民事訴訟

Q 昭和61年度の旧司法試験の第1問の解答を教えて下さい。

2026/08/25 更新

第1 
 1 問題
(1)甲は、乙に対し、130万円を超えて債務は存在しないことの確認の訴えを提起した。
(2)裁判所が、債務の残額が200万円であると認め、「原告の請求を棄却する。」との判決をすることは民事訴訟法246条に反するか。
2 申立事項
(1)裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない(民事訴訟法246条)。
(2)民事訴訟で審理の対象となる実体法上の権利は、もともと当事者は自由に処分する権限がある。したがって、民事訴訟においては、当事者は、訴えを提起するかどうか、審判対象をどうするか、訴訟でいくら請求するか、訴訟を終わらせるかどうかの決定権を有している(処分権主義)。民事訴訟法246条の根拠は処分主義である。
(3)また、民事訴訟法246条は、原告の請求を超えた判決は出されないという形で、判決による不利益を被告に対し予告する機能も持っている。
(4)民事訴訟法246条違反にあたるかは、ある判決が請求の一部認容判決として認められるかどうかは、訴訟物の範囲、原告の合理的意思の範囲に反しないか、被告にとって予見しない結果を招くか、から判断される。
3 訴訟物
(1)本件の訴訟物は、130万円を超えた部分、130万円から300万円についての不存在である。
 200万円を超えて存在しないことの確認は訴訟物の範囲内である。
 100万円を超えて存在しないことの確認は訴訟物の範囲外である。
4 原告の意思
(1)130万円を限度する債務を自認する、不存在の確認請求に対して、 200万円という、原告の経済的な負担を明確にすることもあって、原告の意思に反するか問題となる。
(2)原告の意思を確認して、原告が債務があるのであれば、その債務の額の確定を望むのであれば、その額が確定することが当事者の紛争を解決するのに役立ち、請求棄却判決によりも、原告の意思に合致する。
(3)本件では、130万円を自認し、原告は債務の負担を許容しており、200万円の負担も許容範囲である。
5 被告の予測
(1)被告にとっても、上記の結論は当初の原告の申立てよりも有利であるから、民事訴訟法246条に反しない。
6 結論
(1)裁判所は、債務の残額が200万円を超えて存在しないことを確認する一部認容判決をすべきである。
(2)これに対して、「原告の請求を棄却する。」との判決をすることは、紛争解決を望む原告の意思に反し、民事訴訟法246条に反する。

第2 問題
1 問題
(1)甲は、乙に対し、130万円を超えて債務は存在しないことの確認の訴えを提起した。
(2)裁判所が、債務の残額が100万円であると認め、「借受金債務は100万円を超えては存在しない。」との判決をすることは民事訴訟法246条に反するか。
2 訴訟物
(1)本件の訴訟物は、130万円を超えた部分、130万円から300万円についての不存在である。
(2)200万円を超えて存在しないことの確認は訴訟物の範囲内である。
  100万円を超えて存在しないことの確認は訴訟物の範囲外である。
3 被告の意思
 原告が130万円を自認しているのに、100万円しか債務しか存在しないと認定することは被告にとって予見しない結果である。
4 結論
(1)したがって、裁判所は、債務の残額が130万円を超えて債務は存在しないことを認め、原告の請求の認容判決をすべきである。
(2)これに対して、「借受金債務は100万円を超えては存在しない。」との判決をすることは民事訴訟法246条に反する。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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