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労使紛争

判例 名古屋自動車学校事件(最判令和5年7月20日)(定年後の再雇用)

2026/06/16 更新

事案

(1)定年は60歳となっていた。継続雇用制度があり、65歳までは契約期間を1年間をとする有期雇用契約を締結する制度を締結していた。60歳超えで継続雇用される社員は嘱託職員と呼ばれていた。

(2)名古屋高裁は、裁判所は、嘱託職員の業務は正職員の業務の相違がないことから、嘱託職員の基本給が正職員の60%を下回る限度で、労働契約法20条にいう不合理と認められるものと判断した。

(3)会社は、上記の高裁判決を不服として、上告した。

判決

(1)正職員(正社員)の基本給は、勤続年収によって賃金が大幅にアップするものではないから、(今やっている仕事を基準に給与が決まる)職務給としての性質を有する。

(2)正職員(正社員)の給与は、役職手当も支給されることがあるが、その支給額が明確に決まっていなかったこと、正職員(正社員)の基本給には功績給も含まれているので、職務遂行能力を基準に給与額が決まる(社員の経歴を中心とする)職能給としての性質を有する。

(3)嘱託職員は役職に就くことが予定されていない。嘱託職員の基本給は正職員と異なる基準で支給されていた。嘱託職員の基本給は勤務年数に応じて増額されるものではなかった。

(4)正職員と、嘱託職員の基本給に差があるのが、基本給の性質やその目的が異なるからであるから、その性質や目的を検討した上で、無期雇用契約と有期雇用労働者の労働条件の差が不合理であるかを判断すべきである。

最判令和5年7月20日

判例タイムズ1513号80頁以下

前提知識

高齢者雇用安定法

 高年齢者雇用安定法は、会社に以下の対応を義務付けています。
(1)定年を60歳未満としてはならない。
(2)①②③のいずれかの措置をとらなければならない。
 ①65歳まで定年を延長すること
 ②定年を撤廃すること。
 ③65歳までの雇用継続制度を設けこと。

65歳までの雇用継続制度

(1)多くの企業では、65歳までの雇用継続制度が導入されています。
(2)65歳までの雇用継続は会社の義務です。しかし、会社が従業員に対し、退職後の雇用条件を具体的に提案しないまま、60歳定年を過ぎてしまった場合、自動的に従前の労働条件が引き継がれるものではありません。
(3)イメージで言えば、会社は従業員に対し、定年後の労働条件について、合理的な労働条件を提案する義務があると理解すればよいと思います。


高齢者雇用の実務

(1)高齢者は年々体力が落ちていきます。体力等を考慮して毎年の業務内容を見直す必要があります。そこで、1年更新の有期雇用契約を締結することが多いです。
(2)高齢者は若者に比べれば柔軟性に劣り、未経験の分野は苦手であるともいわれます。
そのため、再雇用後も、定年退職前と同じ業務をお願いすることが多いです。
(3)賃金については従前と同様にする場合もあります。また、定年後は、年金が支給されることもあって金額を下げることもあります。

本件の問題

 本件では、賃金を下げたために、定年退職後に有期雇用で再雇用された社員が、従前と同じ業務をしているのに、無期雇用契約と有期雇用労働者の労働条件の差が不合理であるとして、その差額相当額を損害として不法行為に基づく損害賠償請求等を求めました。

パータイム・有期雇用労働法

(1)パータイム・有期雇用労働法では、パート・有期労働者と、無期のフルタイム労働者との間に不合理な待遇差を禁止しています(同法8条、9条)。
(2)同一の業務をしているのであれば、賃金を含めたその他の労働条件が同一である必要があります(パータイム・有期雇用労働法9条)。

「同一労働同一賃金ガイドライン」のガイドライン

(1)「同一労働同一賃金ガイドライン」は、以下のように記載されています。
(2)定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者についても、短時間・有期雇用労働法の適用を受けます。
(3)有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であるとは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たり、労働条件の差を合理的だと考えるべき事情として考慮されます。

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

職能給と職務給

(1)賃金の決め方としては、社員の経歴を中心とする職能給と、今やっている仕事を中心とする職務給があります。
(2)最高裁では、職能給を職務遂行能力を基準に給与額が決める制度として表現しています。職務遂行能力をどうやって判断するかと考えれば、社員の経歴を中心に給与額を決める制度であるとも表現できます。
(3)本件は、元正社員であったが、定年後して非正規社員となった事案です。そういった意味では経歴は同じですから、年齢を考慮したうえでの能力もしくは会社での役割の違いによって、基本給の差額が正当化できるかがポイントとなります。

解説

1 定年再雇用の不合理性の判断

 (1)定年後再雇用後であるからといって、有期雇用社員と正社員の待遇差は直ちに合理的だとされるわではありません。

(2)定年後再雇用後であってもその待遇の差は、労働条件の差異や、基本給その他の手当の性質を考慮して不合理となるか判断されることになることを示した判例です。

2 交渉経緯

(1)不合理性の判断としては、労使交渉が意味を持ちます。労働組合が合意してくれたというだけでなく、労使交渉では、労働組合と交渉に応じたが、合意できなかったという結論だけでなく、経緯も考慮されます。

(2)本判決は、労使交渉の具体的な経緯も、不合理性の判断において重要な考慮要素であることを示した点で重要です。(ビジネスガイド2026年5月号17頁)

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