【裁量労働制】専門型裁量労働制(裁量労働のみなし労働時間制)
2024/02/16 更新
専門型裁量労働制の概略
専門型裁量労働制(裁量労働のみなし労働時間制)は、一定の職種について、①社員の過半数代表との間で合理的な労働時間を合意すること、②該当労働者と裁量労働制を適用することを合意することで、その時間労働したものとして残業代等を計算する制度です(労働基準38条の3の1項)。
専門型裁量労働制の要件
(1)専門型裁量労働制を適用するには、①裁量労働の対象業務に当たること、②当該業務の遂行方法や時間配分について具体的な指示が無いこと、③社員の過半数代表との間で、合理的な労働時間について労使協定を締結すること、④該当労働者と裁量労働制を適用することを合意することが必要です(労働基準法38条の3)。
(2)加えて、⑤労使協定の有効期間を定めて、労働基準監督署に届け出ていることが必要です。
参考
佐々木宗啓ほか「類型別 労働関係訴訟の実務〔改訂版〕I 」241頁
裁量労働時間制の対象業務
専門型
専門業務型裁量労働制」は、下記の19業務に限り、事業場の過半数労働組合又は過半数代表者との労使協定を締結することにより導入することができます。 (1)新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務 (2)情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務 (3) 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務 (7)事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務) (8)建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務) (9)ゲーム用ソフトウェアの創作の業務 (10)有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務) (11)金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務 (12)学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。) (13)公認会計士の業務 (14)弁護士の業務 (15)建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務 (16)不動産鑑定士の業務 (17)弁理士の業務 (18)税理士の業務 (19)中小企業診断士の業務 |
協議事項と決定事項
専門型裁量労働を適用するために、労使協定では以下のことを合意する必要があります。
専門型裁量労働制 | 企画型裁量労働制 |
対象業務 | 対象業務 |
当該業務の遂行方法や時間配分について具体的な指示をしないこと | 対象労働者の範囲 |
みなし労働時間(合理的な労働時間) | みなし労働時間(合理的な労働時間) |
健康・福祉確保措置(・・・①) | 健康・福祉確保措置(・・・①) |
苦情処理処理措置(・・・②) | 苦情処理処理措置 |
裁量労働制の適用には本人の同意がいることと、同意をしなかった場合に不利益に取り扱わないこと 同意した場合に、同意の撤回の手続(・・・③) | 裁量労働制の適用には本人の同意がいることと、同意をしなかった場合に不利益に取り扱わないこと 同意した場合に、同意の撤回の手続 |
労使協定の有効期間 | 決議の有効期間 |
以下を記録すること 労働時間の状況 健康・福祉確保措置(・・・①)の実施状況 苦情処理処理措置(・・・②)の実施状況 労働者の同意・その撤回(・・・③) | 以下を記録すること 労働時間の状況 健康・福祉確保措置(・・・①)の実施状況 苦情処理処理措置(・・・②)の実施状況 労働者の同意・その撤回(・・・③) |
対象労働者に適用される評価制度・これに対応する賃金を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明をすること |
参考
ビジネスガイド2024年2月号6頁
裁量労働制の効果
実際の労働時間が、労使協定の労働時間を超えても、協定に定められた時間を越えた分の時間外割増賃金は発生しません。
労働基準法38条の3 専門型裁量労働制 1項 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす。 一 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。) 二 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間 三 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。 四 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。 五 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。 六 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項 2項 前条第3項の規定は、前項の協定について準用する。 |