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Q 対話(対立する当事者での建設的な話し合い)をするための技術を教えてく下さい。

2025/12/13 更新

対話

(1)対話は、対立する相手方との話し合いです。まさしく、示談交渉は対話です。

(2)示談交渉には、対話のテクニックが役立ちます。

(3)いきなりの解決を目指すのではなく、お互いに協力できる点を探していくのが有効です。

示談交渉のテクニック(対立点を確認し、お互いに協力できることを探す)

①対立点を確認する。

 対立点はどこか。逆に、同意できる点を確認します。

②対立点について、相手方の主張に対し反論はしない。

 どちらの見解が正しいかは議論してはいけません。仮に、「相手方の見解はおかしい」と反論しても、相手が認めるわけがありません。
 仮に、そのような言い合いになった場合には早々に、「この点はお互いに見解が違いますね。お互いに立場がありますので、この辺にしておきましょう。」という形で時間のロスをおさえます。

③反論はしない。自分の立場を説明する。

 「相手方が自分の主張は正しい、と主張してたら、反論してはなりません。
 私の立場は●●です。したがって、「▲は譲れない(対立は解消できない。)」と説明します。

④反論はしない。相手の見解・立場の根拠を聞く。

 「相手方が自分の主張は正しい、と主張してたら、反論してはなりません。
 「なぜ、お互いに見解が異なるのかを説明する。」

⑤対立したままでのお互いの不利益を確認します。

⑥対立点を解決するために、お互いにできることを探す。

参考

 ハーバードビジネスレビュー2026年1月号38頁以下

対話の実例

営業課長A(現場)

 「お疲れ様です。営業のAです。 先日提出した、営業支援システムの導入について、経理のB課長にお話をしに来ました。」

経理課長B(経理)

 「お疲れ様です。どうぞ。」

営業課長A(現場)

 「今回の稟議の最終的な査定担当は、B課長ということでよろしいでしょうか。」

 「以前はCさんが担当されていましたが。」

経理課長B(経理) 

 「はい。今期から設備投資関連は私が窓口となります。もちろん、最終的には、CFOが決裁します。」

解説 

 交渉のキーマン(誰を説得すれば決まるのか)を確認します。 

 今後の連絡ルートや決裁フローを最初に握っておくことが重要です。

営業課長A(現場)

 「単刀直入にお伺いしたいのですが、今回のシステム導入費500万円、なんとか今期の予算で認めてもらえないでしょうか。感触をお聞きしたいのです。」

経理課長B(経理) 

 「CFOからは「今期は全社的にコストカットだ。不要不急の支出は徹底的に絞れ」と言われています。」 

 「正直、今のままでは承認は「不可能」に近いですね。

解説 

 会いに来た目的(予算の承認)を端的に伝え、相手の現状のスタンス(拒絶)を確認します。

 対立点を少しずつ確認していくことになります。

営業課長A(現場) 

 「なるほど、厳しいですね。 話は変わりますが、稟議書と一緒に添付した「別紙資料(費用対効果の試算)」という書類には目を通してもらっていますか。」

経理課長B(経理) 

 「いや、稟議書の表紙の金額(500万円)だけ見て、詳細までは目を通していません。」

営業課長A(現場) 

 「分かりました。数字の根拠が詳しく書いてあるので、この後すぐにメールでPDFを再送します。」

 「簡単に内容を説明しますと、2年後には、システム更新が必要になります。その際には、他社も同様の状況になるので、今のうちにやってしまった方が、現場の売り上げがストップしたりするリスクもあります。現在、更新に踏み切った方がも安くなる、という内容になっています。」

解説

(1)交渉の前提となる「情報」が共有されているか確認します。

(2)管理部門は金額の大きさだけで「No」と言うことがよくあります。また、文書で送ることで、「見ていない。」という状況をふさいでいます。

(3)交渉では大事なやりとりは文書で行います。そうすることで、交渉担当者が代わっても話をスムーズに進めることができます。なお、最初は現場の担当者が、その後は役員が文書を見ることも想像します。

(4)逆に言えば、交渉でやりとりする書類は、その問題を知らない人が初めて呼んでも分かるように、問題の事件の最初からの出来事から簡潔に書く必要あります。

経理課長B(経理) 

 「経理部としては、今回の稟議はとおらないことが事実上、決まっています。」

営業課長A(現場)

 「Bさん、率直に言ってもらって助かります。方向性を明確にできるので、本当に助かります。」

営業課長A(現場)

