Q 平成29年度の司法試験の解答を教えて下さい。
2026/09/06 更新
設問1
第1
1 問題
(1)Xは予備的に、「①XとYは200万円で本件絵画を購入する売買契約を締結した。」と主張する。
(2)これに対して、裁判所は、①XとAの売買契約②YがAに代理権を与えたこと、③AがYのために、①の契約を締結した、という心証を抱いた。
(3)しかし、裁判所は、当事者の主張していない事実を認定することは弁論主義に反しないだろうか。
2 弁論主義の定義と趣旨
(1)弁論主義は、民事訴訟においては、当事者は裁判の基礎となるべき事実及び証拠の収集、提出において、当事者がこれを決定する権限を有し、その義務を負う、という原則である。
(2)弁論主義の根拠は、民事訴訟で審理の対象となる紛争については、もともと当事者が自由に話し合って解決することができるものであるからである(私的自治説)。
3 弁論主義の要件
(1)裁判所は、当事者の主張しない事実を裁判の基礎として採用してはならい。
(2)なお、ここでいう事実は主要事実に限られる。間接事実や間接事実まで、当事者の主張がない限り認められないとすると、裁判所が自由に事実を認定することができなくなるからである(自由心証主義)。
(3)主要事実は、実体法上の権利の発生、変更、消滅を発生させる、法律上の要件(要件事実)に該当する具体的な事実をいう。
4 あてはめ
(1)当事者であるXが①XとYの売買契約しか主張していないのに、裁判所が、①XとAの売買契約②YがAに代理権を与えたこと、③AがYのために、①の契約を締結した、という事実を認定することは弁論主義に反し許されない。
5 釈明義務
(1)両当事者が主張がかけていることに気が付いておらず、これを認定せず、裁判所が、この点で請求原因が認められないとすると、原告にとって不意打ちとなる。
(2)判例は、代理人については争いがなければ、当事者が主張していなくても認定してよいとする。会社等であれば、従業員が行った行為も会社に帰属させるなど、代理や使者の区別は判然とせず、争点になっていなければ、そのまま認定も問題ないという理屈は分かる。
(3)もっとも、争いがないという理由で、当事者の主張していない事実を認定することは、逆言えば、当事者が主張していないあらゆる事実を認定可能か、裁判所が審理することになれば、訴訟の遅延を招く。
(4)したがって、弁論主義として、当事者の主張しない事実を認定することは許されない。もっとも、本件では、裁判所が、代理人での事実認定の可能性について釈明して、不意打ちを防ぐ必要がある。
設問2
第1 課題1
1 訴訟物
(1)「仮に、この取引が売買であれば、本件絵画を相当額である200万円で引き渡せ」というXの仮の主張は、訴訟物とすればどうなるのか。
(2)これは、売買契約に基づく目的物引渡し請求権を訴訟物である。
(3)したがって、請求原因は、①XとYは相当額で本件絵画を購入する売買契約を締結した。②相当額が200万円であることである。
(4)上記のXの請求は、予備的請求の追加であり、訴えの追加的変更が必要である(民事訴訟法143条1項)。
2 Yの抗弁
(1)Yは、300万円の支払いを求めているところ、どのような主張をすれば、200万円の引き換えに本件絵画を引き渡せ、という判決をもらえるか。
(2)Yは、同時履行の抗弁権を主張する、という抗弁を主張すれば足りる。
(3)また、Yが①XとYは相当額で本件絵画を購入する売買契約を締結した。②相当額が2000万円であるという主張は、①については自白となる。
第2 課題2
1 問題
(1)裁判所が、本件絵画の相当額が180万円だと考えた場合に、どのような判決をすることになるのか。
(2)Xが無留保に本件絵画の引き渡しを求めているのに対し、裁判所が、180万円と引き換えに、本件絵画を引き渡せ、との判決をすることができるか。
(3)無条件の給付請求に対して、 代金を支払うことを引き換えとする引換給付判決をすることは、原告の経済的な負担を明確にすることもあって、原告の意思に反するか問題となる。
2 処分権主義
