判例(「相続財産の範囲で〇〇円を支払え」との限定承認の存在及び効力を認めた前訴訟の確定判決について、後訴訟にて、前訴訟の口頭弁論終結前に発生していた事情に基づいて限定承認の効力を争うことは許されない。
2026/10/26 更新
最判昭和49年4月26日民集28巻3号503頁
(1)「限定承認が成立しているので、仮に支払いが認められたとしても、その支払額は相続財産の範囲に限られる。」との限定承認の主張がされたとしても、限定承認の存在及び効力は訴訟物とはならない。
(2)しかし、限定承認の存在及び効力は、訴訟での争点となることや、主文で「相続財産の範囲で〇〇円を支払え」と記載されることから、主文で限定承認が認められれば既判力に準じた効力が認められる。
(3)「相続財産の範囲で〇〇円を支払え」との限定承認の存在及び効力を認めた前訴訟の確定判決について、後訴訟にて、前訴訟の口頭弁論終結前に発生していた事情に基づいて限定承認の効力を争うことは許されない。
解説
(1)判例は、限定承認の存在及び効力は訴訟物とはなっていない、とする。したがって、例えば、主文の債権について限定承認を争うことはできないが、別の債権については限定承認の存在及び効力を争うことができる、と理解される。なお、争点効や信義則の問題が生じることがある。
(2)また、同様の理屈により、当事者が前訴で限定承認の主張をしなかったために、無留留保で請求を認める判決が確定した。その、後日、限定承認をしているのでその支払は相続財産の範囲に限られる、と争うことは否定されていない。
参考
民事訴訟法判例百選(第6版)168頁
引換給付判決と判決に準じた効力
1 問題
(1)買主Xと売主Yの間で、「YはXに対し500万円と引換に絵画を引き渡せ」との判決が確定した。これを前訴とする。
その後、売主Yが買主Xに対し売買代金は1000万円であるとして、同代金の請求をする訴訟をした。これを後訴訟とする。
(2)この場合に、前訴の判決には限定承認と同じく既判力に準じた効力をが生じて、後訴で、金額を争うことはできないのか。
2 引換給付判決と、既判力に準じた効力
(1)引換給付判決には限定承認と同じような、既判力に準じた効力は認められない。その理由として、反対給付の制限は売買契約に基づく目的物引渡し請求との結びつきが弱いからだと説明される(裁判所職員総合研究所「民事訴訟法講義案 (三訂判)」284頁)。
(2)私見としては、目的物の引渡し請求権と、売買契約の代金請求は別々の独立した訴訟物であること、また、反訴として、売買契約の代金請求ができるにも関わらず、これがされていないことを考慮すれば、既判力及びこれに準じた効力を及ぼすのが適切ではないことが、結びつきが弱い理由ではないだろうか。
3 引換給付判決の反対給付の拘束力
引換給付判決の反対給付の拘束力は、紛争の蒸し返しになる場合に、信義則による制限を受けるかで処理されるべであろう(裁判所職員総合研究所「民事訴訟法講義案 (三訂判)」284頁)。
| 引換給付判決の反対給付の拘束力について、旧司法試験の平成15年の第2問、司法試験の平成29年で出題されている。 |




