Q 判決が、原告の請求(申立事項)を超えないか、どうやって判断しますか。(引換給付判決)
2026/08/25 更新
申立事項(民事訴訟法246条)
(1)裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない(民事訴訟法246条)。
(2)民事訴訟で審理の対象となる実体法上の権利は、もともと当事者は自由に処分する権限がある。したがって、民事訴訟においては、当事者は、訴えを提起するかどうか、審判対象をどうするか、訴訟でいくら請求するか、訴訟を終わらせるかどうかの決定権を有している(処分権主義)。民事訴訟法246条の根拠は処分主義である。
(3)また、民事訴訟法246条は、原告の請求を超えた判決は出されないという形で、判決による不利益を被告に対し予告する機能も持っている。
(4)民事訴訟法246条違反にあたるかは、ある判決が請求の一部認容判決として認められるかどうかは、訴訟物の範囲、原告の合理的意思の範囲に反しないか、被告にとって予見しない結果を招くか、から判断される。
| 民事訴訟法246条(判決事項) 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。 |
引換給付判決についての検討
引換給付判決については、質的範囲の問題として、①原告の意思の範囲にあるのか、②被告の予測範囲にあるのか問題となる。
無条件の給付請求に対して、 代金を支払うことを引き換えとする引換給付判決をすることは、原告の経済的な負担を明確にすることもあって、原告の意思に反するか問題となる。
原告の意思を確認したうえで、原告が支払う意思を有する金額と大きく違わない範囲について引換給付判決をするのであれば、請求棄却判決によりも、原告の意思に合致する。
また、被告にとっても、当初の原告の申立てよりも有利であるから、民事訴訟法246条に反しない。
| なお、弁論主義の問題があるから、同時履行の抗弁権を認めるには、被告の権利主張が必要である。 |
参考
藤田広美「解析 民事訴訟 第2版」317頁、318頁
引換給付判決
(1)無条件の給付請求に対して、 留置権の抗弁が認められるとして、引換給付判決をすることは許される。(最判昭和47年11月16日民集 26巻9号1619 等)。
(2)家屋明渡請求訴訟において,、一定金額の立退料の支払と引換えでの、またはこれを条件とする明渡しが請求されたのに対して、賃貸人による立退料支払の申出の趣旨に反しない限度で立退料を増額して引換給付を命じることも許される (最判昭和46年11月25日民集 25巻8号1343頁) 。
一時金賠償方式と定期金賠償方式
(1)損害賠償請求で原告が一時金による支払いが求められているのに対し、定期金による支払を命じることは処分権主義に反する(最判昭和62年2月6日判時1232号100頁)。
(2)しかし、 損害賠償請求で原告が一時金による支払いを求めているのに対し、逸失利益については一時金、将来の介護費用については定期金による支払を命じることは処分権主義に反しない、とした判例もある(東京高判平成15年7月29日判時1838号69頁)。
参考
田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 97頁




