民事訴訟

Q 昭和62年度の旧司法試験の第2問の解答を教えてく下さい。

2026/09/05 更新

第1 
 1 問題
(1)被告が弁済の抗弁と相殺の抗弁の双方を主張しているときの審理及び判断の順序はどうなるのか。
 2 訴訟上の相殺
(1)訴訟上の相殺の抗弁は、当事者が口頭弁論または弁論準備手続においてする、自働債権と訴訟物となる請求権を相殺する旨の陳述をいう。
(2)訴訟上の相殺は、実体法上の相殺の意思表示であるとともに、抗弁の提出である。
 3 訴状上の相殺の審理の順番
(1)相殺が認められると、被告は自働債権を喪失し、実質敗訴する。したがって、他の抗弁が認められない場合に、訴訟上の相殺は審理される。
(2)被告が弁済の抗弁と相殺の抗弁の双方を主張しているときには、弁済の抗弁を先に審理し、これが認められない場合に相殺の抗弁を審理する。

第2 
 1 問題
  相殺の抗弁により請求棄却判決を得た被告が控訴をすることができるか。
 2 上訴の利益
(1)上訴の利益は、不服の申立てと原判決を比べて原判決が申立てを下回っているかで判断する(形式的不服説)。したがって、予備的な相殺の抗弁の主張で、請求棄却となった場合に、一審原告に上訴の利益を認めることができない。
(2)しかし、相殺の抗弁が認められた場合には、、裁判所が相殺によって自働債権が消滅したとする理由中の判断について既判力が生じ(民事訴訟法114条2項)不利益が発生する。したがって、相殺の成否が判断されたときには、例外的にその点にも上訴の利益が認められる。
 3 あてはめ
 訴訟上の相殺の抗弁により請求棄却判決を得た被告が控訴をすることができる。

第3
 1 問題
 請求認容判決が確定後に、相殺権を主張して履行を拒絶することは遮断効に反しないか。
 2 遮断効の趣旨
(1)請求を認容した確定判決によって既判力が生じる。既判力は、訴訟物となった請求権が存在することに及ぶ。(2)実体法上は、訴訟の結果によって、取消権や解除権の行使を制限する理由はない。
 既判力の基準時は、当該確定判決に係る訴訟の口頭弁論終結時である 。これらを行使したのは基準日後であるから、これらの行使は既判力では遮断されなくてもよいはずである。
 3 遮断効の肯定説
(1)これらの行使を自由に認めては、紛争が蒸し返される結果、原告にとって大きな負担となります(法的安定性)。
(2)被告はこれらを行使できたのにしなかったのであるから、これらの権利行使を認める必要はありません(提出責任)
 3 遮断効の要件 
(1)前訴訟の口頭弁論終結前に発生した事情に基づく取消権の行使は、既判力によって遮断され、後訴で取消しの主張をすることはできない。
(2)もっとも、相殺については、基準日後でも行使できる。相殺は自働債権が消滅する。前訴訟で確定した訴訟の結果によって被告が不利益を受ける結果は変わらないからである。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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