民事訴訟

Q 令和8年度の司法試験の問題を教えて下さい。

2026/08/12 更新

[民事系科目]
〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は、25:35:40])
 次の文章を読んで、後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、令和8年1月1日現在において施行されている法令に基づいて答えなさい。


【事 例】
1.Xは、電子機器の製造・販売を業とする株式会社である。Xは、同じく電子機器の製造・販売を業とする株式会社であるY1との間で、代金500万円で、Y1が見本市に出品する新製品に使用するための部品である甲をXが製造して、Y1に引き渡す旨の請負契約(以下「本件契約」という。)を締結した。その際、Xと株式会社であるY2との間で、Y1の本件契約の請負代金債務について、Y2が連帯して保証する旨の契約(以下「本件保証契約」という。)が締結された。
2.甲の製造工程の前半部分は、独自の技術を持つ株式会社であるZがXから請け負い、Xは、Zが製造した甲の原型物に対して、更にX独自の技術を用いて最終的な仕上加工を施して甲を完成した。なお、XとZは、上記各製造工程をそれぞれ別々の工場で行っており、金型や機械設備等を共有していなかった。また、Zが担当する上記製造工程は、部外秘とされているZの他の主力製品の製造工程と共通する部分が多くあるため、同じく部外秘とされていた。
3.Xは、本件契約に基づき、甲を製造してY1に引き渡した。ところが、Y1は、支払期限を経過しても本件契約の請負代金を支払わなかったことから、Xは、弁護士L1に訴訟委任をし、Y1及びY2を共同被告として、Y1に対し本件契約に基づき、Y2に対し本件保証契約に基づき、連帯して500万円を支払うことを求める訴え(以下「本件訴え」という。)を提起し、Y1は、弁護士L2に訴訟委任をした。なお、本件訴えのうち、XのY1に対する訴え(以下、この訴えに係る訴訟を「Y1訴訟」という。)の訴訟物は、請負契約に基づく代金支払請求権であり、Xは訴状において、請求原因として、①XとY1は、本件契約を締結したこと、②Xは、甲を完成したことを主張した。
4.本件訴えに係る訴訟(以下「本件訴訟」という。)の第1回口頭弁論期日において、L1は、訴状を陳述し、L2は、「訴状記載の事実のうち、(ア)XとY1が本件契約を締結したこと、Xが甲を完成したことはいずれも認める。しかし、甲は、Y1が引渡しを受けた直後から度々不具合を起こしたため、Y1は、その旨Xに速やかに通知した上、見本市に間に合わせるためにある修理業者に甲の修理等を依頼したところ、甲には、本件契約で合意した性能が備わっておらず、欠陥があることが判明した。そして、(イ)Y1は、甲の修理費用として500万円を支出したので、Xに対して本件契約の不適合責任に基づく同額の損害賠償債権を有しており、これを自働債権として、本件契約に基づく請負代金債権と対当額で相殺する。」と記載された答弁書を陳述し、請求棄却判決を求めた。
5.他方、XのY2に対する訴え(以下、この訴えに係る訴訟を「Y2訴訟」という。)につき、Y2は訴状、呼出状等の書類の交付送達を受けていたものの、訴訟代理人に委任することなく本件訴訟の第1回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書等の準備書面も提出しなかった。しかし、裁判所は、Y1訴訟及びY2訴訟のいずれについても、口頭弁論の続行の期日を指定した。

以下は、第1回口頭弁論期日終了後にされた、L1と司法修習生Pとの会話である。
P: 裁判所が、Y2訴訟につき、第1回口頭弁論期日において、直ちに口頭弁論を分離して、口頭弁論を終結しなかったのは、なぜでしょうか。
L1: Y1訴訟とY2訴訟について実体的に統一した判断をしたかったのかもしれません。ところで、Y2が続行の期日にも欠席した場合においても、Y1とY2について統一的判断をするための理論構成として、どのようなものが考えられますか。
P: 本件訴訟の共同訴訟形態は、民事訴訟法(以下「法」という。)第40条の適用を受けない通常共同訴訟であると思いますが、Y1とY2との間で主張共通を肯定する考え方(以下「肯定説」という。)があります。しかし、これを認めることは、弁論主義に反し、許されないのではないでしょうか。
L1: 私も、肯定説に立つことには問題があると考えていますが、ここでの中心的な問題点は、弁論主義との関係というよりは、むしろ共同訴訟人独立の原則(法第39条)との関係であると思いますので、この点に焦点を当てて検討しましょう。まず、本件訴訟の共同訴訟形態は通常共同訴訟であるとします。そして、一般的に、肯定説において、主張共通が認められるのがどのような主張であるかを明らかにした上、肯定説を前提とした場合に、前記4(ア)及び(イ)のY1の各主張につき主張共通が認められるかについて検討してください。これを「課題1」とします。次に、主張共通を否定する考え方(以下「否定説」という。)の根拠及び肯定説の問題点について説明してください。その際には、まず、否定説の根拠について、否定説が共同訴訟人独立の原則の趣旨をどのように考えているのかを踏まえつつ、明らかにしてください。さらに、肯定説の問題点について、前記【事例】の事実関係も踏まえつつ、指摘してください。以上を「課題2」とします。なお、課題1及び課題2について、Y1がY2に当然に補助参加したとする構成は採用しないことを前提に検討してください。
P: 承知しました。

