【重要判例】判例(文書開示命令を拒否する理由となる、刑事訴訟関係文書)
2026/08/11 更新
3号後段の法律文書と刑事訴訟関係文書
(1)刑事関係書類の捜索差押許可状、勾留状、鑑定書は、民事訴訟法220条3号後段の法律文書(「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成された」文書)にあたります。
(2)国を被告とする訴訟で、国は刑訴法47条の「訴訟に関する書類」に該当するとして開示を拒否しました。
(3)刑訴法47条が刑事訴訟関係文書について開示を拒否している根拠は、将来の捜査への影響への配慮、刑事記録に記載されている人々(被害者、目撃者を含む)のプライバシーの保護です。
(4)最判平成16年5月25日民集5号1135は、刑事訴訟関係文書が3号後段の法律文書に該当する場合には、刑訴法47条の「訴訟に関する書類」に該当しても、民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無、程度、当該文書が開示されることによる被告人、被疑者等の名誉、プライバシーの侵害等の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情考慮して、開示を命じることができる、とした。(民事訴訟法判例百選【第6版】142頁)
| 民事訴訟法220条 文書提出義務 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。 一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。 二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。 三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。 四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。 イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書 ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書 ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。) ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書 |
最判平成16年5月25日(民集58巻5号1135)
(1)詐欺罪で有罪判決を受けた者が、保険会社から保険金の返還を求められた訴訟で、国(検察)に対し、公判で提出されなかった供述調書について、民事訴訟法220条3号後段の法律文書(「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成された」文書)として開示を求めた。
(2)詐欺罪で有罪判決を受けていることや、刑事公判で提出された証拠を提出することも可能であるを考慮して、文書開示命令は認められないとされた(民事訴訟法判例百選【第6版】142頁)。
最判平成17年7月22日(民集59巻6号1837頁)
(1)各捜索差押がされたが、約2年から4年が経過し、判決当時も、本件は捜査中であった。捜索差押えを受けた者が、同捜索差押えは違法であるとして、国家賠償訴訟を提起した訴訟で、県(警察)に対し、捜索差押請求書と捜索差押許可状について、民事訴訟法220条3号後段の法律文書(「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成された」文書)として開示を求めた。
(2)捜索差押許可状は民事訴訟法220条3号の「法律関係文書」に該当する。刑訴法47条の「訴訟に関する書類」に該当として開示を拒否することは違法である。
(3)これ対して、捜索差押請求書は捜査で分かっていることを記載して裁判所に捜索差し押さえる詳細な情報が記載されているところ、捜索差押から約2年から4年が経過したとしても、今後の捜査、公判、関係者のプライバシーに大きな影響があるとして、刑訴法47条の「訴訟に関する書類」に該当として開示を拒否することは違法ではない。(小林秀之「判例講義民事訴訟法」170頁)
最判平成19年12月12日(民集61巻9号3400頁)
(1)強姦されたとして、告訴状が出されて、逮捕勾留されたが、不起訴となった。逮捕勾留された者Xが、逮捕勾留は違法であるとして、国家賠償訴訟を提起した訴訟で、国(検察)に対し、告訴状と告訴人の供述書について、民事訴訟法220条3号後段の法律文書(「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成された」文書)として開示を求めた。
(2)告訴状と告訴人の供述書は、民事訴訟法220条3号の「法律関係文書」に該当する。
(3)告訴状と告訴人の供述書について、被害者Xに対する損害賠償請求を提起する別訴を提起しており、その訴訟のなかでXの供述内容が明らかになることを容認していること、事件が不起訴で終了していること、検察官が告訴人の供述を詳細に記載した陳述書を提出していること等を考慮すると、今後の捜査、公判、関係者のプライバシーに大きな影響があるとはいえないとして、刑訴法47条の「訴訟に関する書類」に該当として開示を拒否することは違法である。(小林秀之「判例講義民事訴訟法」172頁)
最判令和6年10月16日(判例タイムズ1533号22頁)
(1)刑事事件の被疑者として逮捕、勾留され、起訴されたが、無罪判決を受けたXが、逮捕、勾留及び起訴が違法であると主張して国家賠償を求める訴訟において、被疑者として取り調べを受けた際の状況を録画した記録媒体について、民事訴訟法220条3号後段の法律文書(「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成された」文書)として開示を求めた。
(2)上記の事情のもとでは、同文書は民事訴訟法220条3号の「法律関係文書」に該当する。刑訴法47条の「訴訟に関する書類」に該当として開示を拒否することは違法である。




