民事訴訟

判例(民事訴訟法38条の要件を満たすとしても、訴訟の継続中に当事者を追加する主観的併合については認められない。なぜなら、別訴を提起して併合すれば足りること、法の定めがないこと、途中参加の当事者の手続保障や、訴訟の遅延が問題となるからである。)

2026/09/14 更新

最判昭和62年7月17日民集41巻5号1402頁

「甲が乙を被告として提起した訴訟(以下、「旧訴訟」という。)の係属後に丙を被告とする請求を旧訴訟に追加して一個の判決を得ようとする場合は、甲は、丙に対する別訴(以下「新訴」という。)を提起したうえで、法(民訴法)132条(現152条1項)の規定による口頭弁論の併合を裁判所に促し、併合につき裁判所の判断を受けるべきであり、仮に新旧両訴訟の目的たる権利義又は義務につき法(現38条)の要件が具備する場合であっても、新訴が法(民訴法)132条(現152条1項)の適用をまたずに当然に旧訴訟に併合されるとの効果をみとめることはできないというべきである。けだし、かかる併合を認める明文の規定がないのみでなく、これを認めた場合でも、新訴につき旧訴訟の訴訟状態を当然に利用することができるかどうかについては問題があり、必ずしも訴訟経済に適うものではなく、かえって訴訟を複雑化させるという弊害も予定され、また軽率な提起ないし濫訴が増えるおそれもあり、新訴訟の提起時期いかんによっては訴訟の遅延を招きやすいことなどを勘案すれば、所論のいう追加的併合を認めるのは相当でないからである。」

解説

(1)民事訴訟法38条の要件を満たす場合に、訴訟の継続中に当事者を追加する主観的併合(例えば、交通事故で不法行為者だけでなく、その雇用主を使用者責任の追及として被告として追加する)ことについては、①紛争の本質が同一であれば、②新たな被告が別に主張や証拠を出す機会を保障すれば、訴訟を2度提起しなくて済む。

(2)しかし、判例は、訴訟の継続中に当事者を追加する主観的併合については、民事訴訟法38条の要件を満たす場合でも認められない、とした。

(3)確かに、別訴を提起して併合すれば足りる。なお、並行するかどうは、裁判所の裁量的判断となる。

(4)次に、法律の定めないことや、新しい被告の手続保障が問題となるために、訴訟の審理を少し巻き戻す必要があるかもしれないし、それでも、すでに成立した訴訟状態に新しい被告が拘束されると、新しい被告と不利益になるというのが判例の理由とである。

(5)現実問題としては、旧訴訟の訴訟状態を利用するべき場合もあれば、そうでない場合もある。そうだとすれば、裁判所が弁論の許否で調整すればよいというのが実務的な解決になってくるだろう。

参考

 民事訴訟法判例百選(第6版)190頁

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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