〔設問1〕
あなたが司法修習生Pであるとして、L1から与えられた課題1及び課題2について答えなさい。なお、以下に掲げる【事例(続き・その1)】及び【事例(続き・その2)】に記載されている事実関係は考慮しなくてよい。

【事例(続き・その1)】
6.その後、本件訴訟の第2回口頭弁論期日が開かれたが、Y2は、同期日にも出頭せず、答弁書等の準備書面も提出しなかった。そこで、裁判所は、本件訴訟のうちY2訴訟につき、口頭弁論を分離した上で、口頭弁論を終結し、Y2訴訟の第3回口頭弁論期日において、XのY2に対する請求を全部認容する旨の判決を言い渡し、同判決は、そのまま確定した。
7.Y1訴訟は、第2回口頭弁論期日の後に、弁論準備手続に付され、争点及び証拠の整理が進められた。その結果、争点は、前記4の損害賠償債権の存否に絞られた。同争点に関し、引渡時における甲の欠陥の有無及びその原因が問題となり、Y1は、前記4の修理業者とのやり取りから、甲の欠陥の原因は、Zが担う製造工程又はXが担う製造工程のいずれかにある可能性が高いが、そのどちらであるかがまだ判然とはしないと主張した。その上で、Y1は、まず、上記修理業者に欠陥の原因の特定を求めたが、直ちには分からないとして回答を得られず、さらに、Xに対して、Xが担う製造工程の作業工程表を任意に提出するよう求めたが、Xは、「技術…の秘密」(法第220条第4号ハ、第197条第1項第3号。以下「技術の秘密」という。)に該当するとして提出を拒んだ。また、Y1は、Zに対しても、Zが所持する、甲の原型物の金型に関する設計図面や作業工程表等(以下「本件図面等」という。)を任意に開示するよう求めたが、Zは、これを拒絶した。
8.Y1は、本件図面等について、法第220条第4号を文書提出義務の原因として、その所持者であるZに対する文書提出命令の申立てをした。これに対し、Zは、同申立てに係る審尋期日において、本件図面等に記載された情報は、専らXから請け負った甲の製造のためのものではあるが、前記2のとおり、Zの他の主力製品の製造に用いられる技術を応用したものでもあり、技術の秘密に該当するため、提出義務を負わないと主張した。

