民事訴訟

Q 平成28年度の予備試験の解答を教えて下さい。

2026/09/14 更新

設問1
第1 
 1 問題
(1)XはY1及びY2を被告として甲土地の所有権に基づき登記移転請求の訴えを提起している。
(2)裁判所は、以下の事実を認定したいと考えている。
①Y1は、Xから代物弁済で甲土地を取得した。
②Xは、Y1から甲土地を買い戻した。
③XはY2に甲土地について譲渡担保を設定した。
④譲渡担保が実行されて、Y2がXから甲土地の所有権を取得した。
(2)しかし、当事者が③④の主張をしていないため、③④の事実を認定することは弁論主義に反しないか。
2 弁論主義の趣旨
(1)弁論主義は、民事訴訟においては、当事者は裁判の基礎となるべき事実及び証拠の収集、提出において、当事者がこれを決定する権限を有し、その義務を負う、という原則である。
(2)弁論主義の根拠は、民事訴訟で審理の対象となる紛争については、もともと当事者が自由に話し合って解決することができるものであるからである(私的自治説)。
3 弁論主義の第一テーゼ
(1) 裁判所は当事者の主張しない事実を認定できない。
(2) なお、ここでいう事実は主要事実に限られる。間接事実や補助事実まで、当事者の主張がない限り認められないとすると、裁判所が自由に事実を認定することができなくなるからである(自由心証主義)。
4 主要事実
(1)主要事実は、実体法上の権利の発生、変更、消滅を発生させる、法律上の要件(要件事実)に該当する具体的な事実をいう。
(2)請求原因及抗弁がこれにあたる。
(3)抗弁とは、(1)抗弁とは、①請求原因事実と両立し、②が請求原因から生じる法 律効果を否定する効果を発生させる事実をいう
5 あてはめ
(1)Xは甲土地の所有権に基づき登記移転請求の訴えを提起している。
(2)①②は請求原因である。③④は、抗弁である。
(3)当事者の主張なく、③④を認定することは弁論主義に反し許されない。

第2 
 1 問題
(1)裁判所は、上記③④の主張がないからとって、何ら釈明せずに③④の事実を認定しなくてよいのか。
(2)裁判所には釈明義務があるのではないか(民事訴訟法142条)。
 2 釈明権の本質
(1)釈明権は、訴訟手続を円滑に進めるために、裁判官は、当事者に対し質問したり、特定の事項を主張、立証したりするように促す裁判所の権限である。
(2)処分権主義、弁論主義を徹底すれば、当事者が主張、立証しないために、「勝つべき者が負ける。」ということが発生する。しかし、裁判所には司法権として、事実を解明しその真実に適合した判決をする責任があり、その責任を果たすために、釈明権が認められている。
(3)積極的釈明権については、処分権主義、弁論主義に反するという考え方もある。処分権主義、弁論主義の根底には自己責任がある。しかし、当事者が主張、立証しないために、「勝つべき者が負ける。」ということが発生するのは、手持ち情報が不足することが原因であり、自己責任の根拠を欠く。裁判所には釈明権を行使して裁判所の手持ち情報を伝え、事実を解明しその真実に適合した判決をする責任がある。
2 釈明権の要件
 したがって、裁判所が真実・妥当だと考える結論について、当事者が主張していないこと、訴訟経緯を考えると、当事者が同主張をする機会を与えないことが公平でない場合には、裁判所は、裁判所が考える法律構成の主張をしないか、と問い合わせる釈明義務がある。
3 あてはめ。
(1)本件では、Y2らは、③④を主張していないが、Y2はXから甲土地を購入したと主張している。
(2)売買と譲渡担保は法律上の評価の違いであり、法律の評価の問題である。法的な評価は裁判所がすることであって、その評価の誤りをもって、当事者に責任を負わすのは酷である。
(3)よって、本件では、裁判所は③④の主張をしないかと釈明する義務を負う。

設問2
第3 
1 問題
(1) 本件訴訟にてXとY2の訴訟でXが勝訴した。以下、前訴訟という。
(2)前訴訟は確定した。
(3)前訴訟の口頭弁論終結後に、ZがY2から甲土地の所有権を得た。
(4) 本件訴訟の既判力は当事者であるXとY2らにしか及ばないのが原則である(民事訴訟法115条1項1号)。
(5) しかし、Zは口頭弁論終結後の承継人として、本件訴訟の既判力が及ぶのではないか民事訴訟法115条1項3号)。
2 口頭弁論終結後の承継人
(1)口頭弁論終結後に、その訴訟物である権利義務関係を引き継ぎ、完成した既判力を第三者訴訟引き継いだ。
(2)今までの訴訟の結果を第三者に引き継がせなければ、再度訴訟をやり直す必要があり、原告にも裁判所にも過剰な負担となる。もっとも、第三者が訴訟結果を引き継ぐことになれば、その第三者の手続保障が問題となる。
(3)この点、実体法を適用した結果、 前訴の当事者の地位に依存する関係に立つ者は、前訴訟の紛争の影響を受けるべき者ではあるし、同当事者と別の立場で権利主張をできるわけではないから、前の訴訟結果に拘束されても手続保障を欠くことは少ない。
3 要件
 口頭弁論終結後の承継人にあたるかは、前訴確定判決の訴訟物である権利義務自体を承継したか、固有の攻撃防御方法を有するか、で判断される。
4 あてはめ
Zは、本件訴訟の目的物の所有権名義を取得した者にあたるが、Y2の無権利を知らずに、民法94条2項の適用を受ける等の独自の主張が出来る立場が無ければ、口頭弁論終結後の承継人にあたり、本件訴訟の既判力が及ぶ。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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