民事訴訟

Q 令和5年度の司法試験の解答を教えて下さい。

2026/10/18 更新

設問1
第1 
 1 問題
(1)Yが無断でXのパソコンを閲覧して、そのメールを証拠提出した。
(2)このメールは違法収集証拠にあたるので、証拠能力が否定されないか。
 2 違法収集証拠の趣旨と要件
(1)民事訴訟法では、違法に収集した証拠の証拠能力を否定する規定はない。しかし、当事者には誠実な訴訟活動が求められ(訴訟における信義則・民事訴訟法2条)、違法に収集された証拠は証拠能力が否定される。
(2)よって、①証拠の重要性と、②違法の程度を考慮して判断する。
 3 違法収集証拠の要件とあてはめ
(1)①本件動産の売買は口頭でやりとりされているから、売買契約の存在を示す本件メールは唯一の証拠である。
(2)②Xは、必要なメールを取得したのではなく、関係な第三者の情報が入った大量の個メールを取得しており、Xのプライバーを大きく侵害する。
 もっとも、メールにはいろいろなプライバシー情報が含まれるものの、室内での様子を秘密録音したものや秘密録画したものと比べれば、文書での情報量だけであるからプライバシー侵害の程度は低い。
 よって、本件メールには証拠能力が認められる。

設問2
第2 
 1 概要
(1)原判決は、主文としては、「甲債権は存在する。」と判断する。
(2)加えて、原判決は、「乙債権と甲債権は存在したが、丙債権と乙債権は相殺により消滅する。」「乙債権を自働債権とする相殺の主張は認められない。甲債権は存在する。」という判断をしている。
 2 既判力と上訴の利益
(1)判決の理由だけの不服を理由とする上訴の利益は認められない。
(2)しかし、相殺については、その成否が裁判所に判断された場合、裁判所が自働債権を不存在としたその理由中の判断について既判力が生じる(民事訴訟法114条2項)から、相殺の判断についての理由中の判断には、上訴の利益が認められる。
 3 原告の不服申し立ての範囲
(1)原判決は、主文としては、「甲債権は存在する。」と判断する。
(2)加えて、原判決は、「乙債権と甲債権は存在したが、丙債権と乙債権は相殺により消滅する。」「乙債権を自働債権とする相殺の主張は認められない。甲債権は存在する。」という判断をしている。
(3)原判決は、相殺の成立という法的評価を除くと、「甲債権は存在する(一審原告有利)」「乙債権は存在する(一審原告不利)」「丙債権は成立する(一審原告有利)」という判断をしている。
(2)したがって、一審原告であるXの不服申し立ての範囲は、「乙債権は存在する(一審原告不利)」に限られる。
 4 不利益変更禁止の趣旨と定義
(1)控訴審は、控訴人の不服申立ての範囲でのみ、第一審を取消し変更できる(民事訴訟法304条) 。
(2)控訴審の審判対象も当事者が決めることができる(処分権主義)。不利益変更禁止の原則の根拠は、処分権主義である。
(3)不利益変更禁止は、相手方の控訴または附帯控訴がない限り、自己の不服申し立ての範囲を超えて自己に不利益に第一審判決を変更されないことである。
 5 問題
 控訴審の裁判所が以下の判断をしたときに、不利益変更紳士の原則との関係でどのような判決ができるか。
(ア)甲債権は弁済により消滅した(甲債権は存在しない)、という判断をした場合
(イ)丙債権は存在しないという判断をした場合
(ウ)乙債権は存在しないという判断をした場合
 6 (ア)甲債権は弁済により消滅した(甲債権は存在しない)、という判断をした場合
(1)控訴審の裁判所は、「甲債権は存在しない。」という判断をした。
(2)しかし、一審原告であるXの不服申し立ての範囲は、「乙債権は存在する(一審原告不利)」に限られる。また、これは、「甲債権は存在する(一審原告有利)」という、一審原告にとって不利益に判断するもので許されない。
(3)控訴審は、原審判断を維持しなければならないので控訴を棄却しなければならない(民事訴訟法302条)
 5 (イ)丙債権は存在しないという判断をした場合
(1)控訴審の裁判所は、「丙債権は存在しない。」という判断をした。
(2)しかし、一審原告であるXの不服申し立ての範囲は、「乙債権は存在する(一審原告不利)」に限られる。また、しかし、これは、「丙債権は成立する(一審原告有利)」という、一審原告にとって不利益に判断するもので許されない。
(3)控訴審は、原審判断を維持しなければならないので控訴を棄却しなければならない(民事訴訟法302条)
 6 (ウ)乙債権は存在しないという判断をした場合
(1)控訴審の裁判所は、「乙債権は存在しない。」という判断をした。
(2)一審原告であるXの不服申し立ての範囲は、「乙債権は存在する(一審原告不利)」に限られる。この点について、「乙債権は存在する。」という、一審原告にとって利益に変更するものである。
(3)この場合に、また、「丙債権は存在した。」という判断から「丙債権については判断しない。」ことになるが、これは一審原告にとって、一審から求めていた判断であるから、一審原告にとって不利益になるものではない。
(4)控訴審は、原審を取り消し(民事訴訟法305条)、「甲債権は存在する。乙債権については存在しない。丙債権については判断しない。」という判断を出せる状態ではあるので、自判しなければならない(民事訴訟法307条但書)。

