民事訴訟

Q 平成22年度の旧司法試験の第2問の解答を教えて下さい。

2026/08/31 更新

第1 
1 問題
(1)XはYに対し売買代金100万円の請求をし、第一審で全部勝訴の判決を得た。
(2)Xは利息の請求のために、控訴できるか。
2 上訴の利益
(1)上訴の利益は、不服の申立てと原判決を比べて原判決が申立てを下回っているかで判断する(形式的不服説)。(2)Xは100万円の請求を求めて、第一審で全部勝訴の判決を得ているので上訴の利益がない。
(3)Xは利息の請求を理由として控訴できない。

第2 
1 両請求
(1)XはYに対し、売買契約の有効を前提に売買代金100万円の支払請求をする。主位的請求
(2)XはYに対し、売買契約の無効を前提に目的物の返還請求をする。予備的請求
(3)両請求は契約が有効なのか、無効なのかで矛盾し両立しない、客観的予備的併合である。
2 請求の客観的予備的併合
(1)客観的予備的併合は、複数の請求が両立しえない関係にあって、主位的請求が認められないことを解除条件として、予備的請求について審理を求める場合である。
 法律上請求が両立しない場合には、原告の両方の請求が棄却されて矛盾した判決となることを防げること、両請求をみとめることで、紛争の一回的解決が図れることから予備的請求も認められる。
(2)本件では両請求は契約が有効なのか、無効なのかで矛盾し両立しない、両請求は両立しえない。
(3)両請求は、客観的予備的併合である。
2 問題
 第一審でXの主位的請求の全部を認容する判決がされ,この判決に対してYが控訴を提起したところ、控訴裁判所は、主位的請求について認められないとの結論に達した。この場合、控訴裁判所は、どのような判決をすべきか。
3 裁判所の判決
(1)裁判所は主位的請求を棄却した場合には、予備的請求の審理をすべきである。客観的予備的請求は、主位的請求が認められないことにより解除条件が満たされ、予備的請求について審理を求める訴えであり、被控訴人の上訴により両請求が移審し、審理の対象となっているからである。
(2)本件では、売買契約が無効であるのであれば、目的物の返還請求がされるべきであるから、原判決を破棄し、主位的請求を取消し、予備的請求について認容判決をすべきである。

第3
1 問題
(1)客観的予備的併合の訴訟で、第一審でXの主位的請求を棄却し予備的請求を認容する判決がされた。この判決に対してYのみが控訴を提起したところ、XのYに対する100万円の売買代金債権が認められないので、予備的請求は認められないと結論に達した。この場合、控訴裁判所は、どのような判決をすべきか。
2 不利益変更禁止の原則
(1)控訴審は、控訴人の不服申立ての範囲でのみ、第一審を取消し変更できる(民事訴訟法304条) 。
(2)これは、不利益変更禁止の原則と呼ばれ、相手方の控訴または附帯控訴がない限り、自己の不服申し立ての範囲を超えて自己に不利益に第一審判決を変更されないという意味である。
3 あてはめ 
(1)請求の予備的併合訴訟において、主位的請求を棄却し、予備的請求を認容した原判決に対し、被告だけが上訴し、原告は上訴も附帯上訴もしなかった場合、上訴審は、予備的請求を棄却する場合に、主位的請求を審理することは、不利益変更禁止の原則に反しない許されない。
(2)しかし、主位的請求が却下されて、売買代金が認められず、かつ、予備的請求も却下されて、目的物の返還請求がされず、両負けとなるのは、社会的事実として不合理である。
(3)控訴裁判所は、主位的請求について附帯上訴をするように被控訴人Xに釈明すべきである。
(4)したがって、Xの附帯上訴後に、原判決を破棄し、主位的請求について認容判決をすべきである。
以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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