民事訴訟

Q 訴状送達前に、当事者(原告もしくは、被告)が死亡していた場合に、どのような対応が必要ですか。

2026/09/19 更新

死者名義訴訟

(1)訴状の到達時に、訴状に記載されていた原告または被告が死亡した場合(死者名義訴訟)、訴訟手続としてどのような問題があるでしょうか。
(2)まず、当事者の確定が問題となるが、訴状に記載された当事者(原告、被告)が訴訟の当事者となる(表示説)。訴訟の当事者は、訴状に記載された者なのか、それとも、その相続人なのか、問題となる。
(3)次に、訴訟係属の時期が問題となるが、訴訟係属の時期は訴状が被告に送達された時点である。訴訟係属前に当事者が死亡していれば、当事者を欠き、訴訟要件を欠くことになる。訴訟係属後に当事者が死亡していれば、当然承継の問題である。
(4)最後に、当事者を欠く場合に、訴訟をやり直す必要があるのか。
 訴訟係属前に当事者が死亡した場合には、民事訴訟法上の明文の規定はない。任意的当事者変更による救済ができないか、もしくは当事者の確定基準による救済ができないか。

任意的当事者変更

(1)訴状記載の当事者(原告、被告)とは別の者が、裁判所で当事者として活動したが、本来の当事者が、あえてその者の訴訟手続を引き継ぐ任意的当事者変更という手続きがあります。その手続の法的性質については、どのように考えるべきか。
(2)訴えの変更(民事訴訟法143条)は当事者の変更を含まない。訴訟係属前に当事者が死亡した場合には、民事訴訟法上の明文の規定はない。
(3)訴訟手続をはじめからやり直すのが適切であるから、任意的当事者変更については、新訴の提起と旧訴の取り下げを行う複合行為であるとされます。
(4)加えて、新訴訟について、双方、信義則上別の主張はできないとして、事実上、前の訴訟の訴訟結果の利用を求めていくことになります。

新訴の提起と旧訴の取り下げを行う複合行為であるとすると、第一審でのみしか許されないため、活用場面が乏しい、との指摘がある。
裁判所職員総合研修所「民事訴訟法講義案(三訂版)」42頁

コラム
 実務的な感覚としては、別訴訟となったとしても、前の訴訟の書面を出し直せば、前の訴訟から引き続いて審理を進めることができる。訴訟の遅延はほとんどないだろう。
 訴訟手続をはじめからやり直すのが一番手堅いとして、任意的当事者変更を「新訴の提起と旧訴の取り下げが併存する複合行為である。」と考えるのは納得である。

参考

 遠藤賢治「事例演習 民事訴訟法 第3版」27頁

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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