判例(請求の予備的併合訴訟において、主位的請求を棄却し、予備的請求を認容した原判決に対し、被告だけが上訴し、原告は上訴も附帯上訴もしなかった場合、上訴審は、予備的請求認容判決の当否だけを審理すべきで、主位的請求棄却判決の当否については審理すべきではない。)
2026/08/31 更新
最判昭和58年3月22日判時1074号55頁、判タ494号62頁
「主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に対し、第一審被告のみが控訴し、第一審原告が控訴も附帯控訴もしない場合には、主位的請求に対する第一審の判断の当否は控訴審の審判の対象となるものではないと解するのが相当である」
解説
1 判例
(1)判決は、「請求の予備的併合訴訟において、主位的請求を棄却し、予備的請求を認容した原判決に対し、被告だけが上訴し、原告は上訴も附帯上訴もしなかった場合、上訴審は、予備的請求認容判決の当否だけを審理すべきで、主位的請求棄却判決の当否については審理すべきではない。」とした。
2 不利益変更禁止の原則
(1)控訴審は、控訴人の不服申立ての範囲でのみ、第一審を取消し変更できる(民事訴訟法304条) 。
(2)これは、不利益変更禁止の原則と呼ばれ、相手方の控訴または附帯控訴がない限り、自己の不服申し立ての範囲を超えて自己に不利益に第一審判決を変更されないという意味である。
(3)判決は、「請求の予備的併合訴訟において、主位的請求を棄却し、予備的請求を認容した原判決に対し、被告だけが上訴し、原告は上訴も附帯上訴もしなかった場合、上訴審は、予備的請求を棄却する場合に、主位的請求を審理することは、不利益変更禁止の原則に反しない許されない。」と考える。これが上訴必要説である。
3 上訴不要説
上訴不要説の根拠は以下のとおりである、
(1)主位的請求と予備的請求は一体であるから、予備的請求が審理の対象となっていることから、主位的請求も審理の対象となっている。
(2)予備的請求が認められて訴訟目的を達している原告に、上訴を求めるのは酷である。
(3)第一審で予備的請求が認められているから、主位的請求が認容されても被告に不利益に変更されるわではない。
3 上訴必要説
上訴必要性の根拠は以下のとおりである。
(1)主位的請求は棄却されているのであるから、これに不服を申し立ててないのであれば、主位的請求を審理することは、不利益変更禁止の原則に反する、というのが素直な解釈である。
(2)上訴されていない主位的請求が認められるのは、相手方の防御権を奪って、相手方に不測の損害をあたえる。
(3)予備的請求が認められないときには備えて、附帯控訴をすることはできたので、一審原告に酷ではない。
参考
民事訴訟法判例百選【第6版】220頁以下
勅使川原和彦 「読解 民事訴訟法」301頁以下




