には、反訴が、本訴の請求又は防御の方法が関連することが必要である(民事訴訟法146条)。
(2)①と②の訴訟は同じ売買契約であることや、代金額が争点となることも同じであり、②の請求は①の請求と一体であり、争点も同一であるから、②について反訴できる。
 3 二重起訴
(1)では、②の訴訟を別訴提起することは二重起訴にあたるか。
(2)二重起訴の禁止は、既判力が衝突する二つの訴えについて、二重に審理をすることによる裁判所や当事者負担や、二つの請求の既判力が矛盾することによる混乱を回避することにある。
(3)①ある訴訟の係属中に、②当事者が同一で、③訴訟物が同じ訴えが、別訴や反訴で提起されることは認められない(民事訴訟法142条)。
 4 あてはめ
(1)①の訴訟の訴訟物は、売買契約に基づく目的物引渡し請求権で、②の訴訟の訴訟物は売買契約に基づく代金支払い請求権であるから訴訟物が異なる。
(2)したがって、二重起訴にあたらない。
 5 移送と併合
(1)しかし、②の訴えと①の訴えは争点が同じである。別々の判断が出ることは適切ではない。
(2)したがって、②の訴えについて別訴的されたとしても移送(民事訴訟法17条)し、②の訴えと併合すべきである(民事訴訟法152条)。

第2 
1 問題
(1)甲は、売買代金は売買契約に基づき目的物の引き渡し訴訟を提起した。
(2)甲は売買代金について500万円であると主張し、乙は1000万円であると主張している。
(3)裁判所は、700万円の支払いに目的物を引き渡せとの判決を下すことは弁論主義の第一テーゼに反しないか。
2 弁論主義の第一テーゼ
(1)裁判所は、当事者の主張しない事実を裁判の基礎として採用してはならない。
(2)目的物を引き渡せとの判決を下すことは同時履行の抗弁権を認めることであり、当事者が主張していない以上はこれを認めることはできない。
(4)それでは、乙が同時履行の抗弁権を主張していた場合に、裁判所は、700万円の支払いに目的物を引き渡せとの判決を下すこと民事訴訟法246条に反しないか。
3 民事訴訟法246条
(1)裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない(民事訴訟法246条)。
(2)民事訴訟法246条違反にあたるか、ある判決が請求の一部認容判決として認められるかどうか、判決の内容が原告の合理的意思の範囲に含まれるか、 そのような判決をすることが被告にとって不測の負担を課すことになるか、という観点から判断される。
4 原告の意思
(1)原告は500万円の負担で、目的物の引き渡しを求めているが、700万円を支払うとの判決は、原告が予期しない経済的な負担を明確にすることもあって、原告の意思に反するか問題となる。
(2)原告は売買代金が500万円であると認めている以上は、700万円の支払いは、原告の意思と大きく離れない。また、請求却下となるのと比べれば、目的物の引き渡しを受けられるのか分かるという意味で原告の意向にそう。
5 被告の予見
(1)原告は売買代金が500万円であると主張しており、被告としても700万円の支払いとの引き換えは、被告にとって有利であり、不測の負担を与えない。
(2)よって、被告乙が、同時履行の抗弁権を主張していれば、裁判所は、700万円の支払いに目的物を引き渡せとの判決を下すことができる

第3 
1 問題
(1)乙は、売買代金は売買契約に基づき代金1000円を請求する訴訟を提起した。
(2)甲は売買代金について500万円であると主張し、乙は1000万円であると主張している。
(3)裁判所は、目的物の引き渡しと引き換えに700万円と支払いとの判決を下せるか。
2 弁論主義
(1)甲が同時履行の抗弁権を主張していない場合に、裁判所が、目的物の引渡しを引換えに700万円を支払えとの判決を下すことはできない。
(2)甲が同時履行の抗弁権種を主張していた場合に、同判決を下すこと民事訴訟法246条に反しないか。
4 処分権主義
(1)原告は売買代金が1000万円であると認めている以上は、700万円の支払いは、一部認容判決である。原告の意思とも反しないし、被告に不測の損害を与えるものではない。
(3)よって、被告乙が、同時履行の抗弁権を主張していれば、裁判所は、同判決を下すことができる。

第4
1 問題
(1)甲と乙との間で、売買契約に基づく目的物の引渡し請求訴訟にて、500万円の支払いと引き換えに目的物を引き渡させ、との訴訟が確定した。・・・・①
(2)その後のに、乙は甲に対し、売買契約に基づき代金1000万円を支払えの別訴を提起した。・・・②
2 既判力
(1)①と②の訴訟は訴訟物が異なる。訴訟物は異なれば、既判力は作用しない。
(2)①の訴訟で乙は代金についても関心を持つのが通常であり、これを争っていたと思われる。②の訴訟で、代金について争うことは、後訴が前訴の蒸し返しである場合に、前訴訟の既判力を及ぼすことはできないだろうか。
3 争点効と信義則
(1)当事者が同じ、争点も同じ、紛争が蒸し返しである場合には、争点効により後訴訟の請求や主張が却下されないか。
(2)争点効の根拠は信義則である。
(3)信義則を根拠とするのであれば、争点効として一般的な要件を設定するよりも、事案の個別事情を考慮して信義則で対応した方が妥当な解決が図れる。
4 信義則
 当事者が同じで、争点が同じなど、紛争の蒸し返しと評価される場合には、後訴訟は信義則の請求や主張が却下される。
5 あてはめ
 ①の訴訟で乙は代金についても関心を持つのが通常であり、これを争っていたと思われる。②の訴訟で、代金について争うことは、後訴が前訴の蒸し返しであり、代金額に争うことは信義則により許されない。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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