民事訴訟

Q 平成19年度の旧司法試験の第2問の解答を教えて下さい。

2026/08/22 更新

第1 
 1 問題
(1)債権者甲は、債務者乙に代位して、第三債務者である丙に対し乙が丙に対する売買代金の支払いを請求している。
(2)債権者代位訴訟において、①被保全債権の存在、②債務者の無資力は当事者適格を基礎づける訴訟要件であり、③被代位債権の存否が訴訟物となる(民法423条)。
(3)①被保全債権の存在の存否はどのように審理されるべきか。
 2 債権者代位訴訟の当事者適格
(1)①被保全債権の存在の存否は、債権者代位訴訟の当事者適格を有するか、という問題である。
(2)まずは、訴訟要件であるから原則通り、(申立によらず調査が始まる)職権調査事項となる。
(3)次に、債権者代位訴訟も、私法上の権利義務を根拠に、第三者のための訴訟の当事者となることができるかが問題となるのであるから、訴弁論主義が適用される。
 つまり、裁判所は、当事者に証拠を提出させて、その証拠に基づいて判断するべきである。
 3 審理の順番
(1)①②は訴訟要件、③は本案判決の問題である。しかし、訴訟要件は本案判決を下すための要件である。
(2)しかし、審理において、これらを同時並行に審理することができる。


第2
 1 問題
(1)乙の丙に対する売買代金債権が弁済により消滅したことが明らかになった。
(2)つまり、訴訟物である③被代位債権の存否が明確になった場合に、①被保全債権の存在、②債務者の無資力等の第三者の訴訟担当となれるか、訴訟要件を満たすか、明確になる前に請求棄却判決をだせるか。
 2 訴訟要件と本案判決
(1)訴訟要件は本案判決を下すための要件である。
(2)しかし、訴訟要件の審理をする前に、本案案件が棄却されるべきことが分かった場合に、どちらにしても原告の請求が認められなのであるから、本案判決である請求棄却判決をしてもよい、という考え方もある。
 2 債権者代位の効力
(1)債権者代位は第三者の訴訟担当であるから、債権者に対する判決の効力は、勝訴敗訴に関わらず、債権者代位訴訟の当事者である債権者(115条1項1号)のみならず、当該債権の帰属者である債務者にも及ぶ(115条1項2号)。
(2)債務者の手続保障が問題となるので、第三者の訴訟担当としての要件を満たさないのに、本案の棄却という効果を債権者に負わすことはできない。
 3 あてはめ
(1)乙の丙に対する売買代金債権が弁済により消滅したことが明らかになったとしても、訴訟要件を満たすことが明確になる前に、請求棄却判決を出すことはできない。

第3 
 1 問題
(1)債権者代位訴訟の確定後に、甲の貸金債権が存在しないことが明確になった。
(2)債権者代位訴訟の確定後に、①被保全債権の不存在が分かり、第三者の訴訟担当となる資格がなかったことが分かった。
 2 債権者代位訴訟の判決の効力
 債権者代位は第三者の訴訟担当であるから、債権者に対する判決の効力は、勝訴敗訴に関わらず、債権者代位訴訟の当事者である債権者(115条1項1号)のみならず、当該債権の帰属者である債務者にも及ぶ(115条1項2号)。
 3 第三者の訴訟担当となるための訴訟要件
(1)債権者代位訴訟で請求棄却判決が出て確定した後も、債務者は債権者代位訴訟の当事者適格の不存在(被保全債権と無資力)を立証すれば、「他人のために」(民事訴訟法115条1項2号)という要件を欠くために、債権者代位訴訟の判決の効力を否定できるという考え方も存在した。
(2)しかし、令和4年2月に民法423条の6が新設された。同条は債務者の手続保障のため、債権者は債務者に訴訟告知することになった。
(3)したがって、債務者が手続保障の機会を与えられているのに、これに参加しなかったのであるから、同見解は妥当でない。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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