Q 令和3年度の司法試験の解答を教えて下さい。
2026/10/19 更新
問題1の課題1
第1
1 問題
(1)Xは立退料として1000万円を支払うのと引き換えに、建物を明け渡せ。」と申し出ている。
(2)裁判所は、Xの申し出た立退料について、格段の相違のない範囲でXの申し出た金額を超えた立退料を認定し、その立退料と引き換えとして建物を明け渡せ、という判決を出すことはできるか。
(3)原告の主張を超えて引換給付となる金額を明確にすることは、原告が想定していた額以上の経済的な負担を明確にすることもあって、原告の意思に反するか問題となる。
2 立退料と弁論主義
(1)立退料は、期間満了に基づく建物明渡しの正当化事由である。
(2)原告が立退料の主張をしており、裁判所が立退料を認定しても弁論主義に反しない。
2 立退料と処分権主義
(1)裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない(民事訴訟法246条)。
(2)民事訴訟で審理の対象となる実体法上の権利は、もともと当事者は自由に処分する権限がある。したがって、民事訴訟においては、当事者は、訴えを提起するかどうか、審判対象をどうするか、訴訟でいくら請求するか、訴訟を終わらせるかどうかの決定権を有している(処分権主義)。民事訴訟法246条の根拠は処分主義である。
(3)また、民事訴訟法246条は、原告の請求を超えた判決は出されないという形で、判決による不利益を被告に対し予告する機能も持っている。
(4)民事訴訟法246条違反にあたるかは、ある判決が請求の一部認容判決として認められるかどうかは、訴訟物の範囲、原告の合理的意思の範囲に反しないか、被告にとって予見しない結果を招くか、から判断される。
3 あてはめ
(1)まず、裁判所が認定するのは、引換の負担であるから訴訟物の範囲内である。
(2)次に、原告の意思を考える。
最判昭和46年は、原告の申し出額と大きく相違する程度に金額を超えると、処分権主義に反する、という判決をする。
同じく考えれば、裁判所が、立退料を1500万円が相当だと考えてたが、それが原告の申し出額と大きく相違する程度に金額を超えると、①「Xは立退料として1500万円を支払うと引き換えに、Yは建物を明け渡せ。」という判決を出せずに、②「Xの請求を棄却する。」という判決しか出せなくなる。
しかし、①と②を比べれば、原告の請求が認められないという点で同じであるし、Xは立退料をアップされたら検討すると述べていることからも、①の判決をもらってから立退料を支払うかどうか判断できるうえで原告にとって有利であるから、原告の申し出額と大きく相違しない限り、①の判決は、原告の合理的意思の範囲に含まる。
(3)また、そのような判決をすることが被告にとって、原告の申し出より有利となるから不測の負担を課すものではない。
したがって、①のような原告の申し出額と相違のない範囲を超えた判決も許される。
設問1の課題2
第2
1 問題
(1)Xは「立退料として1000万円を支払うのと引き換えに、建物を明け渡せ。」と申し出ている。
(2)裁判所は、Xの申し出た立退料1000万円より少ない金額を立退料として、その立退料と引き換えとして建物を明け渡せ、という判決を出すことはできるか。
2 あてはめ
(1)原告は立退料1000万円は相場より高い、と述べており、立退料を低く設定することは原告の合理的意思の範囲に含まれる。
(2)しかし、被告としては、最低限1000万円をもらえると思っていたところ、例えば、500万円となれば、不測の負担を強いることになる。
(3)原告のもともと申し出ていた立退料と比べて低い額の立退料と引き換えとして建物を明け渡せ、という判決を出すことはできない。
問題2
第3
1 問題
(1) XはYとの間で賃貸借契約の終了に基づく建物明渡し訴訟を提起していた。
(2) その訴訟中に、Yは建物をZに賃貸した。
(3) XとYの訴訟中に、紛争の対象となっている建物の占有をZが承継している。
(4)Xは、Zを被告にすること、訴訟物を土地所有権に基づいて建物収去土地明渡し請求に変更することを前提に訴訟承継の申立てをした(民事訴訟法50条、51条)。
2 訴訟継承の制度
(1)訴訟係属中に、その訴訟物である権利義務関係を第三者が引き継いだ。
(2)今までの訴訟の結果を第三者に引き継がせなければ、再度訴訟をやり直す必要があり、原告にも裁判所にも過剰な負担となる。もっとも、第三者が訴訟結果を引き継ぐことになれば、その第三者の手続保障が問題となる。
