民事訴訟

Q 平成9年度の旧司法試験の第2問の解答を教えて下さい。

2026/08/23 更新

第1 
1 問題
(1)甲の請求は、2000万円のうち500万円の支払を求めている。
(2)これは、明示的一部請求であるか。この場合の訴訟物はどうなるのか。
2 明示的一部請求
(1)数量的に可分な債権の一部であることを明示していた訴訟の訴訟物は、その一部に限られる。
(2)原告は、訴訟物を選択する権利がある(処分権主義)。前訴で請求されていない残部については、訴訟物となっていないと考えるのが、素直な解釈である。
 民事訴訟法では、訴額が大きくなれば印紙が増える。原告にとって、請求を分割することは必要である。
(3)確かに、原告の都合で、被告が何度も応訴を強いられる被告の負担も考慮しなければならない。
(4)しかし、一部請求であると明示されていれば、被告も残部請求について債務不存在確認等を提起してその不利益を解消する手段がある。
(5)よって、①数量的に可分な債権の一部であることが明示されている場合には、明示的一部請求の訴訟物は、その一部に限られる。
第2
1 問題
(1)甲は2000万円のうち500万円を請求する明示的一部請求訴訟で敗訴した。
(2)前訴訟の既判力は訴訟物に限り生じる(民事訴訟法114条1項)ところ、明示的一部請求の訴訟物は一部請求である500万円であるから、甲は残額1500万円について請求できるだろうか。
2 訴訟物の観点
(1)明示的一部請求については、その一部請求のみが訴訟物となる。したがって、前訴と、後訴は訴訟物が別となるから、前訴訟で敗訴したとしても、後訴訟では、その影響を受けない。
(2)つまり、前訴の既判力により、原告の訴えが許されなくなるものではない。
3 信義則の検討
(1)しかし、明示一部請求において、その全部又は一部について敗訴した原告については、その残部を含めた請求全額について審理され、かつ、認容額を超えた部分について(残部請求を含む)ことが存在しないことが判断している。
(3)つまり、後訴の訴訟は、前訴で不存在と判断された請求権について再度、訴訟提起するものであるから、正しく紛争の蒸し返しにあたる(紛争の蒸し返し)。
(4)よって、前訴で、明示的一部請求したが、その全部又は一部について敗訴した原告は、その残部について後訴を提起することは信義則上許されない。
4 結論
 原告は明示的一部請求の訴訟で請求棄却となっているから、甲は残額1500万円について請求することは信義則上許されない。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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