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労使紛争

Q 住宅手当(生活関連手当)は廃止すべきか。

2025/10/19 更新

住宅手当

(1)住宅手当とは、従業員が支払っている家賃や住宅ローンなどの住宅費用を補助することを目的に、従業員の給料と合わせて支給される手当のことです。

(2)住宅手当は生活関連手当の一つです。

生活関連手当
 生活関連手当は、従業員の生活を保障することを目的とする手当です。
 家族手当、住宅手当(単身赴任手当)、地域手当などがあります。

能力給への変更と、住宅手当の廃止

(1)能力給とは、従業員の能力、経験、スキル等を中心に給与を決める考え方です。

(2)終始雇用を前提とする仕組みで、社員はいろいろな職種を経験して、キャリアを形成する仕組みを前提としていました。その社員の待遇・評価は、今の職種での成果とは無関係でした。

(3)専門職化によって、一つの能力を継続的に伸ばす必要があり、今の職種での成果を給与に反映させる必要性が出てきました。

(4)中途採用を活性化させるためにも、中途採用の社員と、既存社員を公平に査定するためには、今の職種での成果を給与に反映させる必要性が出てきました。

(5)上記の流れで、生活関連手当を廃止の方向する流れがあります。

住宅手当と同一労働同一賃金

ハマキョウレックス事件最判平成30年6月1日) 判例タイムズ1453号59頁

(1)住宅手当について正社員に支給されるが、パート・有期労働者に対し支給しないことが不合理な待遇差にあたるか問題になりました。
(2)(無期契約労働者である)正社員は、全国規模の異動の可能性がありますが、有期契約労働者にはそのような可能性はありません。(無期契約労働者である)正社員については住宅に要する費用が多額になる可能性があるから、このための対価として、(無期契約労働者である)正社員だけに住宅手当を支給することは不合理ではない。

(3)正社員については全国規模の転勤の可能性があることから、正社員にだけ住宅手当を支給することが正当化されました。

日本郵便事件(最判令和2年10月15日)判例タイムズ1483号55頁

(1)扶養手当の趣旨は、継続的な勤務が見込まれる社員に対し、生活を保障することで継続的な雇用を確保することにある。
(2)したがって、有期契約労働者であっても、契約の更新を繰り返して相当に継続的な勤務が見込まれる場合には、扶養手当を一切与えないことは、不合理である。

住宅手当の廃止と、同一労働同一賃金

山口地判令和5年5月24日

(1)(正社員に支給されていた)住宅手当を廃止し、非正規社員等も対象とする、賃貸住宅の家賃を補助の手当を支給する制度に変更した。

(2)正規、非正規の格差是正を目的とする、賃金減少を伴う就業規則の変更を有効と判断した。

社宅制度と間接差別

東京地判令和 6年5月13日 労判1314号5頁

(1)制度上は、「Aした人にBを支給する。」という公平な定めであったとしても、そのAを満たす人が男性だけに偏る場合には、実質、男性にとって有利で、女性にとって不利益な間接差別となることがあります。

(2)総合職にのみ社宅制度が認められていることについて、総合職がほとんど男性であったともあって、違法な間接差別であると判断されました。

(1)制度設計面において、正社員にだけ転勤があるなど、住宅手当を正当化する根拠がある場合には、正社員だけに住宅手当が存在しても違法ではありません。
(2)しかし、運用面において、正社員がほとんど転勤しない場合には運用面の問題があることになります。
(3)運用面のフォローを考えると、現在有効でも、今後違法になる可能性もあるということです。
(4)全体的な流れからしても、住宅手当は廃止しているのが、無難でしょう。

参考

ビジネスガイド2025年11月号68頁以下

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