民事訴訟

Q 令和8年度の司法試験の解答を教えて下さい。

2026/10/17 更新

設問1の課題1
第1 
 1 概要
(1)Xは、Y1とY2を共同被告として通常共同訴訟を提起した。
(2)XはY1に対し請負代金請求をし、Y2には保障請求をそており、「権利・義務が共通している場合や、同一の事実・法律上の原因に基づいている」おり、通常共同訴訟となる(民事訴訟法38条)。
 2 通常共同訴訟
(1) 通常共同訴訟は、個別の事件について一定の関連性があるため (民事訴訟法38条)、1つの手続に併合されているに過ぎない。
(2)証拠共通の原則を除いて、共同訴訟人の1人の訴訟行為は、他の共同訴訟人に影響を与えない(民事訴訟法39条)(共同訴訟人独立の原則)。
 3 共同訴訟人の訴訟行為
(1)Xは請負代金の支払い請求をしている。したがって、請負契約の成立、仕事の完成、引き渡しは、請求原因である(民法633条)。
(2)Y1は、請負契約の成立や仕事の完成を認めており自白である。・・・(ア)
(3)Y1は、契約不適合責任を主張して相殺を主張している。請求原因と両立して、その効果を妨げるので、これは抗弁である。・・・(イ)
(4)いずれの行為も、共同訴訟人の一人がした訴訟行為は、他の共同訴訟人に影響を与えない(民事訴訟法39条)。Y1の行為はY2にも効力は及ばない。
 4 問題
(1)主張共通を認める考え方(主張共通の肯定説)があります。主張共通の定義と、同定義にあてはめた場合に(ア)(イ)はどうなるか。
(2)主張共通の肯定説の根拠は何か。
(3)主張共通の肯定説の問題点は何か。(共同訴訟人独立の原則を前提とした)否定説の根拠は何か。
 5 解答
(1)主張共通を認める考え方(主張共通の肯定説)は、共同訴訟人の一人のした主張は、他の共同訴訟人がこれと抵触する主張をせず、かつ、他の共同訴訟人にとって利益である場合に限り、その者にも効力を生じる、とする見解である。
 この見解によっても、(ア)の主張は自白であって、他の共同訴訟にとって不利益であるから主張共通の原則によっても効果が帰属することはない。
 これに対して、この見解によれば、(イ)の主張は抗弁の主張であって、他の共同訴訟Y2にとっては相殺が認められて主債務が減額されれば保証債務がその分減額されることになるから有利な事実であり、主張共通の原則によっても効果が帰属する。
(2)主張共通の肯定説の根拠は、実体上の統一的な解決である。
 例えば、主債務者Y1と保証人Y2を共同被告人とする通常共同訴訟である本件について、主債務者Y1が勝訴しても、保証人Y2は欠席したために敗訴したとする。保証人Y2が敗訴して履行した後に、主債務者Y1に対し求償請求をすることは考えられ、「主債務者Y1は勝訴した意味がなくなる。」という結果も生じ得る。
(3)否定説の根拠は、通常共同訴訟の本質にある。通常共同訴訟では、個別の事件が一定の関連性があるため (民事訴訟法38条)、 1つの手続に併合されているに過ぎない。したがって、 証拠共通の原則を除いて、共同訴訟人の1人の訴訟行為は、他の共同訴訟人に影響を与えない(民事訴訟法39条)ことが原則である(共同訴訟人独立の原則)。
 肯定説を前提にすると、例えば、他の共同訴訟人の主張が全てで出そろうまで、判決を下せなくなる。例えば、本件では、Y1の訴訟の結果がでなければ、欠席したY2への判決を下すことができなくなる。例えば、Y1の訴訟活動によってY2の判決が変更される余地があるのか、等訴訟手続きが不明瞭にかつ、複雑化するというデメリットがある。
 したがって、否定説の方が個別訴訟は個人間で処理される。その代わりに、個別訴訟の結果は第三者に及ばないという否定説のメリットも大っきい。

