Q 令和6年度の司法試験の解答を教えて下さい。
2026/08/08 更新
設問1
第1 課題1
1 問題
名文なき任意的訴訟担当の定義と要件を説明する。
2 名文なき任意的訴訟担当の定義
(1)当事者適格は、訴訟物たる権利義務の帰属主体に与えられるのが原則である。しかし、訴訟物たる権利義務の帰属主体に代わって、当事者適格が与えられる場合を訴訟担当という。
(2)名文なき任意的訴訟担当は、訴訟物たる権利義務の主体からの授権に基づく場合でかつ、訴訟担当としての地位を与えることについて法律の定めがない場合をいう。
3 名文なき任意的訴訟担当の要件
(1)法律に基づかない任意的訴訟担当を広く認めると、第三者が他人の訴訟活動をすることができ、弁護士資格制度を骨抜きにしかねない。無資格者が訴訟活動を代行すれば、司法制度が混乱する。
(2)最判昭和45年11月11日民集24巻12号1854頁は、名文なき任意的訴訟担当を認めるには、①弁護士資格制度等を骨抜きにしないこと、②法律の定めがなくても任意的訴訟担当とする合理的必要性が必要であるとした。
設問2
第2 課題1
1 問題
(1)X1は、X2,X3は本件建物の所有権を共有し、本件賃貸借の賃貸人たる地位を得たほか、X2,X3から本件建物の占有者であるYに対し訴訟する代理権を得た。
(2)X1はYに対し、賃貸借の終了に基づく明け渡し請求をするにあたって、X2及びX3から授権を得たとして任意的訴訟担当となることができるか。
2 要件のあてはめ
(1)確かに、最判昭和45年11月11日民集24巻12号1854頁は、組合規約に基づいて、自己の名で組合財産を管理し、対外的業務を遂行する権限を与えられている業務執行組合員について、名文なき任意的訴訟担当にあたるとした。
(2)しかし、民法上の組合は、構成員とは半分独立した存在として活動している。その代表者は通常時において構成員から委託を受けて組合財産を管理している。訴訟にもおいて何も知らない構成員が訴訟活動をするよりも、代表者が訴訟活動をする方が合理的である。
(3)これに対して、X1は共有物の所有者(賃貸人)である。確かに、②本件訴訟においてX1、X2、X3が提出できる証拠や、主張は共通しており、これをX1が代表するという合理性はある。しかし、①X1、X2,X3は相続によって本件建物の共有者等になっただけであるから、素人であるX1が、X2、X3の訴訟活動を代替することを認めると、まさしく無資格者が他人の訴訟をすることになる。
(4)共有物の所有者(賃貸人)の一人にすぎないX1は、X2、X3から授権を得たとして任意的訴訟担当となることはできない。
第3 課題2
1 問題
(1)Yは、弁論準備手続において「本件建物で料理教室を開いた」と発言したところ、X1は「本件建物で料理教室を開いたことは使用目的の違反である。」という主張をする予定である。
(2)Yの上記発言は裁判上の自白となるのか。
2 裁判上の自白の定義と要件
(1)裁判上の自白の成立要件は、①相手方の主張と一致すること、②口頭弁論または弁論準備手続における主張であること、③事実の主張であること、④自己に不利益な主張であることである。
(2)裁判上の自白となれば、Yは同主張を撤回できない。
3 裁判上の自白の定義とあてはめ
(1)Yは「本件建物で料理教室を開いた」と発言し、Xも「Yが本件建物で料理教室を開いた。」と発言するもので①一致する。
(2)「本件建物で料理教室を開いた」という事実は、用法順守義務違反という法的評価を基礎づける具体的事実であるから、③主張事実である。
(3)上記は用法順守義務違反を成立させる事実であるから、④Yにとって不利益な事実である。
(4)弁論準備手続において「本件建物で料理教室を開いた」との発言は、②口頭弁論または弁論準備手続における主張であるか。
4 主張の定義とあてはめ
(1)「主張」とは、訴状、答弁書、準備書面(以下、「主張書面」という。)に事実が記載されて、期日にて、例えば、当事者が「準備書面のとおり陳述します。」と口頭で述べたことが必要である。
(2)本件では、弁論準備手続において、裁判所が争点を確定するために、自由に発言してよいとして、発言を保障したものであり、かつ、Yは主張書面で提出もしていないのであるから、主張ではない。
(3)よって、Yの上記発言は裁判上の自白とならない。
設問3
第4
1 問題
(1)本判決は確定した。これを前訴訟という。Xは、「前訴訟の口頭弁論終結前に本件建物でセミナーを開催され用法順守義務違反があった。」ことを知った。つまり、口頭弁論終結前に発生していた事情に基づく解除権が存在することを知った。
(2)実体法上は、Xは同解除権を行使することは否定されない。
(3)Xは後訴訟を提起し、後訴訟にて、解除権を行使した事実を主張することは、前訴訟の既判力により制限されないか。
2 既判力の遮断効の定義と趣旨
(1)実体法上は、訴訟の結果によって、取消権や解除権の行使を制限する理由はない。既判力の基準時は、当該確定判決に係る訴訟の口頭弁論終結時である 。これらを行使したのは基準日後であるから、これらの行使は既判力では遮断されなくてもよいはずである。
(2)しかし、これらの行使を自由に認めては、紛争が蒸し返される結果、原告にとって大きな負担となる(法的安定性)。
被告はこれらを行使できたのにしなかったのであるから、これらの権利行使を認める必要はない(提出責任)。
(3)前訴訟の口頭弁論終結前に発生した事情に基づく解除権の行使は、既判力によって遮断され、後訴で解除権の行使をすることはできない。これが遮断効力である。
3 定義とあてはめ
Xは後訴訟を提起し、後訴訟にて、解除権を行使した事実を主張することは、前訴訟の既判力により許されない。
以上




