Q 令和7年度の予備試験の解答を教えて下さい。
2026/08/10 更新
設問1
第1
1 問題
(1)Xは、本件予測表について民事訴訟法220条4号の除外事由がないとして、4号文書として文書提出命令を申立てた。
(2)これに対して、Yは、同文書が、民事訴訟法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」にあたると主張する。以下、自己利用文書という。
(3)本件予定表は、自己利用文書にあたるか。
2 4号文書の定義と自己利用文書の要件
(1)4号文書とは、民事訴訟法220条4号が定める除外事由がない限り、文書の提出義務を負うという一般的な提出義務が認められている文書である。
(2)これに対して、自己利用文書とは、①文書が外部に公開することを予定していない文書であること(内部文書性)、および②開示することで、個人のプライバシーや団体の自由な意思決定が阻害されるなど、所持者の所持者側に看過し難い不利益が生ずるおそれがある(不利益性)場合には、③特段の事情がない限り、自己利用文書に当たる。
3 自己利用文書の要件とあてはめ(①について)
(1)Yは、本件予定表が案件の社内的な決済で使われる書類の添付書類であること、Yの内部規則にてYの役員限りで取り扱う文書とされており、外部への公開を予定していない文書である、と主張するだろう。
(2)これに対して、Xは、Yの内部規則では、Yの取締役会の同意がある場合には裁判手続等で提出されると規定しており、外部への公開が否定されている文書ではない、と反論する。
4 自己利用文書の要件とあてはめ(②について)
(1)Yは、本件予定表には、本件アパートの賃貸事業の損益予想が記載されているが、これが公開されるとなると、今後、事情予想としては慎重な査定をせざるを得なくなり、萎縮効果で大胆な貸し付けができなくなる等の不利益がある。と主張するだろう。
(2)これに対して、Xは、本件アパートの賃貸事業の損益予想は、X及び周辺の不動産の情報等の情報をそのまま転記する方法で作られているから、誰でも同じ結果になるので作成者の裁量は小さくこれを公開することで萎縮効果等の不利益は生じない、と反論する。
5 自己利用文書の要件とあてはめ(③について)
(1)加えて、③特段の事情もなく、本件予定表は、自己利用文書にあたらない。
(2)Xの文書開示名命令は認とめられる。
設問2
第2 本訴請求している部分について
1 問題点
(1) Xは、3億円のうち1億円を請求する明示的一部請求を行っている。
(2) これに対して、Yは4億円の請求をした。
(3)Yが請求について、Xが本訴請求で請求している1億円について相殺の主張ができるだろうか。これは二重起訴の禁止(民事訴訟法142条)に反するか。
2 二重起訴と、相殺の抗弁
(1)まず、相殺の主張は訴えではない。
(2)しかし、相殺の抗弁についても既判力が生じる(民事訴訟法114条2項)。例えば、別訴で請求している債権について、これを自働債権として相殺の抗弁を主張すれば、別々の訴訟で同じ債権について審理され、それぞれの判決が出てその判決の既判力の衝突が生じうるがため、二重起訴の禁止に反する(民事訴訟法142条)。
3 二重起訴と、反訴
(1)反訴の場合は同一裁判所で審理されるから、二つの訴訟物の判断が矛盾することは有りえない。しかし、弁論が分離される可能性(民事訴訟法152条1項)があるから、反訴の場合でも二重起訴にあたり原則禁止される。
(2)しかし、最判令和2年9月11日民集74巻6号1693頁は、本訴たる請負代金債権と、反訴たる瑕疵修補に代わる損害賠償請求について、同一の原因関係に基づく金銭債権である。相殺の担保的機能(相殺が認められてお金が支払ってもらったの同じ効果がある)ことを考えられれば、反訴たる瑕疵修補に代わる損害賠償請求について、本訴たる請負代金債権を自働債権とする相殺の主張をすることを認めた。
4 要件
(1)反訴請求と本請求が同一の事情で生じた場合には、相殺のうえでその支払額が決まるのが公平である。
(2)したがって、反訴請求と本請求が同一の事情で生じた場合には、反訴請求について本訴の請求債権について、これを自働債権として相殺の抗弁を主張することが許される。
5 要件とあてはめ
反訴のYの請求も、Xが本訴請求で請求している1億円も同一の貸付という事実から生じており、相殺の上でその支払額が決まるのが公平であるから、相殺の主張が許される。
第3 本訴請求していない部分について
1 問題点
(1)Xは、3億円のうち1億円を請求する明示的一部請求を行っている。
(2)これに対して、Yは4億円の請求をした。
(3)Yが請求について、Xが本訴請求で請求していない2億円について相殺の主張ができるだろうか。これは二重起訴の禁止(民事訴訟法142条)に反するか。
2 明示的一部請求と反訴
(1)二重起訴(142条)が禁止されるのは、両請求について既判力が抵触する可能性があるからである。
(2)この点、明示的一部請求については、その一部請求のみが訴訟物となる (最判昭和34年2月20日民集13巻2号209条)。したがって、別訴訟での相殺の主張についての判断との関係で既判力は衝突しない。
(3)よって、Xの相殺の主張が許される。