    以下は、Zから相談を受けた弁護士L3と司法修習生Qとの会話である。
    L3: 法第197条第1項第3号の「技術又は職業の秘密」の意義については、「その事項が公開されると、当該技術の有する社会的価値が下落しこれによる活動が困難になるもの又は当該職業に深刻な影響を与え以降その遂行が困難になるものをいう」(最高裁判所平成12年3月10日第一小法廷決定・民集54巻3号1073頁。以下「平成12年判例」という。)とされています。これらの秘密のうち、職業の秘密については、報道関係者の取材源について、上記の意味での職業の秘密に当たる場合でも、そのうち保護に値する秘密についてのみ証言拒絶が認められるとした最高裁判所の決定(最高裁判所平成18年10月3日第三小法廷決定・民集60巻8号2647頁。以下「平成18年判例」という。)があり、また、金融機関が顧客の財務状況、業務状況等について分析、評価した情報について、保護に値する職業の秘密に当たる場合に限り、それが記載された文書の提出を拒絶することができるとした最高裁判所の決定(最高裁判所平成20年11月25日第三小法廷決定・民集62巻10号2507頁。以下「平成20年判例」という。)もあります。そこでQさん、職業の秘密が保護に値する秘密に該当するかどうかについて、平成18年判例及び平成20年判例が示した判断基準を説明してもらえますか。そして、そのような職業の秘密についての判断基準を踏まえて、技術の秘密が問題となっている本件図面等について、保護に値する秘密が記載されていることを理由に、Zが提出を拒むことができるとする方向で立論してみてください。以上を「課題1」とします。
    Q: 承知しました。ところで、本件訴えが提起された後に、L1に対して、本件図面等の写しが渡されていますね。
    L3: そうです。Y1から契約不適合責任の主張があったことから、L1からの依頼で、飽くまで本件訴訟の参考資料として、Zの了解を得た上で、私からL1に事実上渡したものです。Zからは、「本件図面等は、Xには開示しないでほしい」との要請があったことから、その旨を私からL1に伝えており、L1もXもその点を了解しています。もっとも、このL1が所持する本件図面等の写しが文書提出命令の対象になるかどうかについては、検討しておく必要がありそうです。なお、本件図面等にはZの製造工程に関する秘密のみが記載され、Xの製造工程に関する秘密は含まれていません。
    Q: L1が所持する本件図面等の写しは、「弁護士…が職務上知り得た事実」が記載されている文書(法第220条第4号ハ及び第197条第1項第2号)に該当するのではないでしょうか。
    L3: 本件でL1に依頼したのはXですが、弁護士が職務上知り得た事実には依頼者以外の秘密も含まれるという解釈を前提とすると、Qさんが言うとおりですね。ところで法第197条第1項第2号の「黙秘すべきもの」の意義について、最高裁判所の決定ではどのように述べられていますか。
    Q: 「黙秘すべきもの」とは、「一般に知られていない事実のうち、弁護士等に事務を行うこと等を依頼した本人が、これを秘匿することについて、単に主観的利益だけではなく、客観的にみて保護に値するような利益を有するものをいう」とされています(最高裁判所平成16年11月26日第二小法廷決定・民集58巻8号2393頁。以下「平成16年判例」という。)。
    L3: そうですね。この点に関して、平成16年判例がいう保護に値するような利益を有するものへの該当性判断に当たって、本件図面等に記載された情報そのものは技術の秘密に該当することを考慮すると、課題1で検討した保護に値する秘密の該当性判断の基準と同一の基準で判断すべき、という考え方もありそうですね。
    Q: 確かにそうですね。しかし、そのような考え方によることについては、法第197条第1項第2号の趣旨と整合しないのではないかという問題もありそうですね。
    L3: そうですね。そこでQさん、課題1で説明してもらった保護に値する秘密の該当性の判断基準と、平成16年判例の保護に値するような利益を有するものの該当性の判断基準は同一と解すべきか、それとも異なると解すべきかについて、検討してください。その際、法第197条第1項第2号及び同項第3号の趣旨並びにその異同を踏まえてください。これを「課題2」とします。なお、本件図面等の記載が平成16年判例の保護に値するような利益を有するものに該当するかに関する当てはめは不要です。
    Q: 承知しました。

    〔設問2〕
    あなたが司法修習生Qであるとして、L3から与えられた課題1及び課題2について答えなさい。なお、以下に掲げる【事例(続き・その2)】に記載されている事実関係は考慮しなくてよい。

    【事例(続き・その2)】
    9. Y1訴訟においては、争点及び証拠の整理手続並びに証拠調べを経て、口頭弁論が終結された。そして、裁判所は、本件契約に基づく請負代金債権500万円及びその契約不適合責任に基づく損害賠償債権500万円の存在がいずれも認められると判断した上で、両者が対当額で相殺されたとして、Y1に対する請求を全部棄却する判決を言い渡し、同判決は、そのまま確定した。
    10.その後、Xは、Y2に対し、前記6の確定判決を債務名義とする強制執行の準備を進めていたところ、Y2は、弁護士L4に訴訟委任をして、Xを被告として、同債務名義による強制執行の不許を求める請求異議の訴え(民事執行法第35条。以下「本件後訴」という。)を提起した。
    11.本件後訴において、Y2は、自分が前訴である本件訴訟において口頭弁論の期日に出頭せず、何らの攻撃防御方法も提出しなかったのは、Y1から「本件訴えについては当方で対処するからY2は何もしなくてよい。」と言われたためであると主張した。そして、「(1) XのY1に対する本件契約の請負代金請求権についてはY1訴訟において請求棄却判決が確定しているから、本件後訴においてY1訴訟の確定判決を援用する。(2) 仮に、Y1訴訟の確定判決の援用が認められないとしても、Y1の相殺権の行使により、本件保証契約に基づく保証債務は付従性により消滅するのであるから、そのような相殺による消滅を本件後訴で主張立証することは、Y2訴訟の確定判決の既判力に抵触せず許容される。」と主張した。