設問2の課題1
第2 課題1
 1 事実
(1)Xは、Zに対し本件図面について文書開示命令の申立てをした。
(2)これに対してZは、職業の秘密に該当すると主張している。
 2 4号文書と「職業の秘密」
(1)4号文書は、民事訴訟法220条4号が定める除外事由がない限り、文書の提出義務を負うという一般的な提出義務が認められていることを定めている。
(2)しかし、「職業の秘密」(民事訴訟法220条4号ハ、民事訴訟法197条1項3号)にあれば、文書提出命令は認められない。
 3 「職業の秘密」
(3)最判18年判例と最判20年判例は、以下のことを明確にした判例である。
(4)民事訴訟法220条4号ハ、民事訴訟法197条1項3号の「職業の秘密」とは、その事項が公表されると、当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいう。
 そして、「職業の秘密」にあたるかは、当該の情報の内容、開示することによる開示者の不利益、民事裁判の内容、民事裁判の証拠として当該文書を必要とする程度等を考慮して判断されること、を明確にしました。
4 あてはめ
(1)まず、ZはXのために製品を製造しているが、本件図面には、Xの製造工程の秘密は含まれていない。
 ZはXと別々に工場を持ち、設備等を共有せず、本件図面には、部外秘とされているZの他の主力商品の製造と共通する部分が多く、その事項が公表されると、Zのノウハウが同じ製造業であるXに流出すなどの当該職業に深刻な影響を与える可能性がある。
(2)争点は、甲の商品としての初期不良の有無、製造過程の問題の有無であるから、それが、Zの製造過程なのか、Xの製造過程なのかまでは、争点となっていない。
(3)本件図面が無くても、修理業者に対し、甲の商品全体として、初期不良の有無、製造過程の問題の有無について意見を求めれば足りる可能性が高い。
 しかし、甲の欠陥の原因は、Zの製造過程なのか、Xの製造過程なのか分からず、Xの製造過程についての審理をすれば、Zの製造過程の問題を審理しなくて済む可能性がある。
(4)よって、職業の秘密に該当する。



設問2の課題2
第3 
(1)平成16年判決は、「黙秘すべきもの」として、弁護士が秘匿する主観的利益だけでなく、客観的にみて保護に値する利益をいう、とする。
(2)弁護士は、顧客やその業務のために、絶対に外にもらさないと約束することで、顧客等から本音で話をしてもらうことができる。
 これは、その情報が保護に値するかどうかとは別の問題である。
(3)なぜなら、弁護士が受け取った情報が、その顧客にとって大切ではないという理由で開示されてしまうと、顧客は安心して話をするっことができない。したがって、弁護士が職務上受け取った情報がどんなものでも開示されないという信頼は別に保護されるべきである。
(4)課題1で保護される利益(民事訴訟法197条1項3号の趣旨)は、情報を提供した人にとって、重要な情報を保護するのに対し、平成16年判決で保護される利益(民事訴訟法197条1項2号の趣旨)は、情報を受け取った者への信頼を保護することで、その者を含む制度全体を守ることにある(弁護士の守秘義務としては、その話を外部にもらさないと約束することで、顧客と本音で話すことを可能として司法制度を成り立たせる)。
 したたって、課題1で保護される利益と「黙秘すべきもの」は、平成16年度と同じ基準で判断されるべきではない。

