民事訴訟

Q 令和5年度の予備試験の解答を教えて下さい。

2026/08/07 更新

設問1
第1 
 1 事案の整理
(1)XはYに対し土地所有権に基づいて建物収去土地明渡しの訴訟を提起し第一審では勝訴した。
(2)控訴審では、Xは上記訴えについて賃貸借契約の不存在の訴えに交換的変更がされている(民事訴訟法143条)。
 交換的併合は、旧請求の取下げと、新訴訟の提起という性質を有する。
 2 問題
(1)控訴審において訴えの交換的変更を行われている。訴えの交換的変更により取り下げられた旧請求について、民事訴訟法262条2項により、後日、再訴訟することが許されなくなる、のが原則である。
(2)Yは、Xの請求は同条に反し許されない、と主張することが考えられる。
 3 「訴えの交換的変更と再訴」と、趣旨と要件
(1)民事訴訟法262条の2項の趣旨は同一紛争をむし返しの防止である。
(2)最判昭和52年7月19日民集31巻4号693頁によれば、控訴審において訴えの交換的併合を行った。そのために取り下げられた旧請求について、新たな訴えの利益が認められる場合には再訴することができる。
 4 あてはめ
(1)本件では、Xは勝訴しており、訴えの変更(訴えの取下げ)に不当な蒸し返しの趣旨はない。
(2)Yには建物の所有権がないというYの主張にあわせて、Xが訴えの趣旨を変更したものである。
(3)これに対して、前訴と変わって、Yが建物の所有権を新たに主張した。これによって、XにはYに対し土地所有権に基づいて建物収去土地明渡しの訴訟を提起する、新たな訴えの利益が生じた。
(4)よって、Yの主張は認められない。

問題2
第2 
 1 問題
(1)Yは自らが本件建物を利用すると説明し、Xはその旨を信じて、XはYとの間で、本件建物所有を目的とする土地の賃貸借契約を成立させる裁判上の和解をした。
(2)Yは、訴訟上の和解について錯誤無効を原因として、どんなことができるか。
 2 裁判上の和解
(1)裁判上の和解は、訴訟を終了させる合意(訴訟上の合意)と、私法上の和解契約(私法上の合意)の2つの背性質を有している。
(2)裁判上の和解が無効である、と主張するには、どのような要件が必要であろうか。これは、裁判上の和解について既判力を認めるかどうか、が問題となる。
(3)既判力が認められると、裁判上の和解の無効を主張するには、民事訴訟法338条1項の事由がある場合に再審の手続きが必要となる。
 3 裁判上の和解の趣旨と定義(制限的肯定説)
(1)民事訴訟法267条は、訴訟上の和解も確定判決と同様の効力を持っている、規定されている。
(2)訴訟上の和解は、紛争を早期に解決したい等の当事者の意思によって、紛争を解決したものであり、判決と同様の手続保障がされていない。
(3)訴訟上の和解は既判力が認められるが、紛争を早期に解決したい等の当事者の意思によって、紛争を解決したものであり、その意思に無効・取消原因があることは、取消原因となる。
 4 あてはめ
(1)Yは自らが本件建物を利用すると説明し、Xはその旨を信じて、XはYとの間で、本件建物所有を目的とする土地の賃貸借契約を成立させる裁判上の和解をした。
(2)店舗として利用することもあり、利用者が異なれば、建物の利用による騒音等のリスクが異なってくる。
(3)和解の基礎となった重大な事実について錯誤があり、訴訟上の和解は無効となる。
 4 裁判上の和解の無効と手続
(1)Xは、訴訟の再開を求めて、和解をした裁判所に期日指定を申し立てることができる。
(2)また、訴訟上の和解の私法上の契約部分である賃貸借契約は無効であるとして、XはYに対し土地所有権に基づいて建物収去土地明渡しの別訴を提起する選択肢もある。
以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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