(1)裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない(民事訴訟法246条)。
(2)民事訴訟で審理の対象となる実体法上の権利は、もともと当事者は自由に処分する権限がある。したがって、民事訴訟においては、当事者は、訴えを提起するかどうか、審判対象をどうするか、訴訟でいくら請求するか、訴訟を終わらせるかどうかの決定権を有している(処分権主義)。民事訴訟法246条の根拠は処分主義である。
(3)また、民事訴訟法246条は、原告の請求を超えた判決は出されないという形で、判決による不利益を被告に対し予告する機能も持っている。
(4)民事訴訟法246条違反にあたるか、ある判決が請求の一部認容判決として認められるかどうか、判決の内容が原告の合理的意思の範囲に含まれるか、 そのような判決をすることが被告にとって不測の負担を課すことになるか、観点から判断される。
3 あてはめ
(1)Xが無留保に本件絵画の引き渡しを求めているのに対し、「180万円と引き換えに、本件絵画を引き渡せ」と判断できない、となれば請求棄却判決をするしかない。しかし、Xは、絵画の値段は200万円であると主張しており、請求棄却判決を下すよりも、自認している200万円よりも少ない180万円の引換給付判決をすることはXの意思に反しない。
(2)しかし、Yは少なくとも200万円はもらえると思っていたので、180万円であると認定されること不測の負担をかす。
(2)したがって、180万円という認定はできず、「200万円の引き換えに本件絵画を引き渡せ。」という判決を下すことになる。
第2 課題2
1 問題
(1)裁判所が、本件絵画の相当額が220万円だと考えた場合に、どのような判決をすることになるのか。
(2)Xが無留保に本件絵画の引き渡しを求めているのに対し、裁判所が、220万円と引き換えに、本件絵画を引き渡せ、との判決をすることができるか。
(3)無条件の給付請求に対して、 代金を支払うことを引き換えとする引換給付判決をすることは、原告の経済的な負担を明確にすることもあって、原告の意思に反するか問題となる。
2 処分権主義
(1)Xが無留保に本件絵画の引き渡しを求めているのに対し、「220万円と引き換えに、本件絵画を引き渡せ」と判断できない、となれば請求棄却判決をするしかない。しかし、Xは、絵画の値段は200万円であると主張しており、請求棄却判決を下すよりも、自認している200万円と格別離れることのない220万円の引換給付判決をすることはXの意思に反しない。
(3)Yにとっても、Xが主張している200万円より有利であるから、Yにも不測の負担を課すことはない。
(4)したがって、「220万円の引き換えに本件絵画を引き渡せ。」という判決を下べきっである。
第3 設問3
1 第一訴訟
(1)第一訴訟において、「YはXに対し、200万円を支払うことの引き換えに本件絵画を引き渡せ。」との判決を得た。
(2)既判力は主文におおける訴訟物に生じる(民事訴訟法114条)
(4)よって、売買契約に基づく目的物引渡し請求権として、「YはXに対し、200万円を支払うことの引き換えに本件絵画を引き渡せ。」との限りで生じる。
2 第二訴訟
(1)YはXに対し、売買契約に基づく代金請求権として200万円を訴訟物とする第二訴訟を提起した。
(2)第一訴訟と第二訴訟で訴訟物は異なる。
(3)しかし、Yの第二訴訟は争点も当事者も同じで紛争の蒸し返しであるから争点効で遮断されないか。
3 争点効
(1)当事者が同じ、争点も同じ、紛争が蒸し返しである場合には、争点効により後訴訟は却下されないか。
(2)争点効の根拠は信義則である。
(3)信義則を根拠とするのであれば、争点効として一般的な要件を設定するよりも、事案の個別事情を考慮して信義則で対応した方が妥当な解決が図れる。
4 あてはめ
(1)本件では、XとYの当事者は同いつである。
(2)XとYは、第一訴訟にて、売買なのか、贈与なのか、相当代金はいくらか、について争った。第二訴訟でも同じ点が争点となる。
(3)よって、Yが提起した第二訴訟は却下される。
以上




