民事訴訟

Q 令和7年の司法試験の解答を教えて下さい。

2026/08/13 更新

設問1
第1 課題1
 1 問題
(1)遺産確認の訴えは、固有必要的訴訟にあたるか。
 2 必要的共同訴訟の定義と趣旨
(1)固有必要的共同訴訟は、全員を訴訟当事者(原告または被告)としなければ、当事者適格が認められない訴訟 である(民事訴訟法40条1項)。
(2)実体法上、その管理処分権を全員で行使する必要がある場合には、固有必要的共同訴訟にあたる。
 加えて、手続法上の観点にて、紛争解決のためには、全員が訴訟に参加するのが適切であるとされる場合にも、固有必要的共同訴訟にあたる。
 2 あてはめ
(1)遺産確認の訴えは、共有状態にある遺産に関する訴訟であるから、実体法上、その管理処分権を全員で行使すべき場合にあたる。
(2)さらに、遺産分割協議の前提として、当該財産が遺産分割の対象となることについて既判力をもって確定することが有益です。また、後日、訴訟に関与していない人が別の主張をすることになればやり直しになる可能性がることを考えれば、手続法上の観点、紛争解決のためには、全員が訴訟に参加するのが適切であるので、固有必要的共同訴訟にあたる。

第2 課題2
 1 問題
(1)XとYの間には、遺産(相続財産)の範囲に争いがあるが、Bとの間に争いがない場合にも、Bとの間に確認の歴が認められるか。
2 確認の訴えの定義と趣旨
(1)確認の訴えとは、ある権利関係、法律関係について本案件判決をすることが、原告の権利、法律関係に現存する不安危険を除去するために、必要かつ適切であることをいう。
 例えば、100万円を支払えという給付の訴えでは、金銭の回収に直結するが、AがBに100万円を支払う義務があることを確認する確認の訴えでは、金銭の回収まで直結しない。したがって、確認の訴えを提起することが必要かつ適切であるのか訴えの利益が問題となる。
(2)確認の訴えは、以下の3つに分けて考えられる。
3 確認の利益の要件とあてはめ
(1)①確認の訴えが紛争の解決方法として適切どうか(方法選択の適否)。
 相続手続では遺産の範囲を確認して、その後にどのように分けるか判断していきます。したがって、遺産分割協議の前提として、当該財産が遺産分割の対象となることについて既判力をもって確定することが紛争の有益であり、適切です。
(2)②確認の対象として選択された訴訟物か適切か(対象選択の適否)。
 遺産確認の訴えは、分割前の共有状態となっている現在の財産の共有関係を確認するものであり、現在の権利関係、法律関係を確認するものであり、適切です。
(3)③確認判決をすべき現実的必要性が認められるか(即時確定の必要性)。
 入会地の確認の訴えの訴訟では、他の当事者が原告と、入会地の範囲についての見解が異なった事案であった。しかし、本件では、Bとの間に争いがない場合にも、Bとの間に確認の利益が認められるか問題となる。
(4)この点、遺産確認の訴えは、固有必要的共同訴訟であり、Bを被告とする訴えも認められないとなれば、当事者適格が認められない。 
 よって、Bとの間にも、Bを被告として訴訟に書き込み確定判決を確認の利益が認められる。