      以下は、本件後訴の担当裁判官Jと司法修習生Rとの会話である。
      J: 確定判決に対する請求異議の訴えは、当該確定判決の内容となっている給付請求権について、同判決の既判力の基準時(事実審の口頭弁論終結時をいう。以下同じ。)後の消滅原因等を主張して、強制執行の不許を求める訴えですが、まず、前記11(1)の主張(以下「主張(1)」という。)が認められるかを検討しましょう。Rさん、本件後訴に類似した事案の判例として、何かありますか。
      R: はい。保証人に対する保証債務履行請求を全部認容する判決がされて、同判決が確定した後に、主債務者に対する給付請求につき、主債務の成立が無権代理によりそもそも認められないとの理由で全部棄却する判決がされて、同判決が確定したという事案において、保証人が主債務者勝訴の確定判決があることを請求異議の事由とすることを否定した判例(最高裁判所昭和51年10月21日第一小法廷判決・民集30巻9号903頁。以下「昭和51年判例」という。)があります。この判例は、仮に、主債務者勝訴の確定判決の効果を保証人が援用することができる、すなわち、確定判決の反射的効力(以下「反射効」という。)を肯定し得ると解したとしても、その主債務者勝訴の確定判決が、保証人敗訴の確定判決の基準時までに生じた事実を理由としている以上、保証人が同主債務者勝訴の確定判決をもって請求異議の事由とすることはできないとしたものです。昭和51年判例が反射効を一般的に認めたものかについては争いがありますが、反射効を肯定し得るとしたとしても、それは保証人が既に受けた確定判決の既判力に劣後すると解したものといえるように思われます。
      J: そうですね。Y2の主張(1)の当否を検討する際には、昭和51年判例を意識する必要があると思います。そこでRさん、既判力による遮断が必要とされる根拠及び正当化される根拠について簡潔に説明した上で、昭和51年判例のような事案において保証人敗訴の判決確定後に主債務者勝訴の判決が確定した場合に、仮に反射効を一般には認めたとしても、保証人が主債務者勝訴の確定判決を援用できないとされる理由を説明してください。これを「課題1」とします。なお、反射効を肯定する場合の法律構成については議論がありますが、昭和51年判例のような事案に関する限り、結論としては、保証人による主債務者勝訴の確定判決の援用を否定する見解が有力だと思いますので、仮に反射効を肯定する場合にどのような法律構成を前提とするかについては、検討する必要はありません。
      R: 承知しました。
      J: 次に、前記11(2)の主張(以下「主張(2)」という。)についてはどう考えますか。
      R: これについては、前訴基準時前にすでに相殺適状にあったにもかかわらず相殺権を行使せずに敗訴した被告が請求異議の訴えを提起した場合に、異議の事由として相殺権の行使の主張を認めた判例(最高裁判所昭和40年4月2日第二小法廷判決・民集19巻3号539頁。以下「昭和40年判例」という。)があります。
      J: そうですね。Y2の主張(2)の当否を検討する際には、昭和51年判例とともに、この昭和40年判例との関係も問題となりそうです。そこでRさん、昭和40年判例と本件後訴の事案の異同、及び昭和51年判例と本件後訴の事案の異同を簡潔に整理した上で、主張(2)の当否について検討し、結論を示してください。その際には、訴訟上の相殺の意思表示をしただけでは、実体法上の相殺の効果はまだ生じておらず、Y2としては、相殺による主債務の消滅そのものをY2訴訟の基準時前に主張することはできなかったこと、そのため、Y2は、本件訴訟において、相殺による主債務の消滅を主張することができたわけではないものの、主債務者の有する相殺権を理由として保証債務の履行を拒む可能性(民法第457条第3項)があったことを前提としてください。その上で、①本件訴訟においてY2が損害賠償債権の要件を主張立証することが実際上期待できたか、②Y2が主張する、Y2訴訟での自らの応訴の態様とその理由が主張(2)の当否に影響するか、及び③本件訴訟において弁論が分離されたことが主張(2)の当否に影響するか、といった点も考慮するようにしてください。これを「課題2」とします。
      R: 承知しました。

      〔設問3〕
      あなたが司法修習生Rであるとして、Jから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。

      弁護士 井上正人
       この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
      弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

      相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

      「民事訴訟」トップに戻る

      Contact.お問い合わせ

      ご質問・ご相談などお気軽に
      お問い合わせください。