民事訴訟

Q 令和4年度の予備試験の解答を教えて下さい。

2026/09/23 更新

第1 
1 問題
(1)Xは権利能力なき社団である。Xが権利能力なき社団として原告として訴訟提起できるか。
(2)Xに当事者能力があるか。
(3)Xに当事者能力があるとして、代表者AはXの代表として訴訟提起できるか。
2 権利能力なき社団の定義と要件
(1)Xに当事者能力があるか。
(2)民事訴訟法29条の「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」の要件を満たす限りにおいて、当事者能力を認める。
(3)法人でない社団は、民法の権利能力なき社団と同じ概念である。権利能力なき社団は、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものをいう。
3 権利能力なき社団のあてはめ
(1)Xには、運営の規約が存在し、規約では多数決で意思決定するとされ、構成員が30名いて、20年以上活動しており、不動産、動産、預金を有し、重要な財産の処分には、構成員の3分の2以上の賛成が必要である等の団体としての主要な点が確定している。
(2)Xには代表者の定めがあり、現在の代表者Aである。
(3)よって、Xは、民事訴訟法29条の「法人でない社団」にあたる。
4 代表者の定め
(1)Aは、Xの代表者である。
(2)Aには、どのような代表権が必要なのか。
(3)Xは、民事訴訟法29条の「代表者」「の定めがあるもの」にあたるか。
5 代表者としての授権
(1)権利能力なき社団の権利義務は構成員に総有的に帰属する。代表者が訴訟担当となる場合には、他人である構成員の権利義務について争うことになる。
(2)代表者が、訴訟担当となる場合には、訴訟の対象となる目的物を処分するのに必要とされる総会の議決等の手続による授権が必要となる。敗訴すれば、同処分を失うことになるからである。
6 代表者としての授権と、あてはめ
(1)Xの規約では、不動産の処分であるから、3分の2の多数の同意が必要である。
(2)甲土地の確認について敗訴すれば甲土地所有権を失うので、不動産の処分であるから、3分の2の多数の同意が必要である。
(3)よって、Xが他の構成員の3分の2の同意を得れれば、代表者Aは代表としてXとして訴訟提起できる。

第2
1 概要
(1)Xの構成員全員計30名が原告もしくは被告となって訴訟提起できるか。
(2)権利能力社団の財産は構成員に総有的に帰属するので、構成員全員が原告もしくは被告となって訴訟提起することが考えられる。
2 問題
(1)構成員全員が総有物の権利行使をする訴訟であるから、固有必要的共同訴訟となる(民事訴訟法40条)。
(2)固有必要的共同訴訟は、全員を原告としなければ、当事者適格が認めらない訴訟である。
(3)この場合には、反対者を被告とすれば当事者適格を満たすのではないか。
3 固有必要的共同訴訟において、提訴しない当事者がいる場合
(1)固有必要的共同訴訟であっても、提訴を拒む構成員について、その者を被告として構成員全員を訴訟当事者にすれば、全員が訴訟に参加することになるので、当事者適格を欠くことはことはない。
(2)よって、提訴することに賛成の構成員全員が原告となり、逆に、反対の構成員全員を被告にするのであれば、構成員全員が原告となって、代表者Aは代表としてXとして訴訟提起できる。

設問2
第3
1 概要
(1)XはYに対し土地所有権(総有権)の確認の訴えを提起した。・・・①
(2)YはXに対し土地所有権に基づく明け渡し請求をすることを考えている。・・・②
(3)Yは、①の訴訟を提起中に、②の訴訟をすることは二重起訴にあたらないか。
2 二重起訴
(1)①と②の訴訟では、①の訴訟物はXの所有権(総有権)、②の訴訟物は、Y所有権に基づく妨害排除請求権であるから、訴訟物は一致しない。
(2)しかし、一物一権主義により同じ不動産について、Xの所有権(総有)とY所有権は矛盾する。矛盾する訴訟の提起は、二重起訴で禁止される。
(3)よって、Yは、①の訴訟を提起中に、②の訴訟をすることは許されない。


第3
1 概要
(1)XはYに対し土地所有権(総有権)の確認の訴えを提起した。・・・①
(2)YはXに対し土地所有権に基づく明け渡し請求をすることを考えている。・・・②
(3)Yは、①の訴訟で、Xの請求を棄却する判決が確定した後に、②の訴訟して、①の訴訟の既判力が②の訴訟に及ぼすことを検討している。
2 既判力
(1)既判力は、主文に包括するものに限り生じる(114条1項)。
(2)既判力は、当該確定判決に係る訴訟物たる権利又は法律関係の存否について及ぶ。
3 あてはめ
(1)①の訴訟で、Xの請求を棄却する判決が確定した場合に、Xに土地所有権(総有権)が存在しないことが確定する。
(2)これに対して、②の訴訟物は、Yに土地所有権があることを前提とする所有権に基づく土地明渡し請求できるから、一物一権主義によっても矛盾しない。
(3)よって、Yは、①の訴訟で、Xの請求を棄却する判決が確定しても、②の訴訟して、①の訴訟の既判力が②の訴訟に及ぶとは主張できない。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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