民事訴訟

Q 昭和44年度の旧司法試験の第1問の解答を教えて下さい。

2026/09/23 更新

第1 
1 問題
(1)甲を被告として訴えを提起したが、訴えの提起前すでに甲が死亡していた場合、訴訟手続はどうなるか。
(2)まず、当事者の確定が問題となるが、訴状に記載された当事者(原告、被告)が訴訟の当事者となる(表示説)。訴訟の当事者は、訴状に記載された者なのか、それとも、その相続人なのか、問題となる。
(3)次に、訴訟係属の時期が問題となる。訴訟係属前に当事者が死亡していれば、当事者を欠き、訴訟要件を欠くことになる。訴訟係属後に当事者が死亡していれば、当然承継の問題である。
(4)最後に、当事者を欠く場合に、訴訟をやり直す必要があるのか。
 訴訟係属前に当事者が死亡した場合には、民事訴訟法上の明文の規定はない。任意的当事者変更による救済ができないか、もしくは当事者の確定基準による救済ができないか。
(2)当事者の確定が問題となるが、訴状に記載された当事者(原告、被告)が訴訟の当事者となる(表示説)。
(3)死亡していた甲が当事者となるから、当事者を欠くことになる。
2 当事者の確定
(1)当事者の確定が問題となるが、訴状に記載された当事者(原告、被告)が訴訟の当事者となる(表示説)。
(2)訴状の記載によれば、訴状に記載された甲が当事者となる。
3 訴訟係属
(1)次に、訴訟係属の時期が問題となるが、訴訟係属の時期は訴状が被告に送達された時点である。裁判所と当事者の3者がそろって審理を始めれるのは、被告への訴訟送達時である。それ以前の被告の関与がない状態を訴訟係属とするのは被告の防御権を損なうからである。
(2)訴状の表示では被告はYである。しかし、訴状が到達したときにYが死亡しており、当事者を欠くことになる。
3 任意的当事者変更
(1)訴状記載の当事者(原告、被告)とは別の者が、裁判所で当事者として活動したが、本来の当事者が、あえてその者の訴訟手続を引き継ぐ任意的当事者変更という手続きがあある。その手続の法的性質については、どのように考えるべきか。
(2)訴えの変更(民事訴訟法143条)は当事者の変更を含まない。訴訟係属前に当事者が死亡した場合には、民事訴訟法上の明文の規定はない。
(3)訴訟手続をはじめからやり直すのが適切であるから、任意的当事者変更については、新訴の提起と旧訴の取り下げを行う複合行為である。
(4)よって、甲を被告として訴えを提起したが、訴えの提起前すでに甲が死亡していた場合、訴訟手続をやり直すことになる。

第2
1 問題
  甲を被告として訴えを提起したが、口頭弁論終結前に甲が死亡していた場合、訴訟手続はどうなるか。
2 当然承継
(1)訴訟係属後に、当事者が死亡した場合には当然承継が生じ、訴訟の当事者の相続人に変動する。
(2)訴訟代理人がいない場合には、当事者の死亡によって訴訟手続は中断する(民事訴訟法124条1項、2項)。
 当事者が訴訟の受継を申し立てる(民事訴訟法126)。もしくは裁判所が続行命令を出すことになる(民事訴訟法129条)。
(3)訴訟代理人がいる場合には、訴訟手続きは中断しない(民事訴訟法124条2項)。新当事者は受継の手続をとる必要もない。

第3
1 問題
  甲を被告として訴えを提起したが、口頭弁論終結後判決前に甲が死亡していた場合、訴訟手続はどうなるか。
2 判決
(1)口頭弁論終結後に当事者が死亡しても判決の言い渡しは可能である(民事訴訟法132条1項)。
(2)判決の送達があった2週間が過ぎれば判決は確定する(民事訴訟法285条)。
3 結論
(1)相続人が受継の手続をとらない限り、有効な判決の送達はなく、上訴期限も進行しない。
(2)判決の言渡し後に手続は中断すると解するべきである。
以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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