Q 昭和61年度の旧司法試験の第2問の解答を教えて下さい。
2026/09/06 更新
第1
1 問題
(1)甲の乙に対する土地所有権に基づく明け渡し訴訟で、乙は「A甲間の売買の事実」を認め、甲の所有権を認めた。
(2)この自白に裁判上の自白が成立するか。
2 裁判上の自白
(1)裁判上の自白の成立要件は、相手方の主張と一致すること、口頭弁論または弁論準備手続における主張であること、事実の主張であること、自己に不利益な主張であることである。
(2)土地所有権に基づく明け渡し請求の請求原因は、甲の所有権と、乙の占有である。しかし、甲の所有権を認めた。これは権利自白ではないか。
3 権利自白
(1)権利自白は、事実ではなく、法律効果に関する自白である。
例えば、法定利率が間違っている場合には、裁判所は、法律を正しく適用する義務があるので、当事者の主張が間違っていてもこれに拘束されるべきではない。
(2)しかし、所有権については日常会話でも使われ、一般人も、その人が所有するという言葉の意味を理解している。
(3)A甲間の売買の事実、そして、甲の所有権についての自白は、裁判上の自白として認めてよい。
第2
1 問題
(1)乙に裁判上の自白が成立するとしても、甲が賃料相当損害金を請求する訴えの変更をしてきた。
(2)訴えの変更により、原告の請求が異なった場合に、被告は自白の主張を撤回できないか。
2 裁判上の自白の撤回の不可撤回効
(1)裁判上の自白が成立すると、当事者は、以下の場合を除いてこれを撤回できない。
①相手方の同意がある場合
②刑事罰上罰すべき他人の行為により自白した場合
③自白が真実に反し、真実について錯誤があった場合
3 弁論主義の趣旨
(1)弁論主義の根拠は、民事訴訟で審理の対象となる紛争については、もともと当事者が自由に話し合って解決することができるものであることから、どのような事実の有無が争点となるか、争点の設定という訴訟進行について当事者の意思を反映させるものである(私的自治)。
(2)争いのある事実とそうでない事実を分けて、争点の絞り込みを行う。しかし、裁判上の自白の撤回が許されればいつまでも、争点が明確にならない。
(3)争点が増えれば訴訟は遅延する。このため、自白することの不利益の程度とこれを争うことで訴訟が遅延のコスト等を考慮して決めることになる。
4 撤回の要件
したがって、訴えの変更によって、原告の請求原因が異なったり、原告の請求額が異なった場合には、被告が理解していた不利益の程度が異なるわけであるから、この場合にも自白の撤回を認めるべきである。
5 あてはめ
(1)当初、乙は建物を明け渡すリスクしなかった。したがって、甲の土地所有権を争わなかった。しかし、賃料を請求されるのであれば、被告が理解していた不利益の程度がある変わることになる。
(2)よって、乙は自白を撤回して、A甲間の売買の事実を争うことができる。
以上