設問3の課題1
第3
1 問題
(1)XはYに対し、甲債権の支払いを請求し、X敗訴の判決が確定した。・・・①
(2)Z[は甲債権の保証人であり、上記裁判についてY側に補助参加したが、①の訴訟はYの敗訴となった。
(3)XがZに対し、保証債務の履行請求訴訟をした。・・・②
(4)①の訴訟は、②の訴訟にどのような拘束力を持つか。
2 既判力
(1)訴訟の既判力は当事者間で及ぶのが原則である(民事訴訟法115条1項)。
(2)①の訴訟の既判力は、Zに及ばない。
3 問題
(1)Zは①の訴訟にY側に補助参加したが、①の訴訟はYの敗訴となった。
(2)②の訴訟にて、Xは、Yの敗訴(主債務が存在する。)点について、争えないと主張できるか。
4 補助参加の参加的効力の趣旨・定義
(1)補助参加には参加的効力が認められる(民事訴訟法46条1項)。参加的効力の本質は敗訴責任の分配である。
(2)したがって、補助参加の効力が生じるには、補助参加人が訴訟行為をしたこと、もしくは、補助参加人の側で協力して訴訟をすべき事情があるが、訴訟活動をしなかったことが必要であり、補助参加が訴訟活動をできない事情がある場合には、参加的効力が及ばない。
5 補助参加の参加的効力のあてはめ
(1)Zとしては、Yの主債務である甲債権を免れるために必要な訴訟活動をしようとしたが、Yとしては自己の訴訟戦術のために、Zの免責の主張を認めず、Zの尋問請求を却下している。
(3)したがって、Zとしては、、Yの主債務である甲債権を免れるため十分な訴訟活動をできないなかったといえる。したがって、参加的効力は生じない。

設問3の課題2
第4
1 概要
(1)XはYに対し、甲債権の支払いを請求し、X敗訴の判決が確定した。・・・①
(2)Zは①の訴訟にY側に補助参加したが、①の訴訟はYの敗訴となった。
(3)Zは保証債務を履行した。その後、ZはYに対し、求償権の履行請求訴訟をした。・・・③
2 問題
(1)③の訴訟にて、Zは、補助参加の参加効として、Yの敗訴(主債務が存在する。)点について、争えないと主張で2るか。
(5)通常、補助参加については、被参加者が参加人に効力が及ぼすものであり、逆に、参加人が主張することが許されるか。
3 補助参加の参加的効力の本質
(1)補助参加には参加的効力が認められる(民事訴訟法46条1項)。参加的効力の本質は敗訴責任の分配である。
(2)したがって、同じく敗訴した参加人Zが参加手効力を主張することが許される。
4 補助参加の参加的効力のあてはめ
(1)補助参加の参加手効力は、争点について積極的に訴訟活動をした結果としての敗訴責任を負担すべきであるからである。Yは争点について積極的に訴訟活動をしたといえるか。
(2)Yとして、主債務を免れるために必要な訴訟活動をしている。また、Yとしては自己の訴訟戦術のために、Zの免責の主張を認めず、Zの尋問請求を却下している。
(3)Yとしては、主債務の存否について積極的な訴訟活動を行い、かつ、Zの免責の主張を認めなかったことについてYは責任を負うべきである。
 ZとYの訴訟においてに、補助参加の参加効として、Yは、Yの敗訴(主債務が存在する。)点について争えない。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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