民事訴訟

Q 昭和50年度の旧司法試験の第2問の解答を教えて下さい。

2026/09/06 更新

甲は、乙に対して、不法行為に基づき100万円の損害賠償請求の訴えを提起した。

第1
 1 問題
(1)訴えの不適法却下の判決に対して、被告は控訴できるか。
 2 訴え客観判決と既判力
(1)訴え却下判決では、訴訟要件の存否(裁判所が判断した事項に限る)について既判力が認められる。
(2)例えば、訴えの利益、当事者適格の存否の判断について裁判所が判断していれば、その範囲で既判力が及ぶ。
 3 上訴の利益
(1)不服の申立てと原判決を比べて原判決が申立てを下回っていれば上訴の利益が認められる。
(2)訴え却下判決に対しては、請求棄却を求めていた被告も、申立よりも判決が下回っているので上訴の利益を有する。
(3)訴えの不適法却下の判決に対して、被告は控訴できる。

第2 
 1 問題
(1)甲は100万円の支払いを請求し全部勝訴の判決を受けた。
(2)甲は損害が150万円であったとして、控訴を提起するには上訴の利益があるか。
 2 明示的一部請求と上訴の利益
(1)上訴の利益は、不服の申立てと原判決を比べて原判決が申立てを下回っているかで判断する(形式的不服説)。したがって、第一審で全部勝訴である場合に、一審原告に上訴の利益を認めることができない。
(2)しかし、前の訴訟が黙示的一部請求債権であった場合(一部請求であるとの明示を欠いていた場合)、その確定後に、債権の残部について後訴を提起することは前訴訟の既判力により許されない 、という不利益が発生する。したがって、第一審で全部勝訴したときには、例外的にその点にも上訴の利益が認められる。
 3 結論
  甲は損害が150万円であったとして、明示的一部請求として請求を拡張を前提に控訴を提起することができる。

第3
 1 問題
(1)甲は100万円の支払いを請求し全部勝訴の判決を受けた。
(2)甲は損害が150万円であったとして、控訴を提起した。
(3)不法行為に基づく損害賠償請求は、生命身体以外の請求は3年で時効となる(民法724条1項1号、724条の2)。50万円は残部請求となるが、その請求は時効となっているとして、被控訴人により時効の主張がされることがありえるのか。
 2 明示的一部請求と残部請求の時効
(1)100万円を150万円である増額しているが、前請求を黙示的一部請求である。
 黙示的一部請求である場合には、訴えの変更後の請求額(残額請求を含む)は、変更前の一部請求により裁判所の審理対象となっている。
(2)請求全体について、民法147条の1項1号の「裁判所の請求」請求手続がとられているから、残請求についても時効は完成しない。
(3)よって、甲が100万円を150万円である増額しても、乙が時効を主張することはできない。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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