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休憩時間

2023/03/22 更新

(1)休憩時間は、労働者にとって労働から離れて、自由に利用することが権利として保障されている時間です。(2)拘束時間(仕事を始めた時間から、仕事が終わった時間まで)から、休憩時間を控除した時間が労働時間です。

休憩時間と裁判

(1)休憩時間の有無が争いになる場合には、不活動時間(仕事をしていない時間)の有無と、不活動時間が手待ち時間にあたるか、の2点が問題となります。
(2)手待ち時間は、現実に作業に従事はしていないが、作業を開始するべきタイミングになれば、直ちに作業に開始できる状態で待機している時間です。手待ち時間は労働時間です。

不活動時間

 不活動時間とは、就業の途中において、業務をしていない時間です。この時間が労働時間なのか、それとも休憩時間であるかはケースバイケースで決まります。

従業員側弁護士のよくある主張

(1)三菱重工業長崎造船事件(最判平成12年3月9日、民集56巻2号361頁)は、「不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていなかったものと評価することができる。したがって、不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労働基本上の労働時間にあたり、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえない。」との表現を使っています。

(2)従業員側の弁護士からは、「昼休みの時間帯に電話が鳴れば電話に出るように指導されていた場合には、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていから、手待ち時間(労働時間)である。」との主張されることがありますが、実際の判断はそんなに単純なことではありません。

 なお、実際に電話がかかってきてこれに対応する時間はもちろん、労働時間であることに争いがありません。

(3)例えば、昼休みの時間帯に電話が鳴れば電話に出るように指導されていたが、実際に電話がかかってくることがほとんどないなく、携帯電話への転送等が認められており、昼休み休憩にコンビニに行くことが認められているようなケースでは、休憩時間とされるでしょう。

労働時間にあたるかどうかの基準

お店に待機して、来客があれば即時の対応を義務付けられている場合

(1)飲食店でお客が途切れた時間に、適宜休息していたとしても不活動時間は働時間である(大阪地判昭和56年3月24日労経速1091号3頁 すし処「杉事件」)。

(2)平日については、来客対応を義務付けられ、来客があった場合には随時対応することが義務付けられており、管理人室等で待機ずることが義務付けられており、労働時間にあたる。(最判平成19年10月19日民集61巻7号2555頁 大林ファシリティーズ(オークビルサービス)事件)

外出ができるが、電話等を持たされて、電話があれば可能な限り対応することが義務付けられていた場合

(1)お客様からの依頼があれば、可能な限り迅速に現場に赴いて対応することが義務付けられていたが、実稼働時間と不活動時間を比べて不活動時間の占める割合が大きく、不活動時間については携帯を所持して外出し、食事・入浴等などの日常生活を行っていた場合には、労働時間にあたらない(東京地判平成20年3月27日労判964号25頁 大道工業事件)。
(2)奈良県(医師・割増賃金)事件(大阪高判平成22年10月16日労判1026号144頁)も同様の判断をしています。

次の仕事があるまで待機を命じられたら、1、2時間休憩できる時間があり、次の仕事について即時の対応が求められていない場合

 トラックが荷下ろしの作業を終え,次の仕事の指示を待つ間、1時間ないし2時間の時間があり、次の仕事に取り掛かる間、即時の対応を求められていなかった時間は休憩時間である(大阪地判平成18年6月15日労判924号72頁)。

お客が来れば即時の対応が必要な場合

 タクシーが客待ちをしている時間は、30分を超えても労働時間である(大分地方裁判所へ平成23年11月30日判決 中央タクシー事件)。

休憩時間中の外出の許可制

(1)休憩時間を過ごす場所について、許可制であるとしても、その場所で自由に休憩できる場合には、休憩時間となります(昭和23年10月30日基発1575号)。
(2)なお、休憩時間については、労働者が自由に使える時間ですので、正当な理由なく許可しないことはできないでしょう。

参考文献

 商事法務 裁判実務シリーズ 「労働関係訴訟の実務【第2版】」  64頁以下

 青林書房 「類型別労働関係訴訟の実務 改訂版 Ⅰ」      110頁以下

 ビジネスガイド2023年3月号                 60頁以下

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