Q 令和1年の司法試験の解答を教えて下さい。
2026/09/06 更新
設問1
第1 設問1
1 問題
(1) Xは本件訴訟についてA地方裁判所を管轄として訴えを提起した。
(2)Yはこれに対して、契約書に「本件契約に関する一切の紛争はB地方裁判所を第一審の管轄とする。」という記載があることから、本件訴訟についてB裁判所とする合意管轄が成立する(民事訴訟法11条1項)と主張する。
(3)しかし、上記の記載は、A地方裁判所に提訴することを禁止しているだろうか。
2 管轄合意の解釈
(1)上記の契約書は、A地方裁判所に提訴することは禁止していない。
(2)もっともYとしては、わざわざ、B地方裁判所と明記した以上は、他の裁判所に提訴することを禁止する趣旨であると理解するのが通常の意思解釈であると主張するだろう。
(3)これに対しては、他の裁判所に提訴することを禁止する趣旨であれば、「専属」の文言を使えばよい。本契約書は、キャンピングカーを購入した一般消費者向けが読むものであるから、あやふやな表記については、一般消費者であるXにとって有利に解釈すべきであり、A裁判所に提訴することまで禁止していない。B地方裁判所への提訴も併存的に認める規定であるという反論が考えられます。
第2 設問2
1 問題
(1)仮に他の裁判所に提訴することを禁止して、B裁判所に提訴する合意が認められるとしても、移送を認めないとが、民事訴訟法16条2項の「相当」であり、自ら審理すべきである。
2 検討
(1)Yは全国に支店を持ち、A市にも支店を有する。これに対して、Xは、キャンピングカーを購入した一般消費者向けである。
(2)本件では、A市でキャンピングカーを購入しており、当時のキャンピングカーの状態等が争点となれば、Y自身もA市にあるA支店の従業員ら証人になってもらう必要がある。
(3)Xからすれば、B地方裁判所行くには、新幹線で4時間ほどかかる。
(4)以上を考慮すれば、遅延を避けるために「相当」であるとして民事訴訟法16条2項により自ら審理すべきである。
設問2
第3
1 問題
(1)Yは、本件事故が起きた事実を認めたが、これに裁判上の自白が成立するだろうか。
2 裁判上の自白
(1)裁判上の自白の成立要件は、①相手方の主張と一致すること、②口頭弁論または弁論準備手続における主張であること、③事実の主張であること、④自己に不利益な主張であることである。
(2)裁判上の自白が成立すると、自白を自由に撤回できなくなる。
3 元の原告の請求
(1)元の原告の請求は、履行遅滞を理由とする解除に基づく損害賠償請求権である。
同請求の請求原因は、売買契約、代金の支払い、本件車両の引き渡し、本件車両が本件仕様を満たしていなかったこと、相当期間の経過、解除の意思表示である。これが主張事実にあたる。
(2)元の原告の請求原因であれば、本件事故が起きた事実は上記の主張事実ではない。
4 追加された原告の請求
(1)これに対して、追加された原告の請求の請求原因は、損害と発生と、因果関係である。
(2)因果関係は評価事実であり、これを基礎づける具体的な事実が主張事実である。そして、本件事故が起きた事実は、事故によって100万円の時計が壊れたという、損害発生の因果関係を基礎づける事実である。
(3)その他、Yの上記主張は、①Xの主張と一致すること、②口頭弁論または弁論準備手続における主張であること、④因果関係はXが立証すべき事実であり、自己に不利益な主張である。
(4)Yの撤回は認められないか。
5 裁判上の自白の撤回の不可撤回効
(1)裁判上の自白が成立すると、当事者は、以下の場合を除いてこれを撤回できない。
①相手方の同意がある場合
②刑事罰上罰すべき他人の行為により自白した場合
③自白が真実に反し、真実について錯誤があった場合
6 弁論主義の趣旨
(1)弁論主義の根拠は、民事訴訟で審理の対象となる紛争については、もともと当事者が自由に話し合って解決することができるものであることから、どのような事実の有無が争点となるか、争点の設定という訴訟進行について当事者の意思を反映させるものである(私的自治)。
(2)争いのある事実とそうでない事実を分けて、争点の絞り込みを行う。しかし、裁判上の自白の撤回が許されればいつまでも、争点が明確にならない。
(3)争点が増えれば訴訟は遅延する。このため、自白することの不利益の程度とこれを争うことで訴訟が遅延のコスト等を考慮して決めることになる。
7 撤回の要件
(1)したがって、訴えの変更によって、原告の請求原因が異なったり、原告の請求額が異なった場合には、被告が理解していた不利益の程度が異なるわけであるから、この場合にも自白の撤回を認めるべきである。
(2)本件では、追加された原告の請求により、争点となるとは予想できなかったのであるから、自己責任を負わすことはできない。
(3)よって、Yは自白を撤回できる。
設問3
第4
1 問題
(1)Xは、本件日記について民事訴訟法220条4号の除外事由がないとして、4号文書として文書提出命令を申立てた。
(2)これに対して、Yは、同文書が、民事訴訟法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」にあたると主張する。以下、自己利用文書という。
2 4号文書の定義と自己利用文書の要件
(1)4号文書は、民事訴訟法220条4号が定める除外事由がない限り、文書の提出義務を負うという一般的な提出義務が認めている。
(2)もっとも、民事訴訟法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(自己利用文書)にあたる場合には、文書提出義務を負わない。
(3)最決平成11年11月12日民集53巻8号1787頁によれば、①文書が外部に公開することを予定していない文書であること(内部文書性)、および②開示することで、個人のプライバシーや団体の自由な意思決定が阻害されるなど、所持者の所持者側に看過し難い不利益が生ずるおそれがある(不利益性)場合には、③特段の事情がないと場合、自己利用文書にあたる。そして、自己利用文書にあたれば、文書提出命令は認められない。
3 自己利用文書の要件とあてはめ
(1)①Yは、日記は対外的に見せることを予定していない文書である。
(2)②もっとも、日記の所持者は死亡していることや、日記の情報量が多いと言えず、これが公開されたからといって、Tのプライバーが大きく侵害されるわけではない。
(3)③日記には、設計上の問題があったことが明記されており、Tが死亡している以上は唯一の証拠であるから特段の事情がある。
(4)よって、文書提出命令は認められるべきである。
以上




