民事訴訟

Q 平成27年度の予備試験の解答を教えて下さい。

2026/09/12 更新

設問1
第1 
 1 問題
 不法行為に基づく人損請求について、精神的損害と物損的損害で訴訟物を分けない理由と、その利点は何か。
 2 訴訟物
(1)訴訟物とは、裁判における審判の対象のことである。
(2)旧訴訟物理論では、実体法の権利(請求権や、形成権)ごとに訴訟物を構成すると考える。
 3 民法709条、民法710条
(1)民法709条と民法710条は、人訴と物損で分けて規定されている。
(2)したがって、人訴と物損は訴訟物が異なる。
(3)これに対して、精神的損害と物損的損害で訴訟物が分けられておらず、これは人損請求として訴訟物は一つとなる。
 3 訴訟物が異なる場合
(1)原告の請求と、裁判所が認められると考える請求が訴訟物として同じでない場合には、裁判所はその事実を認められない。
(2)逆に言えば、一つの訴訟物であれば、原告の請求項目と裁判所の認定項目が多少違っても総額が原告の請求以下であればそのまま認定しうる。
 4 具体例
(1)理屈の上では、原告の請求する治療費等と精神的損害の金額が同じ1000万円の範囲内であれば、原告の請求が治療費700万円、精神損害300万円であるところ、治療費300万円、精神損害400万円と認定することが可能である。
(2)実務的には、交通事故と後遺症との論理的な因果関係が不明な場合には、慰謝料等の増額によって裁量的な調整を図り妥当な結論を出す工夫がされている。
 仮に、財産的な損害と慰謝料を別々の訴訟物ととなっていれば、このような解決が図れない。
(3)なお、慰謝料の金額を増額するのではなく、原告が主張していない費用項目や費用の金額を超える金額を認定することは被告にとって不意打ちとなり弁論主義に違反する可能性がある。

設問2
第1 
 1 問題
(1)弁護士Aは、過失相殺を見込んで、損害が1000万円のところ、700万円を請求している。これは明示的一部請求である。
(2)弁護士Aの意図は何か。
 2 明示的一部請求
(1)数量的一部請求は、数量的に可分な債権に対して、残りの部分を後日請求することを前提として、その一部を請求する一部請求である。
(2)本件では、1000万円のうち700万円を請求すると述べているので、数量的一部請求である。
 3 明示的一部請求と相殺の主張
(1)明示的一部請求については、その一部請求のみが訴訟物となる 。
(2)明示的一部請求について、被告が過失相殺等の抗弁を提出した場合に、過失相殺は、債権のどの部分に充当されるか。
 過失相殺は、債権全額から計算され、その残額の範囲で原告の請求が認容される。 例えば1000万円のうち700万円を請求している場合に、3割の過失相殺が認められるとする。そうなると、1000万円×0.7=700万円となるから、原告の請求を全額認めることになる。
(3)上記のように理解することが原告の意向にそい、紛争の一回的解決に資するからである。
4 弁護士Aの意図
(1) 弁護士Aとしては、1000万円全額について訴訟をして、3割の過失相殺が認められ、700万円が認められることを目指すこともできる。
(2) また、本件のように、一部請求をして、700万円が認められることを目指すこともできる。
(3)もっとも一部請求をした方が、印紙代が低くなるので、それが目的である。
以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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