ご質問・ご相談などお気軽にお問い合わせください。

TEL 06-6773-9114

FAX 06-6773-9115

受付時間 : 平日10:00 ~18:00 土日祝除く

メールでの
お問い合わせ

残業代の計算

トラック業界と、歩合給

2024/04/10 更新

トラック業界と労働時間の把握

(1)運送業の場合には、労働時間の把握が困難です。

(2)事務所で働く人の場合、他人の目もあります。さぼることは簡単ではなく、始業時刻(出社時刻ではなく)から退社時刻までの時間(拘束時間)から、休憩時間を引いた時間が労働時間と推察されます。

(3)運送業の場合には、デジタコがあります。デジタコの場合、運転時間は労働時間だと推察されます。荷積み、荷下ろし時間については、デジタコの打刻時間を労働時間と推察するのが通常です。
 停車時間のうち、「荷積み、荷下ろし時間」についても実際には、労働者の自己申告です。運転時刻についてもルートが適切なのか(寄り道していないか)については、定期的にチェックが必要です。
(4)「荷積み、荷下ろし」以外の停車時間については、手待ち時間なのか、休憩時間なのか、判断しなければなりません。
 例えば、8時に荷物を取りに行く約束をしているとすれば、車なので1時間程度は余裕をみて、現地に行く必要があるかもしれません。1時間早く着いたとして、30分程度は、時間通りに現地に行くためにはある程度早めに到着することが必要であり、現地近くで待機しなければならない必要時間であるとして労働時間(手待ち時間)と考える。しかし、それ以外の時間は、現地近くであるとはいえ、仮眠したり、ご飯を食べたり、私的に自由に使える時間であるとして休憩時間であると考えることもできます。
 つまり、現実的には、これらの判断が難しく、労働時間の把握が困難です。
(5)仮に、1分レベルで労働時間が把握可能だとしても、不当にゆっくり運転するドライバーと、テキパキ仕事をするドライバーと比べて、テキパキ仕事をするドライバー(売り上げをあげるドライバー)に給与を渡したいというのが経営者です。
(6)なお、昨今は、ドライバー不足であり、運転手を搾取する会社から従業員に逃げられます。ドライバーは別の会社に就職すればよいからです。
 したがって、運送会社(の経営者)は、残業代分を含めて給与を支払っています。しかし、法律上の要件どおりに「1分いくらという計算式で残業代を支払う」ことが難しいのが現実です。

運送業と賃金

(1)運送業の場合には、運転手は外に出て働いており、会社としては仕事をしているのか把握は困難です。

(2)しかし、運送業の場合にも、ドライバー不足のために、会社の立場は強くありません。提示する条件が悪ければ、ドライバーは他社に移ってしまいます。

 したがって、人件費率でいえば、残業代を支払ったのと同等以上の賃金を支払っている会社がほとんどです。

(3)そこで、残業代対策としてどのようなに賃金を支払うか問題となります。

令和2年3月30日判決(判例タイムズ1476号49頁)

1 賃金体系

 問題となった賃金設計は以下のとおりです。(なお、実際の事例より簡略化させています。)

支給額 =  基本給等

      +割増賃金

      +歩合給(=対象額A-割増賃金)

      なお、対象額A=売上高等の一定割合に相当する金額

     つまり、実質的な支払額は、基本給等 + 対象額Aとなる

2 解説

 本判決は、「本件賃金規則の定める上記の仕組みは,その実質において,」「元来は歩合給として支払うことが予定されている賃金(対象額A)を,その一部につき名目のみを割増金に置き換えて支払うこととするものというべきである」と評価して、残業代の支払いにあたらない、と判断しました。

運送業の新しい賃金制度

(1)上記の判例に反しない形で、賃金制度を以下のように変更する方法もあります。

(2)新しい賃金体系について、裁判所がどのように判断するかは不明です。

賃金制度

 支給額 =  売上 × 歩合率 + 残業代

残業時間

 残業代はデジタコで計算します。

 休憩時間は、従業員の自己申告に任せます。

 なお、打刻が不自然な従業員については、指導したり横乗りしたりして打刻の適正をチェックします。

歩合率

 残業時間が50時間を超えたら、歩合率を20%に。

 残業時間が60時間を超えたら、歩合率を17%に。

 と決めて、残業時間が増えることで歩合率を下げてます。

 このようにして、残業代を支払いつつ、能力に応じて賃金を支払う制度を作ります。

労働時間の管理

 従業員の健康を管理する必要があるので、総労働時間は関して、一定時間を超えれば走らせない、等の対応が必要です。

 社内において、仕事の単価を明確に決めて、これ以下の金額では受けないようにします。賃金が低い仕事を受けることは長時間労働に繋がります。

 労働時間が不規則になれば、従業員の睡眠リズムが狂う可能性があります。仕事の時間は一定の範囲に留めるような規則がある方がよいです。

「残業代の計算」トップに戻る

Contact.お問い合わせ

    ※個人情報の取り扱いについては、プライバシーポリシーをご覧ください。