(3)この点、実体法を適用した結果、 前訴の当事者の地位に依存する関係に立つ者は、前訴訟の紛争の影響を受けるべき者ではあるし、同当事者と別の立場で権利主張をできるわけではないから、前の訴訟結果に拘束されても手続保障を欠くことは少ない。
3 訴訟承継の要件
(1)以下の考慮して紛争主体たる地位を取得した者にあたるか判断する。
①(ア) 訴訟物である権利義務自体を承継した者、 (イ) 訴訟物である権利義務を先決関係とする権利義務を承継した者(ウ)係争物の所有名義または占有を承継するなどした第三者であること
②第三者に対し、前訴訟と実質的に同一の訴訟をしたこと
③第三者の手続き保障を考えても、従前の訴訟結果を利用して紛争を解決するのが妥当であること
4 あてはめ
(1)①Zは、前訴訟での係争物であった建物の占有を承継している。
(2)②XはZに対し土地所有権に基づいて(建物から退去せという)土地明渡し請求をする。これは、 XはYとの間で賃貸借契約の終了に基づく建物明け渡し訴訟としての、建物から立ち退く義務として同一であるから、承継人にあたる。
(3)また、Zの占有権限は、Yが建物の占有権を有していることが前提であり、Yが占有権限を失えば、Zも占有権限を失う関係にあり、③ZはYと別の立場でYそして自分の占有権権限を主張できるものではない。したがって、ZはYと別の立場で権利主張をできるわけではないから、前の訴訟結果に拘束されても手続保障を欠くことは少ない。
(4)よって、Yは承継人にあたる。
問題3の課題1
第4
1 事実
(1)弁論準備手続が終結し、尋問後が実施され、口頭弁論の終結が予定されている。
(2)この時点で、Yが、更新料の前渡しをしていると新たな主張をし、尋問等を行うことは時期に遅れた攻撃防御方法とならないのか(民事訴訟法157条)。
(3)弁論準備手続後の新たな主張の追加は、合理的な説明が求められる(民事訴訟法174条)。この説明が合理的でなければ、時期に遅れた攻撃防御方法として却下される(民事訴訟法157条)。
2 時期に遅れた攻撃防御方法と要件
(1)時期に遅れた攻撃防御方法にあたるかは、①時期に遅れていること、②故意、過失があること、③訴訟を遅延させることを考慮して、主張や証拠提出が不適法とされるか判断される(民事訴訟法157条)。
(2)弁論準備手続が終結し、尋問後が実施され、口頭弁論の終結が予定されている。したがって、現時点で、新たな主張や、証拠提出を行うことは時期に遅れている。
(3)Yは、Bから土地の更新時にもとめるといけないから、本件通帳を大切にしておくようにといわれており、本件通帳を前提とする新主張をすることが遅れたことについて過失がある。
(4)仮に、新主張を審理するには、本件の通帳の提出と、Aの尋問手続が必要であり、Yが書面を提出して、Xの反論の主張を待つとすれば、訴訟が大きく遅延する。
(5)よって、Yの新主張と証拠提出、尋問請求は時期に遅れた攻撃防御方法として許されない。
第3の課題2
第5
1 問題
(1)仮に、Yの主張が時期に遅れた攻撃防御方法にとして認められないとしても、承継人であるZも主張できなくなるのか。
(2)訴訟承継では、承継原因が生じた時までに形成された従前の当事者(前主) と相手方の間の訴訟状態を、全面的に引き継ぐことが前提となる。
(3)これに対して、訴訟承継では、参加人の手続き保障が問題となるため、従前の当事者(被承継人と相手方)がなれ合い訴訟をしていた場合には、信義則の観点から、従前の訴訟状態からの拘束を免れる、とされる。
2 Xの立場としての主張
(1)本件では、参加承継として訴訟承継がされた。承継人は、承継原因が生じた時までに形成された従前の当事者(前主) と相手方の間の訴訟状態を、全面的に(有利・不利を問わず) 引き継ぎぐ。
(2)承継人は前主であるYが時機に後れたものとして前主がすでに提出できなくなっている攻撃防御方法を提出することもできない。
3 Zの立場としての主張
(1)訴訟承継では、参加人の手続き保障が問題となるため、従前の当事者(被承継人と相手方)がなれ合い訴訟をしていた場合には、信義則の観点から、従前の訴訟状態からの拘束を免れる
(2)本件では、1500万円もの大金の移動であり、少なくともXはこれを認識すべきであるし、仮にこのまま更新を否定されれば、1500万円の大金の支出名目が不明となれば、不当利得の問題が出てくるなど、新たな紛争を生じさせかねない。
そもそも、参加人であるZの手続き保障がされていない。前主であるYもこの主張をしていないのであれば、これらを争う機会がなく、慣れない訴訟と同じ利害関係が生じている。
(3)Yに過失が認めれるとしても、参加人Zには過失がない。参加人Zには、新主張と証拠提出等が認められるべきである。
以上




