【業場外みなし労働時間制】阪急トラブル事件(最判平成26年1月24日)判例
2024/07/17 更新
事業場外みなし労働時間制
(1)事業場外労働のみなし労働時間制は、社員が①事業場外で仕事をし、②労働時間の把握が困難である場合には、社員の過半数代表との間で合理的な労働時間を合意すれば、その時間労働したものとして残業代等を計算する制度です(労働基準38条の2の1項)。
(2)同制度が適用されるには、②労働時間の把握が困難であることが必要です。したがって、会社が、IT機器等を使って労働時間を把握可能であれば、事業場外労働のみなし労働時間制の適用はありません。
(3)仮に、事業場外労働のみなし労働時間制の適用がない場合には、実際にかかった労働時間を計算することになります。労働時間の把握が困難であれば、何らかの方法で労働時間を推認して合理的な時間を認定していくしかありません。
阪急トラブル事件(最判平成26年1月24日)
事案
(1)搭乗員は、ツアーの旅行日程に従って、ツカー顧客に対する案内や必要な手続の代行を行っていた。
(2)会社とツアー客の契約によって決まる旅行日程が決まる。添乗員(の添乗業務)の予定は、その旅行日程によって決まり、添乗員が決めることできない。
(3)会社はツアー中は、搭乗員に対し、携帯電話を所持して常時電源を入れておき、トラブルが発生したときには、会社に連絡するように指示していた。
会社の主張
会社は、「添乗業務は、事業場外のみなし制が適用される。当該業務の遂行に通常と必要とされる時間は1日11時間であり、日当1万6000円には3時間分の割増賃金が含まれている。」と主張しました。
裁判所の判断
(1)最高裁は、「労働時間を算定し難いとき」には該当しない。事業場外のみなし制が適用されない、と判断した。
(2)労働者の業務が事前に確定し、労働者の裁量が限定であったこと、業務全般について、日当を提出させて確認することが可能であることから、、「労働時間を算定し難いとき」には該当しない、と判断しました。
参考
ビジネスガイド2024年7月号82頁