民事訴訟

Q 平成29年度の予備試験の解答を教えて下さい。

2026/09/16 更新

設問1
第1 
1 問題
(1)XとYは、甲土地を共有しているが、Yが一人で賃料を独占している。
(2)そこで、XはYに対し、賃料について不当利得返還請求権を行使する。
(3)XはYに対し口頭弁論終結後の分まで請求できるか。
2 将来給付の訴えの趣旨
(1)将来給付の訴えは、口頭弁論終結時に、期限が到来していない給付の訴えである。
(2)将来の給付の訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、訴えの利益が認められる(民事訴訟法135条)。
(3)損害が継続して発生することが予想される場合、毎回、訴えを提起することを原告に強いるのは酷である。しかし、将来給付の訴えを認めてしまうと、将来の事業が変更になると、逆に債務者側が金額が減少したと訴訟手続をすることになる。あくまで、原告が訴えを提起するのが原則であるとすれば、将来給付の訴えは損害の発生が安定的かつ継続的であることが明確である場合に限られる。
3 将来給付の訴えの要件
 よって、かかる将来請求が認められる理由は、①同一態様の行為が将来も継続することが予測されること、②将来の請求権の成否及び額をあらかじめ予見できること、③請求権の消滅または減額を被告に立証させても公平を害しないことが必要である。
4 あてはめ
(1)XとYは、甲土地を共有しているが、Yが一人で賃料を独占している。しかし、Xとしては今後、Aに対し賃料の2分の1を支払ってほしいと交渉することもでき、今後もYが利得し続けるわけではないから、①も不明である。
(2)Aの経営が順調であり、かつ、Aが今まで支払いを怠ったことが無いことからすれば、AがYに支払う賃料額も一定程度継続することが予想されるが、賃料そのものは相場によって上下するために、今後10年間の金額をよそうすることは難しく、②も不明である。
(3)例えば、Aが倒産した場合に、Yが請求異議の訴えをするべきとえるかもしれないが、そもそも、Xとしては今後、Aに対し賃料の2分の1を支払ってほしいと交渉することもでき、それをせずに将来給付を認めるのが公平ともいえない。
(3)よって、口頭弁論終結後分までの請求は認められない。

設問2
1 整理
(1)Xは300万円の支払いを請求した。
(2)これに対して、Yは、本件貸付債権500万円を自働債権として相殺の抗弁を主張した
(3)裁判所は、相殺の抗弁について、本件貸付債権500万円のうち450万円が弁済されているとして、50万円について存在すると判断して、50万円の相殺を認め、Xの請求を250万円とする判決を下した。
2 問題
(1)裁判所は「本件貸付債権500万円について債務全額が存在した。」という判断をしているが、この判断に既判力が及ぶか。
(2)既判力が及ばないとしても信義則上制限を受けるか。
3 既判力
(1)既判力は、主文に包括するものに限り生じる(114条1項)のが原則であり、相殺の主張を除いて(114条2項)、既判力は理由中の判断には及ばない 。
(2)しかし、被告が相殺の抗弁を主張し、その成否が裁判所に判断された場合、裁判所が自働債権を不存在としたその理由中の判断について「相殺をもって対抗した額」について既判力を有する。
4 あてはめ
(1)裁判所は、Yの本件貸付債権500万円について、50万円は自働債権として相殺で消滅した、と判断している。
(2)したがって、Yの本件貸付債権500万円のうち、50万円の消滅について既判力が及ぶ。
5 信義則の問題
(1)既判力が及ばないとしても、第1訴訟では、裁判所は、「本件貸付債権500万円について債務全額が存在した。」という判断をしている。信義則によって、Yの請求450万円についても棄却されないのか。
(2)明示的一部請求の訴訟では、一部請求についてその額よりも低い金額以下の認定がされた場合、裁判所が請求額全額について認定したうえで、その金額が一部請求の金額以下になると判断している。つまり、実質的に残請求分を含めて存在しないことが審理されていることを理由として、残請求を信義則上許されないとして却下した。
(3)同じく考えると、Yは、第一訴訟にて、「本件貸付債権500万円について債務全額が存在した。」と判断されている。よって、第2訴訟では、Yは、信義則上450万円が存在するとはいえず、第2訴訟は信義則上却下される。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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