民事訴訟

Q 令和元年の予備試験の解答を教えて下さい。

2026/09/13 更新

設問1
第1 
1 概要
(1) X1とX2は本件土地を共有していた。
(2) X1とX2が共有持ち分に基づき登記移転請求をする訴えを提起した。・・・本件訴訟
(3)本件訴訟の訴状がYに送達される前にX2は死亡していた。
2 問題
(1)訴訟係属はいつ生じるのか。
 訴訟手続の受継(124条)の問題となるか。
(2)本件訴訟は固有必要的共同訴訟となるか。
3 訴訟係属の時期
(1)訴訟係属とは、提訴によって当事者間の特定の事件が裁判所で審判される状態をいう。
(2)訴訟係属の時期は、被告への訴状送達されたときである。
 なぜなら、裁判所と当事者の3者がそろって審理を始めれるのは、被告への訴訟送達時である。それ以前の被告の関与がない状態を訴訟係属とするのは被告の防御権を損なう。
(3)本件訴訟は固有必要的共同訴訟ではないか。固有的必要的共同訴訟であるから、訴訟係属時に共同訴訟人全員が参加しない訴訟となって、当事者適格を欠くことにならないのか。
4 固有必要的共同訴訟
(1)固有必要的共同訴訟は、全員を訴訟当事者(原告または被告)としなければ、当事者適格が認められない(民事訴訟法40条1項)。
(2)実体法上、その管理処分権を全員で行使する必要がある場合には、固有必要的共同訴訟にあたる。
 加えて、手続法上の観点にて、紛争解決のためには、全員が訴訟に参加するのが適切であるとされる場合にも、固有必要的共同訴訟にあたる。
5 あてはめ
(1)共有権に基づき移転登記を求める訴えは、共有物であるから全員で管理すべきである。
(2)共有持分者である甲乙が、共有権に基づき移転登記を求める訴えは、他の共有者の関係で、何分の1の持ち分のを有するかを確認しなければ、判決を明確にできないこともあり、固有必要的共同訴訟にあたる。
(3)本件訴訟は固有必要的共同訴訟であるから、X1が死亡していれば、当事者適格を欠く。

第2 
 1 問題
(1) Y2の相続人であるAが原告となることで、本件訴訟は当事者適格を充足するか。
(2)当事者の確定が問題となるが、訴状に記載された当事者(原告、被告)が訴訟の当事者となる(表示説)。
(3)本件訴訟ではY2が当事者となるが、訴訟係属時に死亡しており当事者を欠くことになる。
(2)しかし、Aは、訴訟の受継(民事訴訟法124条)の手続を利用できるか。
 2 訴訟手続の受継
(1)民事訴訟では、訴状が被告に送達されて訴訟事件が係属する。したがって、訴状の送達時に原告と被告が存在することが前提となっている。しかし、被告への訴状送達前に、訴状に記載されていた原告または被告が死亡した場合(死者名義訴訟)には、当事者を欠きくことになる。
(2)訴訟係属後に、当事者が死亡した場合には訴訟手続の受継(124条)という制度がある。しかし、同制度は訴訟結後の承継制度である。
(3)本件では、訴訟係属前に、当事者が死亡しており場合には、同制度の適用はない。
 3 任意的当事者変更
(1)では、Aは任意的当事者変更の手続がとれるか。 
(2)訴状記載の当事者(原告、被告)とは別の者が、裁判所で当事者として活動したが、本来の当事者が、あえてその者の訴訟手続を引き継ぐ任意的当事者変更という手続きがある。その手続の法的性質については、どのように考えるべきか。
(3)訴えの変更(143条)は当事者の変更を含まない。また、当事者の変更を定める訴訟承継(50条1項、51条)は、訴訟係属前に当事者が死亡した場合を法定していない。
(4)したがって、訴訟手続をはじめからやり直すのが適切であるから、任意的当事者変更については、新訴の提起と旧訴の取り下げが併存する複合行為である。
 4 あてはめ
 本件でも、X1は別訴を提起し直して、本件訴訟との併合をもとめ、併合されたことによって、訴訟に全員参加したことによって当事者適格の問題は治癒されたと主張すべきである。

設問2
第3 
 1 問題
(1)XらのYに対する訴訟を前訴訟という。
 前訴訟の口頭弁論終結前に、当事者であるYは係争物である土地の登記をZに移動させた。
(2)前訴訟は確定した。
(3)Xらは、Zに対し所有権に基づく所有権登記移転請求訴訟を提起した。これを後訴訟という。
(4)Xらは、土地の登記についてYにZに対する贈与は虚偽であると主張する。
(5)前訴訟の既判力は、その当事者間にしか及ばないのが原則である(民事訴訟法115条1項1号)。しかし、地の登記についてYにZに対する贈与が虚偽であればZは登記名義にすぎず、何ら利害関係を持たないのであるから民事訴訟法115条1項3号の「請求の目的物を所持する者」として、前訴訟の既判力が及ぶか。
 2 訴訟承継
(1)訴訟係属中の訴訟物たる金銭債権の譲渡を受けたり、訴訟当事者から目的物の所有権(もしくは占有)が譲渡(設定)されたりした場合には、参加承継・引受承継の問題である。
(2)しかし、係争物が譲渡されても参加承継も引受承継も行われず、従前の当事者と相手方の間で判決がされて確定した場合には、その判決の効力は承継人には及ばない。
 3 目的物を所持する者
 承継人が登記を有するだけの者である場合には、目的物を管理する者ではないものの、何ら利害関係も有しないことは同じであるから、民事訴訟115条1項4号の「請求の目的物を所持する者」にあたり判決効が及ぶ。
 3 あてはめ
 Zは登記名義にすぎず、何ら効力を持たないのであるから、民事訴訟法115条1項3号の「請求の目的物を所持する者」に準じて、XとYの既判力が及ぶ。
 4 既判力か、信義則か。
(1)前訴訟は、Xらの売買契約に基づく所有権移転登記手続である。後訴は、Xらの所有権に基づく所有権移転登記手続であるから、訴訟物は一致しない。
(2)しかし、両訴訟の本質は、XらとYの売買契約の成否であり、同一であり紛争の蒸し返しであるから、Yも信義則上、XらとYの売買契約の成立を否定できないし、Zも同じである。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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