Q 令和2年度の司法試験の解答を教えて下さい。
2026/09/05 更新
問題1
第1 課題1
1 問題
(1) Y2は、将来の給付の訴えとして敷金返還請求権の給付訴訟を提起できるか。
2 将来の給付の訴え
(1)将来給付の訴えは、口頭弁論終結時に、期限が到来していない給付の訴えである。
(2)将来の給付の訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、訴えの利益が認められる(民事訴訟法135条)。
(3)損害が継続して発生することが予想される場合、毎回、訴えを提起することを原告に強いるのは酷である。しかし、将来給付の訴えを認めてしまうと、将来の事業が変更になると、逆に債務者側が金額が減少したと訴訟手続をすることになる。あくまで、原告が訴えを提起するのが原則であるとすれば、将来給付の訴えは損害の発生が安定的かつ継続的であることが明確である場合に限られる。
3 あてはめ
(1)本件では、Yらは、敷金であることを争っており、紛争が明確になっている。しかし、敷金というのは、敷金であることやその金額が争点になるだけでなく、明渡し時に原状回復費用や不払い家賃がないかが審理の対象となる。
(2)敷金として総額120万円を返還すべきだとしても、その消滅事由である原状回復費用や不払い家賃が存在しないだろうことがあらかじめ明確になっているとはいえない。
よって、将来の給付の訴えとして敷金返還請求権の給付訴訟を提起できない。
第2 課題2
1 問題
(1) Y2は、敷金返還請求権の確認の訴えを提起できるか。
2 確認の訴え
(1)確認の訴えとは、ある権利関係、法律関係について本案件判決をすることが、原告の権利、法律関係に現存する不安危険を除去するために、必要かつ適切であることをいう。
(2)例えば、100万円を支払えという給付の訴えと、100万円の債権があることの確認の訴えを比べると、確認の訴えだけでは、紛争の解決にとって適切なのか問題となるため、確認の訴えについては、その必要性があるのか問題となってきた。
(3)確認の訴えは、以下の3つの要素で判断される。
3 あてはめ
(1)①確認の訴えが紛争の解決方法として適切どうか(方法選択の適否)。
前述したとおり、将来の給付の訴えとして敷金返還請求権の給付訴訟を提起できない。確認の訴えを提起するしかない。
(2)②確認の対象として選択された訴訟物か適切か(対象選択の適否)。
120万円の敷金のうち法定相続分の60万円の確認を求める敷金債権は、現在の法律関係の確認を求める訴えである。
(3)③確認判決をすべき現実的必要性が認められるか(即時確定の必要性)。
Xは敷金ではなく、礼金であると争っており、紛争が明確になっている。
敷金というのは、敷金であることやその金額が争点になるだけでなく、明渡し時に原状回復費用や不払い家賃がないかが審理の対象となる。
したがって、紛争を前半と後半に分ければ、敷金であるかを確認することは紛争の前半部分を解決することになるので、その部分の紛争を解決でき有益である。
よって、敷金返還請求権の確認の訴えを提起できる。
設問2
第3
1 問題
(1)Y2の和解期日での、Y2の発言(AもXと店の経営に相談していた。)を裁判所の事実認定の基礎にしてよいか。
(2)和解期日は、証拠調べではない。したがって、裁判官は、弁論の全趣旨として事実認定の基礎にしてよいか(民事訴訟法第247条)。
2 ノン・コミットメントルール
(1)民事裁判は、原告と被告が交互に書面や証拠を出し合う期日を経て、尋問、その後に判決と進む。
(2)期日においては、事前に当事者が提出してきた書面、証拠について、争点や不明点について自由に発言することで、三者(裁判官、両当事者)が争点について共通認識を持つ工夫がされている。
(3)仮に、発言に責任を負わされるとなれば、当事者は発言しないだろうし、発言しなければ、そのお互いの認識違いを把握して、共通認識を作ることができなくなる。そうなれば、争点とずれた書面や証拠が出てくることになり訴訟が長期化する。
(4)ノン・コミットメントルール裁判所の期日において、自由な発言を保障するために、口頭で話した内容については、自由に撤回できるという原則である。
3 あてはめ
(1)Y2の発言(AもXと店の経営に相談していた。)は、和解期日での自由な発言である。
(2)これを弁論の全趣旨として事実認定の基礎にすることは許されない。
設問3
第4 課題1
1 問題
(1)賃貸人であるXの賃借人の共同相続人Y1とY2に対する訴訟は、固有必要的共同訴訟となるか。
(2)固有必要的共同訴訟では、全員が共同でしなければ、訴えの取下げができない。訴えの取下げは全員で共同訴訟人の訴えの取下げは不利益な行為であるから効力を生じない(民事訴訟法40条1項)。
(3)Y2の訴えの取下げは、固有必要的共同訴訟となれば認められないことになるのか。
2 固有必要的共同訴訟
(1)実体法上、その管理処分権を全員で行使する必要がある場合には、固有必要的共同訴訟とされる。
(2)加えて、判例は、手続法上の観点(紛争解決のためには、全員が訴訟に参加するのが適切である)という分析を加えて、固有必要的共同訴訟にあたるかを判断される。
3 あてはめ
(1)Y1とY2は賃借人の地位を相続した共同賃借人であり、各自が全ての債務を負う連帯債務である(連帯債務)。
(2)例えば、XがY1に勝訴すれば、Y1は建物明渡し義務の全責任を負い、これを履行すればXが満足する関係にあり、賃貸物の管理を全員でする義務を負っているわけでも、全員で訴訟しなければ訴訟が蒸し返し煮るわけでもない。
(3)Y1とY2の訴訟は固有必要的共同訴訟とならないため、Y2の訴えの取下げも有効である。
第5 課題2
1 問題
(1)Y1とY2は賃借人の地位を相続した共同賃借人であり、訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通しており、両名の訴訟は通常共同訴訟である(民事訴訟法39条)。
(2)Y2の提出した証拠は、Y1の訴訟において、事実認定の基礎にできるか。
2 通常共同訴訟と証拠共通
(1)通常共同訴訟は、個別の事件について一定の関連性があるため (民事訴訟法38条)、 1つの手続に併合されているに過ぎない。
証拠共通の原則を除いて、共同訴訟人の1人の訴訟行為は、他の共同訴訟人に影響を与えない(民事訴訟法39条)(共同訴訟人独立の原則)。
(2)しかし、共同訴訟人の一人が提出した証拠は、他の共同訴訟人が援用しなくても、他の共同訴訟人の訴訟の事実認定で使われる。これが証拠共通の原則である。
(3)真実は、一つしかない。証拠共通の原則の根拠は、このように考えないと、裁判所が正しいと思える事実を認定することができなくなるからである。(自由心証主義)
3 あてはめ
Y2の提出した証拠は、Y1の訴訟において、事実認定の基礎にできる。
4 問題
(1)それでは、Y2が訴えを取り下げて、Y2の訴訟行為が初めからなかったことになる(民事訴訟法262条)。
(2)この場合にも、Y2の提出した証拠は、Y1の訴訟において、事実認定の基礎にできるか。
(3)法律上は、Y2の提出した証拠について証拠調べもなかったことになる。したがって、裁判官は、Y1に、証拠の再提出するように促すべきであるが、Y1が対応しなかった場合には、その証拠を時事認定の基礎とすることが許されない。
以上