第3 質問2
1 問題
(1)Xは本件契約書の存在を証拠として、AがCから本件建物を購入したことを立証しょうとしていたが、Yがその本件契約書を破棄した。
(2)Yが、Xにとって有利な証拠を破棄した場合に、証明妨害として、Xの主張が認められるべきではないだろうか。
2 証明妨害の定義と定義
(1)証明妨害とは、訴訟当事者が、故意または過失により、相手方による証拠の収集・提出を困難にしたり妨害したり行為をいう。
(2)当事者には、誠実な訴訟活動として真実の解明に協力する義務があり(訴訟における信義則・民事訴訟法2条)、この義務に違反したことにより、妨害者に不利な扱いをすることを認められる(信義則説)。
3 証明妨害の要件と効果
(1)証明妨害の要件としては、①破棄をしてはいけない証拠であると認識させる事情があること、②証拠を破棄したことに故意、過失があること、②そのために要証事実が真偽不明になったことが必要である。
(2)証明妨害の効果としては、証明妨害に至った経緯はさまざまであり、画一的な処理ができない。裁判所が事案に応じて自由心証主義により、要証事実の存在について考慮すべきである。
4 証明妨害の要件とあてはめ
(1)本件売買契約書は、AがCから本件建物を購入したこと、つまり、本件建物がAの遺産であることの重要な証拠である。
(2)令和5年5月、CはYに対し、AがCから本件建物を購入したこと、その契約書のうちCが保管していたものは処分してしまったことを聞いた。
令和5年5月の遺産分割協議では、本件建物がAの遺産に含まれるか問題となっており、「AがCから本件建物を購入した」という内容の本件契約書は、本件建物をAが購入しその所有権を有していたか、紛争の解決をするうえで、重要な証拠であることをYは認識していた。
つまり、Yには、①本件売買契約書について破棄をしてはいけない証拠であると認識させる事情が存在した。
(3)令和5年夏ころ、Yは本件契約書を破棄した。Yは、その行為によって、AがCから本件建物を購入したことを立証することを困難にすること認識が存在した。②故意が存在する。
(3)令和6年3月に、Cは死亡し、Cから上記の証言を得ることができず、③本件契約書が唯一の証拠とである。
(4)以上より、本件契約書を破棄して、XがCから本件建物を購入したことを立証することを妨害した。
5 証明妨害の効果とあてはめ
(1)証明妨害の効果として裁判所が事案に応じて自由心証主義により決すべきである。
(2)Yが、Cより、AがCから本件建物を購入したと聞いて、その契約書を破棄したのは悪質であるし、本件契約書に「AがCから本件建物を購入した」と記載があるのであれば、本件契約書が存在すれば、その契約書の内容どおりの事実を認定すべきであるから、Xの上記の主張が認められるべきである。

問題3
第4 課題1
 1 問題
(1)Xは、本件建物の所有権をAが所持していたと主張する。
(2)そのため、Xは、①Cの元所有、②ACの売買を主張している。これに対して、YはYCの売買を主張して、②の事実を否認している。
(3)裁判所は、③YはAより、本件建物の死因贈与を受けたという心証を抱いた。
(4)③の事実は、原告の請求原因との関係で抗弁となるのか。
 1 主要事実及び抗弁の定義
(1)主要事実は、実体法上の権利の発生、変更、消滅を発生させる、法律上の要件に該当する具体的な事実である。
(2)請求原因と抗弁は主張事実に該当する。
(3)抗弁とは、(ア)その主張事実が請求原因事実と両立し、(イ)その主要事実の効果が請求原因から生じる効果を阻害するものをいう。
2 主要事実及び抗弁のあてはめ
(1)Xは、本件建物の所有権をAが所持していたと主張する(訴訟物)。
(2)そのため、Xは、①Cの元所有、②ACの売買を主張している。これが請求原因にあたる。
(3)本件各事実は、③YはAより、本件建物の死因贈与を受けたという事実を推認させる事実である。
  抗弁の定義で考えれば、(ア)本件各事実は、請求原因事実(本件建物の所有権をAが所持していた)と両立し、(イ)その後、贈与によって所有権を失ったとして請求原因事実の効果を阻害するものである。仮に、本件各事実が主張事実であれば、本件各事実は、抗弁となるとも思える。
3 評価根拠事実についての主張事実
(1)死因贈与をしたという事実が主張事実であり、本件各事実は間接事実になるのではないか。
(2)しかし、例えば、民法709条の「過失」は法的評価である。これを基礎づける具体的事実が主要事実である。
(3)死因贈与についての黙示の意思表示も評価根拠事実であるから、これを基礎づける具体的事実としての本件各事実が主要事実である。
(3)したがって、本件各事実は、抗弁である。

