【固定残業代の主張】実際の残業時間との乖離
2023/08/02 更新
固定残業代の要件
固定残業が残業代の支払いとして認められるためには、①基本給と残業代の区分けが明確であること(判別要件・明確区分性)、②当該手当が残業代として支払われているとの合意(対価性)が必要です。
私見
(1)①と②について、私見ですが、(ア)手当の計算式が明確に決まっており、(イ)従業員がその手当の計算方法を知っていること(知ることができた状態にあったこと)が必要です。
(2)加えて、(ウ)当該手当が設計として、「ざっくり計算で残業代を支払ったもの」と評価されうるのか、それとも、「別の名目の手当(例えば、歩合給)を残業代の名目で支払っただけ」と評価されるのか、で判断されます。
実際の労働時間と、固定残業の金額の乖離が大きい場合
(1)実際の労働時間と、固定残業の金額の乖離が大きい場合には、固定残業代であることが否定されることになります。なぜなえら、「固定残業代部分に、基礎賃金として支払うべき給与が含まれている」と評価されるからです。
(2)実際の労働時間が20時間、固定残業代が28時間の場合について乖離は大きくない(固定残業代として有効であるとした判決があります。
(3)実際の労働時間が80時間、固定残業代が180時間の場合について乖離は大きくない(固定残業代として有効であるとした判決があります。
(2)実際の労働時間が60時間、固定残業代が40時間の場合であるが、労働者が出向中で実際の労働時間の把握が困難であったとして、固定残業代として有効であるとした判決があります。
裁判所は、乖離の有無だけではなく、時間管理が可能かという観点からも判断しています。
参考
判例タイムズ1509号47頁