民事訴訟

Q 昭和58年度の旧司法試験の第2問の解答を教えて下さい。

2026/09/06 更新

第1 訴訟物
 問題
(1)甲は乙に対し消費貸借契約に基づく貸金返還請求訴訟を提起した。・・・①
(2)裁判所は宝石の売買代金の支払い義務を原因とする準消費貸借に基づく貸金返還請求・・・②が存在したと認定できるか。
(3)原告の申立てを超えた判決となって、民事訴訟法246条に反しないか。
2 民事訴訟法246条
(1)裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない(民事訴訟法246条)。
(2)民事訴訟で審理の対象となる実体法上の権利は、もともと当事者は自由に処分する権限がある。したがって、民事訴訟においては、当事者は、訴えを提起するかどうか、審判対象をどうするか、訴訟でいくら請求するか、訴訟を終わらせるかどうかの決定権を有している(処分権主義)。民事訴訟法246条の根拠は処分主義である。
(3)また、民事訴訟法246条は、原告の請求を超えた判決は出されないという形で、判決による不利益を被告に対し予告する機能も持っている。
(4)民事訴訟法246条違反にあたるかは、ある判決が請求の一部認容判決として認められるかどうかは、訴訟物の範囲、原告の合理的意思の範囲に反しないか、被告にとって予見しない結果を招くか、から判断される。
3 あてはめ
 本件では、①と②では訴訟物が異なるために、裁判所は②の判決を下せない。

第2 訴えの変更
(1)甲は準消費貸借に基づく貸金返還請求であるとの訴えの変更が必要となる。
(2)訴えの変更をするには、「請求の基礎に変更がないこと」、「著しく訴訟手続を遅延させないこと」が必要である(民事訴訟法143条)。
(3)①と②の訴えは同日の契約についての請求できるから請求の基礎に変更はないし、著しく訴訟手続を遅延させない。

第3 弁論主義
1 準消費貸借に基づく貸金返還請求の要件事実
(1)準消費貸借に基づく貸金返還請求の要件事実については、(ア)準消費貸借契約の合意、弁済期の合意、弁済期の到来である。(イ)原因債権の不存在は、被告が主張・立証すべき抗弁である。
(2)旧債務の証書を債務者に返還するの通常であるから、旧債務の不存在を債務者が立証すべきであるからである。
2 弁論主義違反
(1)判所は、当事者の主張しない事実を裁判の基礎として採用してはならない(弁論主義の第一テーゼ)。
(2)甲が(ア)準消費貸借契約の合意、弁済期の合意、弁済期の到来について主張しなければ、準消費貸借に基づく貸金返還請求を認定できません。
(3)甲は、甲乙間で、宝石の代金の支払いを原因として昭和57年4月から昭和58年11月まで毎月末日限り5万円ずつ分割して支払う合意を立証する必要がある。

第4 処分権主義
 1 問題
(1)甲が、乙に対し100万円の返金を求めているところ、裁判所は、昭和57年4月から昭和58年11月まで毎月末日限り5万円ずつ分割して支払う合意が成立していたと認定することはできるか。
(2)口頭弁論は昭和58年7月15日であるから、昭和58年8月から昭和58年11月までは期限が来ることを引き換えとする認容判決となるが、民事訴訟法246条に反しないか。
 2 原告の意向
(1)目的物の引き換えに100万円を給付を認める引換給付判決では、反対給付の経済的負担を原告に課すことになり、原告の合意理的な意思を慎重に考える必要がある。
 これに対して、一括の支払いが、分割になるのであれば期限を待つだけであるから、原告に経済的な負担を強いるものではない。
(2)また、昭和58年8月から昭和58年11月までの期間待つこと、その部分の棄却判決を比べれば、原告は前者を選択すると思われる。
2 被告の予見
(1)当初の原告の請求に条件が付くものであって、被告にとって有利であるから、被告にとって不測の負担を強いるものでもない。
(2)よって、同判決は、民事訴訟表246条に反しない。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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