第5 課題2
1 問題
(1)裁判所は、③YはAより、本件建物の死因贈与を受けたという心証を抱いた。
(2)しかし、③の事実が主張事実になるのであれば、当事者の主張がない場合にこれを認定することは弁論主義に反するのか。
2 弁論主義の定義と趣旨
(1)弁論主義は、民事訴訟においては、当事者は裁判の基礎となるべき事実及び証拠の収集、提出において、当事者がこれを決定する権限を有し、その義務を負う、という原則である。
(2)弁論主義の根拠は、民事訴訟で審理の対象となる紛争については、もともと当事者が自由に話し合って解決することができるものであるからである(私的自治説)。
3 弁論主義の要件
(1)裁判所は、当事者の主張しない事実を裁判の基礎として採用してはならい。
(2)なお、ここでいう事実は主要事実に限られる。間接事実や間接事実まで、当事者の主張がない限り認められないとすると、裁判所が自由に事実を認定することができなくなるからである(自由心証主義)。
(3)主要事実は、実体法上の権利の発生、変更、消滅を発生させる、法律上の要件(要件事実)に該当する具体的な事実をいう。
(4)請求原因及抗弁がこれにあたる。
4 弁論主義と不意打ち防止
(1)例えば、裁判所が当事者が主張していない事実の可能性を指摘したが、当事者があくまで主張しなかった場合に、その事実を認めても不意打ちにあたらない。
(2)不意打ちにあたらないのであれば、裁判所がその事実を認定しても、弁論主義違反となるのはなぜか。
(3)弁論主義の根拠は、どのような事実を主張するのか、争点の設定という訴訟進行について当事者の意思を反映させるものである(私的自治)。
(4)例えば、裁判所が当事者が主張していない事実の可能性を指摘したが、当事者があくまで主張しなかった場合に、その事実を認めても不意打ちにあたらない。しかし、これを認めてしまえば、争点設定について当事者の意思を無視することになるだけでなく、(当事者の主張していない)あらゆる事実が争点になることにほかならず、妥当ではない。

6 課題3
1 問題
(1)裁判所は、③YはAより、本件建物の死因贈与を受けたという心証を抱いた。
(2)しかし、当事者が③の事実を主張しない場合、裁判所はその事実を主張しないか、釈明する義務はあるのか。
2 釈明権の定義と趣旨(釈明権の不行使が違法である場合)
(1)釈明権は、訴訟手続を円滑に進めるために、裁判官は、当事者に対し質問したり、特定の事項を主張、立証したりするように促す裁判所の権限である。
(2)処分権主義、弁論主義を徹底すれば、当事者が主張、立証しないために、「勝つべき者が負ける。」ということが発生する。しかし、裁判所には司法権として、事実を解明しその真実に適合した判決をする責任があり、その責任を果たすために、釈明権が認められている。
(3)積極的釈明権については、処分権主義、弁論主義に反するという考え方もある。処分権主義、弁論主義の根底には自己責任がある。しかし、当事者が主張、立証しないために、「勝つべき者が負ける。」ということが発生するのは、手持ち情報が不足することが原因であり、自己責任の根拠を欠く。裁判所には釈明権を行使して裁判所の手持ち情報を伝え、事実を解明しその真実に適合した判決をする責任がある。
3 釈明権の要件
(1)したがって、①裁判所が真実・妥当だと考える結論について、当事者が主張していないこと、②訴訟経緯を考えると、当事者が同主張をする機会を与えないことが公平でない場合には、裁判所は、裁判所が考える法律構成の主張をしないか、と問い合わせる釈明義務がある。
4 釈明権の要件のあてはめ
(1)本件訴訟では、弁論準備手続(168条)によって、争点は、ACの売買であると整理されている。
(2)したがって、XとYとしては、「YはAより、本件建物の死因贈与を受けた。」という主張の当否について検討する機会はなかったのであり、その機会を与えるのが公平である。したがって、裁判所は、当事者であるXとYに対し、裁判所が考える法律構成の主張をしないか、と釈明する義務がある。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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