【重要判例】判例(訴訟手続と表見法理の適用)
2026/08/16 更新
最判昭和45年12月15日民集24巻13号2072頁
「民法109条および商法262条(現会社法354条)の規定は,いずれも取引の相手方を保護し,取引の安全を図るために設けられた規定であるから,取引行為と異なる訴訟手続において会社を代表する権限を有する者を定めるにあたっては適用されないものと解するを相当とする。この理は,同様に取引の相手方保護を図った規定である商法42条1項(現商法24条、会社法13条)が,その本文において表見支配人のした取引行為について一定の効果を認めるがちも,その但書において表見支配人のした訴訟上の行為について本文の規定の適用を除外していることから考えても明らかである。したがって,本訴において,AにはYの代表者としての資格はなく,同人を代表者とするYの代表者として提起された本件訴訴は不合法である旨の原審の判断は正当である」
Aは登記簿上のYの代表者であるが、代表者としての選任手続きを経ていない。
「本件で実施されたA宛てた送達では,Yへの訴状送達の効果を生じない」
解説
1 問題
(1)会社を被告として訴える場合に、被告住所や、被告代表者については、登記簿で確認するしかない。しかし、その記載が間違っていた場合にどうなるだろうか。
(2)原告の立場からすれば、表示を信じるのが当然であるから、表見法理の適用によって保護されるべきだと考えることになる。
(3)これに対して、本来の被告の利益を考えれば、手続き保障もなく、判決によって財産権を奪られることが適当でないと考えることになる。
そもそも、表見法理は実体法上の問題であるから、第一審で争う権利を奪う理由にはならない、ということになる。
2 判例
判例としては、表見法理は訴訟行為に適用されない。したがって、 Aは登記簿上のYの代表者であるが、代表者としての選任手続きを経ていない。A宛てた送達では,Yへの訴状送達の効果を生じないとした。
3 解説
(1)本件では、①登記簿上の不実代表者の住所宛に訴状が送達されて、真の代表者が訴訟について知らなかった。(2)②本件訴訟の第一審において、Aは自分は代表者ではない、と主張していたのであるから、原告としては、送達をやり直すことも検討できた。
(3)以上を考慮すれば、表見法理の適用を認めず、第一審にて、送達をやり直すのが適当な事案であった。
したがって、①②の事情が変わった場合に、判例の射程をどのように考えるかは再考の余地はあろう。
参考
民事訴訟法判例百選(第6版)36頁




