フレックスタイム制の概略
2025/05/08 更新
フレックスタイム制の概略
(1)ある期間の所定労働時間の平均が法定労働時間を超えない場合、フレックスタイム制は、ある期間の総労働時間を決めた上で、出社時間と退社時間を労働者の判断に委ねる制度です。
(2)時間外労働の計算において、その期間の日の労働時間が8時間を超えても、その期間の週の労働時間が40時間を超えても、法定労働時間を超えたとの扱いをしないで、総労働時間の総枠を超えた時間が時間外労働となる制度です。
フレックスタイム制の手続
(1)フレックスタイム制を導入するには、以下の手続が必要です(就業規則型)。
① 就業規則で、フレックスタイム制を導入することを定めること
②社員の過半数代表との間で、労使協定で以下のことを合意すること
(ア)対象となる労働者の範囲 (イ)清算期間 (ウ)清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間) (エ)標準となる1⽇の労働時間 (オ)コアタイム(任意) |
③ 労使協定の有効期間を定めて、労働基準監督署に届け出ていること
(労使協定を労働基準監督署に届け出ることは効力要件ではない。)
(2)法定労働時間の総枠があるので、総労働時間は、以下の労働時間に枠内におさまっていることが必要です。
1ヶ月の歴日数 | 労働時間の総枠(40時間制の場合 |
28日 | 160時間 |
29日 | 165.7時間 |
30日 | 171.4時間 |
31日 | 177.1時間 |
(3)コアタイムは、フレックスタイム制で従業員が必ず勤務しなければならない時間帯のことをいいます。会議等でコミュニケーションをとる必要がある場合には、コアタイムを設定します。なお、コアタイムを設定するかどうかは自由に決めることができます。
(4)労働条件通知書に定めなくても、フレックスタイムを利用できます。
しかし、社員の理解を得ること考えれば、雇用条件において以下の事項を記載したほうがよいでしょう。
参考
佐々木 宗啓 ほか「類型別 労働関係訴訟の実務〔改訂版〕I」223頁以下
(2)労働条件通知書に定めなくても、フレックスタイム制を利用できます。
しかし、社員の理解を得ること考えれば、雇用条件において以下の事項を記載したほうがよいでしょう。
雇用条件通知書の記載例
「デザイナーの所定労働時間は、フレックスタイム制を導入し、同制度内で出勤時間と退勤時間を自由に決めれるものとする。」
フレックスタイム制の効果
(1)フレックスタイム制において、総労働時間の範囲内にある限りは、その期間の日の労働時間が8時間を超えても、その期間の週の労働時間が40時間を超えても、法定労働時間を超えたとの扱いをしません。
(2)下記は、変形労働時間制の図ですが、考え方は同じです。

(3) 早朝深夜割増賃金は、これを適正に計算し、これを支払う必要があります。
(4)法定外休日割増賃金は、これを適正に計算し、これを支払う必要があります。
参考HP
https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/content/contents/001465156.pdf
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/2014318104110.pdf
労働基準法32条の3 1項 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。 一 この項の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲 二 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。) 三 清算期間における総労働時間 四 その他厚生労働省令で定める事項 2項 清算期間が一箇月を超えるものである場合における前項の規定の適用については、同項各号列記以外の部分中「労働時間を超えない」とあるのは「労働時間を超えず、かつ、当該清算期間をその開始の日以後一箇月ごとに区分した各期間(最後に一箇月未満の期間を生じたときは、当該期間。以下この項において同じ。)ごとに当該各期間を平均し一週間当たりの労働時間が五十時間を超えない」と、「同項」とあるのは「同条第一項」とする。 3項 一週間の所定労働日数が五日の労働者について第一項の規定により労働させる場合における同項の規定の適用については、同項各号列記以外の部分(前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)中「第三十二条第一項の労働時間」とあるのは「第三十二条第一項の労働時間(当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、労働時間の限度について、当該清算期間における所定労働日数を同条第二項の労働時間に乗じて得た時間とする旨を定めたときは、当該清算期間における日数を七で除して得た数をもつてその時間を除して得た時間)」と、「同項」とあるのは「同条第一項」とする。 4項 前条第二項の規定は、第一項各号に掲げる事項を定めた協定について準用する。ただし、清算期間が一箇月以内のものであるときは、この限りでない。 |