Q 令和2年度の予備試験の解答を教えて下さい。
2026/09/16 更新
設問1
第1
1 概要
(1)Xは人損は存在しないという旨の債務不存在の訴えを提起した。・・・①
(2)Yは人損について一部請求であると明示して500万円を支払えと給付訴訟を反訴(民事訴訟法146条)を提起した。・・・②
2 問題
(1)①の債務不存在の訴えは、上限を明示しないので不適法ではないか。
(2)①の訴えは訴えの利益を失うか。
(3)①と②の訴えは、二重起訴にあたるか(民事訴訟法142条)。
(4) 裁判所は、人損についても、Yの請求が認められないとした場合にどのような判決を下すべきか。
(5)①の訴えにはどのような範囲で既判力が及ぶか。
2 上限のない債務不存在の訴え
(1)①の訴えは、「30万円を超えては存在しないことを確認する。」等の上限が明示されていない。上限を明示しない訴えは訴訟物を特定していないから不適法だという見解もある。
(2)もっとも、「債権者である被告にとってどのような債権を立証すればよいのか」明確であれば、紛争の解決にって有効であり許容されてよい。
(3)①の訴えは具体的な交通事故の人損請求の不存在が対象となっていることが明確になっており、債権者である被告にとってどのような債権を立証すればよいのか明確であるから、許容される。
3 債務不存在の訴えと給付の訴えの関係
(1)債務不存在の訴えと給付の訴えの関係が両立した場合に、支払いを求める給付請求が債権の存否だけを確認する確認の訴訟よりも紛争解決には適切であるから、債務不存在の訴えについて訴えの利益が消滅する。
(2)訴えの利益があるか。二重起訴にあたるか問題となる。
4 あてはめ
(1)②の請求は明示的一部請求である。明示的一部請求である場合には訴訟物はその一部となるから、残部の請求を後日提起できる。
①の債務不存在の訴えについて、残部請求が存在しないことについて確認する訴えの利益がある。
(2)この場合、一部請求部分については、債務不存在の訴えと給付の訴えについて一部請求部分について訴訟物が重なり二重起訴となる(民事訴訟法142条)。
もっとも、両請求は同一の裁判所で審理されているから、矛盾した判断が下ることもないので、例外に両者の訴えを認めてよい。
5 裁判所がすべき判決
(1)①については、Xに対する債務がないことを確認する本案判決として認容判決をすべきである。
(2)②については、Yの請求権がないと判断するので、本案判決として却下判決をすべきである。
6 既判力
(1)人損の請求と物損の請求では訴訟物が異なる。
(2)①については、Yの人損部分について、Xに対する債務がないことに既判力が生じる。
設問2
第2
1 問題
(1)前訴訟の既判力によって、Yに対し、Xは人損請求ができないことについ既判力が生じている。
(2)しかし、Xは、判決後に生じた後遺症について請求できないだろうか。
2 明示的一部請求
(1)判例は、前訴にて、数量的に可分な債権の一部であることを明示していた場合には、前訴訟の既判力は後訴訟に及ばないので、残部請求をすることが許されるとしている。これは以下の考え方を前提としている。
(2)原告は、訴訟物を選択する権利がある(処分権主義)。前訴で請求されていない残部については、前訴の既判力が及ばない。
(3)これに対して、原告の都合で、被告が何度も応訴を強いられる被告の負担も考慮しなければならない。
(4)前訴で一部請求であると明示されていれば、被告も残部請求について債務不存在確認等を提起してその不利益を解消する手段がある。
3 後遺症と明示的一部請求
後遺症等を理由とする訴訟についても、後訴が紛争の蒸し返しになる部分があるものの、原告の救済の必要性と、被告の重複応訴の負担のバランスをとり、前訴の既判力は前訴の一部請求にしか及ばず、残請求には及ばない。したがって、Xは、判決後に生じた後遺症について請求できる、と考えることができる。
3 あてはめ
(1)前訴訟では、Xが治療費や慰謝料を請求しており、Xの債務不存在の意図としては、これらの請求が存在しないことであったと思われる。
(2)Xの判決後の後遺症の請求を認めないことは、同請求をする機会のなかったXに酷であるし、Yも、後遺症等が発生すればその請求までを存在しないことの確認を求めるものではなかったと考えられる。
(3)よって、Yの債務不存在の既判力は、遺症等が発生すればその請求までを存在しないことまでに及ばない。Xの、判決後に生じた後遺症に基づく損害賠償請求は許される。
以上




