民事訴訟

Q 令和1年の司法試験の問題を教えて下さい。

2026/08/09 更新

[民事系科目]
〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,35:40:25])
次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。

【事 例】
Xは,A県A市(以下「A市」という。)に住む会社員であり,夫と3人の小学生の子供がいる。X一家はキャンプ好きのアクティブな一家である。Yは,自動車製造会社であるS社の系列会社であり,S社の製造するワゴン車等をキャンピングカーに改造して販売している。Yは,本店がB県B市(以下「B市」という。)にあり,全国各地に支店を有する。
Xは,ある日,A市内にあるYのA支店において,Yとの間で,甲というシリーズ名の新車のキャンピングカーを400万円で買うとの売買契約(以下「本件契約」という。)を締結し,400万円を支払った。Xは,本件契約を締結する際,YのA支店の従業員から,甲シリーズのキャンピングカーは,耐荷重180kgの上段ベッドシステムがリビング部の上に設置されており,成人男性で言えばリビング部に3名,上段ベッドに2名の合計5名が就寝可能であるという仕様(以下「本件仕様」という。)を有しているとの説明を受けた。また,本件契約の対象となるキャンピングカーが本件仕様を有することは,本件契約の契約書にも明記されていた。
本件契約の契約書は,Yが用意したものであり,そこには他に「本件契約に関する一切の紛争は,B地方裁判所を第一審の管轄裁判所とする」との定め(以下「本件定め」という。)が記載されていた。B地方裁判所は,Yの本店があるB市を管轄する裁判所である。
Xは,本件契約に定められた納入日にキャンピングカーの引渡しを受けた(以下,Xが引渡しを受けたキャンピングカーを「本件車両」という。)。引渡しを受けた当日,Xの子供3人が本件車両の上段ベッドに乗ったところ,この上段ベッドシステムと車本体の接合部分が破損して上段ベッドが落下した(以下,この事件を「本件事故」という。)。幸い3人の子供にけがはなかったが,本件事故により5名が就寝可能なキャンピングカーとして本件車両を利用することが不可能になった。XがYに本件車両の引取りと本件車両の代わりに本件仕様を有する別のキャンピングカーの引渡しを要求したところ,YのA支店の従業員は,子供が上段ベッド上で激しく動き過ぎたために仕様上の想定を超えた負荷が掛かり上段ベッドが落下したのではないかなどと主張し,これに応じなかった。そのため,Xは,以後,本件車両を自宅車庫にて保管している。

Xの委任を受けた弁護士Lは,Xの訴訟代理人として,Xを原告,Yを被告とし,履行遅滞による本件契約の解除に基づく原状回復義務の履行として支払済みの代金400万円の返還を求める訴えを,A市を管轄するA地方裁判所に提起し(以下,この訴えに係る訴訟を「本件訴訟」という。),訴状において以下の①から⑦までの事実を主張した。
① XがYとの間で,本件仕様を有するキャンピングカーを目的物とする本件契約を締結した事実
② XがYに対して本件契約に基づき400万円を支払った事実
③ YがXに対して本件契約の履行として本件車両を引き渡した事実
④ 本件事故が起きた事実
⑤ 本件車両が本件仕様を有していなかった事実
⑥ XがYに対して本件仕様を有するキャンピングカーを引き渡すように催告をし,それから相当期間が経過したので本件契約を解除する旨の意思表示をした事実
⑦ Xが自宅車庫に本件車両を保管している事実

Yは,本案について弁論する前に,A地方裁判所に対し,本件定めによりB地方裁判所のみが管轄裁判所となるとして,民事訴訟法第16条第1項に基づき,本件訴訟をB地方裁判所に移送するよう申し立てた。
なお,Xの居住地,Lの事務所,YのA支店及びA地方裁判所は,いずれもA市中心部にあり,Yの本店及びB地方裁判所は,いずれもB市中心部にある。A市中心部とB市中心部との間の距離は,約600kmであり,新幹線,在来線等の公共交通機関を乗り継いで約4時間掛かる。

以下は,Lと司法修習生Pとの間の会話である。
L:Yの移送申立てに対して反論をする必要がありますが,反論にはどのような理由が考えられますか。
P:Yは,本件定めがA地方裁判所を本件契約に関する紛争の管轄裁判所から排除することを内容とすると解釈しているようですが,本件定めがそのような内容の定めではないという理由が考えられます。
L:そうですね。そこで,Yの解釈の根拠も踏まえつつ,本件定めの内容についてYの解釈とは別の解釈を採るべきだとの立論を考えてください。これを課題⑴とします。ところで,本件定めの内容についてのYの解釈を前提とすると,民事訴訟法第16条第1項が適用され,Xとしては,本件訴訟の移送を受け入れなければならないのでしょうか。
P:Xとしては何とかしてA地方裁判所での審理を求めたいところだと思います。
L:そうですね。本件定めの内容についてのYの解釈を前提とするとしても,本件訴訟はA地方裁判所で審理されるべきであるとの立論を考えてください。これを課題⑵とします。本件の事例に即して検討することを心掛けてください。