 「もっとも、私も現場を代表してきているので、現場としての意見だけは聞いてください。」

 「現状ですと  〇〇があって、このように困るわけです。」

経理課長B(管理) 

 「経理としては、これ以上、支出を増やすわけにはいきません。今は我慢の時期です。現場も分かってほしいです。」

テクニック 

 ②対立点について、真正面から反論してはならない。 

 「現場の苦労も知らないで!」「管理部門は数字しか見てない!」と感情的に反論しても、相手はさらに硬化します。 「現場はこう考えている」と伝えるにとどめ、「経理の方針はおかしい」とは言わないようにします。

 どちらの見解が正しいかは議論してはいけない。仮に、「相手の見解はおかしい」と反論しても、相手が認めるわけがありません。

 「●●の問題がある。」もしくは、「こちらは、●●と考える。」と言ってはよいが、「会社の見解はおかしい。」と言ってはならない。これを言ってしまうと、相手も反論せざるをえなくなる。仮に、そのような言い合いになった場合には早々に、「この点はお互いに見解が違いますね。お互いに立場がありますので、この辺にしておきましょう。」という形で時間のロスをおさえます。

営業課長A 

 「もちろん、B課長や会社がコストを抑えたい立場は痛いほど分かります。」

 「しかし、これは「時間の問題」でもあります。 例えば、2年後には、システム更新が必要になります。そうなると、特注対応の保守費が毎月発生します。さらに、手作業による残業代の増加分を加味すると、2年には今のシステム維持費だけで年間700万円を超えますよ。 その時になって、「今年500万円で新システムを入れておけばよかった」と役員会で言われるかもしれません。」

テクニック

 ④対立したままでのお互いの不利益を確認しています。

経理課長B 

 「A課長のおっしゃる数字のリスクは分かります。 しかし、今のキャッシュフローを重視したいという会社の意向もあります。」

営業課長A 

 「もちろん、B課長や会社がコストを抑えたい立場は痛いほど分かります。」

営業課長A 

 「経理方針として、今年は投資予算を使い切った、ということなのでしょうか。それとも、2年後に1000万円の損が出る可能性があるのなら、500万円の支出があり得るのでしょうか。」

経理課長B(管理) 

 「それは、CFOが決めることなので、私が口することではありません。」

営業課長A 

 「BさんがOKやNOは言えないのは分かっています。優先順位の問題であるとして、一度現場で、費用対効果にしぼって提案資料を作らせて下さい。これをCFOに見せてもらうところまではお願いできますでしょうか。」

テクニック

④反論はしない。相手の見解・立場の根拠を聞く。

 「相手方が自分の主張は正しい、と主張してたら、反論してはなりません。

 「なぜ、お互いに見解が異なるのかを説明する。」

 なぜ、お互いの結論が違うのか、を確認するという方向で話をしていくのが有効です。 

経理部長B(管理)

 「まとめた資料を頂けるのであれば、助かります。」

解説

(1)経理部長B(管理)の立場を想像してみよう。この時点で、営業課長Aの提案を蹴ってよいのか、後日、役員会で問題となったときのリスクを考えて、役員に説明しておきたいと思っているでしょう。

(2)営業課長Aは、経理部長B(管理)の立場を尊重して話を進めています。

(3)さらに、営業課長Aは、経理部長BがCFOを説得する資料も用意すると話しています。

(4)いきなりの解決を目指すのではなく、お互いに協力できる点を探していく手法となります。

営業課長A

 「経理と、現場の見解の相違点も確認させてください。」

 「〇〇では一致し、〇〇では、立場が異なってしまう、ということでしょうか。」

経理部長B(管理)

 「そうなりますね。」

テクニック

 ①対立点を確認する。

 対立点はどこか。逆に、同意できる点を確認します。

営業課長A

 「そうすると、経営と、現場の見解の相違点も加えた提案資料等を作らせて頂きます。」

 「もし、〇円だったら可能という話があれば教えて下さい。私の方で、それが可能か、現場サイドで検討します。」

経理部長B(管理)

 「それは、私からは言えないです。」

営業課長A

 「私も、経理に協力したいです。でも、〇円という具体的な数字がないと努力もできないです。」

 「イメージだけでもほしいです。」

経理部長B(管理)

 「おっしゃることは分かります。」

営業課長A

 「肌感だけでも、口頭でよいので、教えてほしいです。」

 「Bさんの名前も出さないことは約束します。」

経理部長B(管理)

 「そこまでおっしゃるなら、考えておきます。」

営業課長A

 「本当に助かります。」

 「本当に会計の担当者がBさんでよかったです。」

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