トラック業界と、歩合給
2024/04/10 更新
運送業と歩合給
(1)運送業の場合には、運転手は外に出て働いており、会社としては仕事をしているのか把握は困難です。
(2)時間を基準に賃金を支払うと、ゆっくり走った人が賃金が多くなってしまいます。しかし、会社としては、てきぱき多くの仕事をした人に賃金を多く支払いたいのが本音です。このため、残業代を計算して賃金を支払うのは難しい業態です。
(3)運送業の場合には、ドライバー不足のために、会社の立場は強くありません。提示する条件が悪ければ、ドライバーは他社に移ってしまいます。
したがって、人件費率でいえば、残業代を支払ったのと同等以上の賃金を支払っている会社がほとんどです。
(4)そこで、残業代対策としてどのようなに賃金を支払うか問題となります。
令和2年3月30日判決(判例タイムズ1476号49頁)
1 賃金体系
問題となった賃金設計は以下のとおりです。(なお、実際の事例より簡略化させています。)
支給額 = 基本給等
+割増賃金
+歩合給(=対象額A-割増賃金)
なお、対象額A=売上高等の一定割合に相当する金額
つまり、実質的な支払額は、基本給等 + 対象額Aとなる
2 解説
(2)本判決は、「本件賃金規則の定める上記の仕組みは,その実質において,」「元来は歩合給として支払うことが予定されている賃金(対象額A)を,その一部につき名目のみを割増金に置き換えて支払うこととするものというべきである」と評価して、残業代の支払いにあたらない、と判断しました。
賃金制度
上記の判例に反しない形で、残業代制度を以下のように応じて、歩合比率を下げる賃金体系がありえます。
支給額 = 売上 × 歩合率(30%)+残業代
残業代
残業代はデジタコで計算します。
休憩時間は、従業員の自己申告に任せます。
なお、打刻が不自然な従業員については、指導したり横乗りしたりして打刻の適正をチェックします。
歩合率
残業時間が50時間を超えたら、歩合率を20%に。
残業時間が60時間を超えたら、歩合率を17%に。
と決めて、残業時間が増えることで歩合率を下げていいきます。
労働時間の管理
従業員の健康を管理する必要があるので、総労働時間は関して、一定時間を超えれば走らせない、等の対応が必要です。
社内において、仕事の単価を明確に決めて、これ以下の金額では受けないようにします。賃金が低い仕事を受けることは長時間労働に繋がります。
労働時間が不規則になれば、従業員の睡眠リズムが狂う可能性があります。仕事の時間は一定の範囲に留めるような規則がある方がよいです。