設問3の課題1
第4
1 事実
(1)XとY2の訴訟でY2に対し、500万円の保障債務を認める判決が確定した。・・Y2の訴訟
(2)XとY1の訴訟で、裁判所は、売買代金500万円と契約不適合責任に基づく損害賠償請求の相殺を認めた。・・・Y1の訴訟
(3)Y2の訴訟について、Xは強制執行の手続きをしたが、Y2は請求異議の訴えを提起した。
(4)Y2は、「Y1の訴訟により主債務が否定される判決が確定した。主債務の不存在が確定すれば、保証債務は付従性によって消滅する。」として、Y2に対する保証債務の履行請求は認められない。」と主張することは遮断効により否定されないか。
2 遮断効の定義
(1)請求を認容した確定判決によって既判力が生じる。既判力は、訴訟物となった請求権が存在することに及ぶ。しかし、基準時は、当該確定判決に係る訴訟の口頭弁論終結時である。
(2)したがって、原告の代金支払義務を認める判決が下され、それが確定すれば、被告は口頭弁論が終結する前にすでに弁済していたことや、売買契約の無効、時効(による消滅)といった、口頭弁論終結時にすでに存在していた事実を主張することはできない。これが遮断効である。
3 遮断効の根拠
(2)遮断効の根拠は、これらの行使を自由に認めては、紛争が蒸し返される結果、原告にとって大きな負担となること(法的安定性)、被告はこれらを行使できたのにしなかったのであるから、これらの権利行使を認める必要はないこと(提出責任)にある。
3 遮断効のあてはめ
(1)「Y1の訴訟により主債務が否定される判決が確定した。主債務の不存在が確定すれば、保証債務は付従性によって消滅する。」と主張する。
(2)Y1の訴訟は、XとY1の訴訟であるが、XとY1の間ででしか効力を生じないのが原則である(民事訴訟法115条)。しかし、実体法上、Y2は保証人であるから、Y1の主債務者の地位に依存する者であるから、Y2はY1の判決を援用できる、という考え方がある。これは反射効である。
(3)一般に反射効が認められて、Y2の訴訟が確定前であれば、Y1の訴訟の結果について反射効を主張する余地がある。
 しかし、Y2の訴訟ではすでに、確定判決が出ているので、保証債務の払義務を認める判決が下され、それが確定している。例えば、保証人が、口頭弁論が終結する前にすでに弁済していたことや、保証契約の無効を主張など、口頭弁論終結時にすでに存在していた事実を主張することはできない。
 したがって、Y2が、反射効を肯定する見解をとったとしても、Y2の主張は認められない。

設問3の課題2
第5
1 事実
(1)XとY2の訴訟で敗訴した。
(2)しかし、Y1の相殺の主張は、訴訟上の相殺である。
 訴訟上の相殺は、裁判所において判断されることを停止条件として実体法上の効力が生じる。
(3)Y2は、「Y2の口頭弁論終結後に、Y1の相殺が生じて、Y2に対する保証債務が消滅した。」として、後訴訟で、Y1の相殺による主債務が消滅し、これによって保証債務は消滅したと主張できるか。
2 遮断効
(1)実体法上は、訴訟の結果によって相殺の主張の援用を制限する理由はない。
(2)既判力の基準時は、当該確定判決に係る訴訟の口頭弁論終結時である。Y1の相殺の主張の効力が生じたのは、Y1の判決確定時であるから、Y2の訴訟の口頭弁論終結後の事情である。これらの行使は既判力では遮断されなくてもよいはずである。
(3)しかし、これらの行使を自由に認めては、紛争が蒸し返される結果、原告にとって大きな負担となる(法的安定性)。
(4)よって、Y2が、同相殺の主張を行使できたのにしなかったのであるから、これらの権利行使を認められない。
3 あてはめ
(1)昭和40年判決は、判決確定後に相殺の抗弁を主張することが認められたが、同事案では、自働債権を失っており、実質の敗訴という結論は変わっていなかった。しかたって、Xの利益を考えると、本件を昭和40年判決と同じだとはいえない。
(2)しかし、Y2は保証人であって、本件機械を利用しておらず、これに欠陥があるか分からないために損害賠償を行使できるか情報がない。また、Y1はY2に任せておけといって、Y1はこれを信じた。弁論が分離され、Y2の損賠賠償請求(と相殺の抗弁)が成立するか情報が入ってこなかった。
(3)よって、Y2は、後訴訟で、Y1の相殺による主債務が消滅し、これによって保証債務は消滅したと主張できる。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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