Q 過失相殺を認定するには、当事者の主張が必要となるか。当事者の主張がない場合に、裁判所は過失相殺について釈明義務を負うのか。
2026/08/23 更新
過失相殺
(1)民法722条の過失相殺の「過失」は法的評価である。これを基礎づける具体的事実が主要事実である。
(2)過失相殺を基礎づける事実の主張がないのに、裁判所は過失相殺を認めることは弁論主義違反である、という考え方がある。
(3)最判昭和43年12月24日(民集22巻13号3454頁)は、債務不履行に基づく損害賠償請求権の過失相殺(民法418条)について、裁判所が過失相殺を認めるには当事者が具体的事実を主張することが必要であると明示している(民事訴訟法判例百選(第6版)243頁)。
実務での運用
1 過失を基礎づける事実の主張が必要とする説
過失相殺を基礎づける事実の主張がないのに、裁判所は過失相殺を認めることは弁論主義違反である。
2 実務的な問題
(1)例えば、交通事故と後遺症との論理的な因果関係が不明な場合には、慰謝料等の認定よって裁量的な調整を図り妥当な結論を出す工夫がされている。
(2)過失相殺についても、損害の調整的な要素があり、当事者の具体的な事実の主張がなくても過失相殺をみとめてよいのではないか、という考え方も有力です(藤田広美「解析 民事訴訟 第2版」409)。
(3)当事者が主張していないということを理由として、裁判所が後者が真実であると考えても、この事実を認定できなくなるのは妥当でない、という考え方が根底にあります。
3 裁判所の釈明
(1)しかし、当事者の主張がなく、過失相殺が認められれば、当事者にとって不意打ちとなる(当該事実について争う機会を失わせることになる)。
(2)よって、当事者の主張がない場合に、裁判所は過失相殺について釈明義務を負う。