〔設問1〕
あなたが司法修習生Pであるとして,Lから与えられた課題⑴及び課題⑵について答えなさい。

【事 例(続き)】
Yの移送申立てが却下され,本件訴訟はA地方裁判所で審理されることになった。本件訴訟の第1回口頭弁論期日においてLが訴状を陳述したところ,Yは,上記①から⑦までの事実のうち⑤の事実以外の事実を認める陳述をする一方,上記⑤の事実に関しては,本件仕様を有する本件車両を引き渡したと主張した。
その後に行われた今後の訴訟方針についての打合せの際,Lは,Xから,本件事故が起きたときに落下した上段ベッドの下敷きになりXが夫から結婚10周年の記念にもらった時価150万円の腕時計が損壊したこと(以下「本件損壊事実」という。),損壊した腕時計をXがメーカー修理に持ち込んだところ修理費用として100万円を請求され支払ったことを告げられた。Xがこれまで本件損壊事実を告げなかった理由について,LがXに尋ねたところ,メーカー保証により腕時計については無償修理ができると考えていたためであるとのことであった。そこで,Lは,本件訴訟において,Xの訴訟代理人として,Xを原告,Yを被告とし,本件契約の債務不履行に基づく損害賠償請求として100万円の支払を求める請求を追加し,⑧本件損壊事実及び⑨Xが腕時計の修理費として100万円を支払った事実を追加主張した。
Yの訴訟代理人は,100万円という高額の請求が後から追加されたことでXの主張する本件事故の発生経緯に疑いの目を向けるようになった。そこで,Yの訴訟代理人は,その後に開かれた口頭弁論期日において④の事実に関する従前の認否を撤回し,④及び⑧の事実を否認し,⑨の事実に対し不知との陳述をした。これに対し,Lは,Yが④の事実に対する認否を撤回することは裁判上の自白の撤回に当たり,許されない旨異議を述べた。

以下は,本件訴訟を担当する裁判官Jと司法修習生Qとの間の会話である。
J:本件訴訟では,Xが訴えの変更をして請求を追加していますね。このように訴えが追加的に変更された場合に,元の請求の訴訟資料と追加された請求の訴訟資料はどのような関係に立ちますか。
Q:元の請求についての訴訟資料は,特に援用がなくとも追加された請求についての訴訟資料になると理解しています。
J:元の請求の訴訟資料と追加された請求の訴訟資料の関係については異なる理解もあり得るかもしれませんが,ここではあなたの理解を前提としましょう。Lの述べるとおり,Yは,④の事実を認める旨の陳述を自由に撤回することができなくなっているのでしょうか。
Q:裁判上の自白の成立要件に照らして検討してみる必要があると思います。
J:そのとおりですね。裁判上の自白の成立により,Yが④の事実を認める旨の陳述を自由に撤回することができなくなっているかどうか,検討してみてください。これを課題とします。本件では,元の請求及び追加された請求のそれぞれにおける④の事実の位置付けを考慮する必要がありますね。その上で,Xが訴えの変更をした後にYが認否の撤回をした点が影響するかどうかも考えてみましょう。なお,自由に撤回することができないとしても,例えば事実に反することを証明した場合など一定の事由があれば,撤回が許される場合がありますが,ここではその事由があるかどうかまでは検討する必要がありません。

〔設問2〕
あなたが司法修習生Qであるとして,Jから与えられた課題について答えなさい。

【事 例(続き)】
本件訴訟の争点整理手続が行われている間,Lは,Yの元従業員から,同じくYの元従業員で
Yにおいてワゴン車をキャンピングカーに改造するための設計に携わっていたTが,甲シリーズ
のキャンピングカーの仕様について疑問を口にしていたことがあるとの情報を得た。
LがTを訪ねたところ,Tの妻Zが応対し,Lに対し,以下の(ア)から(ウ)までの事情を述べた。
(ア) Tは,Yにおいてワゴン車をキャンピングカーに改造するための設計に携わっていたが,先日,死亡した。Tの相続人はZだけである。
(イ) Tは,生前日記を作成していた。その日記は,今はZが保管しており,そこには,要約すると,甲シリーズのキャンピングカーには上段ベッドシステム部分に設計上の無理があり,その旨を上司に進言したが取り合ってもらえなかった,という内容の記載がある(以下,この日記のうち,この内容が記載されている箇所を「本件日記」という。)。
(ウ) Zとしては,本件日記の詳しい内容はプライバシーに関わるから言えないし,その内容を直接見せたり証拠として提供したりすることもできない。
そこで,Lは,Zを所持者として本件日記についての文書提出命令を申し立てた。その申立書には,上記(ア)から(ウ)までの事情が記載されていた。

以下は,Jと司法修習生Rとの間の会話である。
J:あなたには,Zが本件日記の文書提出義務を負うかどうかを判断する際にどのような観点からどのような事項を考慮すべきかを検討してもらいます。文書提出義務の根拠条文に照らして検討する必要がありますが,申立書に記載されているもの以外の事情を仮定する必要はありません。また,文書提出義務の有無についての結論までは示す必要はありません。これを課題とします。
R:本件日記に書かれている内容がキャンピングカーの上段ベッドシステム部分に係る設計上のミスということなので,民事訴訟法第197条第1項第3号の「技術又は職業の秘密」に該当する可能性を考える必要はないでしょうか。
J:ここでは「技術又は職業の秘密」に該当する事柄が記載してあることまで考える必要はありません。今回の検討ではその点は除外して考えましょう。

〔設問3〕
あなたが司法修習生Rであるとして,Jから与えられた課題について答えなさい。

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

「民事訴訟」トップに戻る

Contact.お問い合わせ

ご質問・ご相談などお気軽に
お問い合わせください。