【固定残業代の有効要件】判例の変遷
2024/02/18 更新
固定残業代
(1)固定残業代とは、会社と従業員との合意を根拠に、特別な手当を残業代として支払うものです。
(2)固定残業代が残業代の支払いとして認められるためには、①基本給と残業代の区分けが明確であること(判別要件・明確区分性)、②当該手当が残業代として支払われているとの合意(対価性)が必要です。
最判平成24年3月8日集民240号121頁
(1)本判決にて、桜井裁判官は、補足意見として、①②に加えて「③固定残業代が、何時間分の時間外労働として支払われるのか、時間を明示すること、④固定残業代によってまかなわれる残業時間を超えて残業が行われた場合には清算する旨の合意が必要である。」という見解を述べています。
(2)同裁判官の意見については、補足意見に過ぎない(最高裁判所の法廷意見ではなく、同裁判官の個人的意見に過ぎない)という考え方と、③④が固定残業が残業代の支払いとして認められるための要件である(もしくは③④の要件を満たさないと有効にならないようになっていく)、という考え方がありました。
最判平成30年7月19日
(1)本判決は、(固定残業手当を含む)当該手当の支払が残業代の支払いにあたるためには、③④の要件は必須ではないことを明確にしました。
(2)本判決は、「(固定残業手当を含む)当該手当の支払いが、時間外労働等に対する対価として支払われていたといえるか、については、契約の内容(当事者の合意)によって決まる。」ことを示した判例となります 。(判例タイムズ1459号30頁の判例評釈)
(3)契約の解釈は、契約書等の記載のほか、会社の説明、従業員の勤務内容等その他を考慮して認定されます。そこで、本判決は、「(固定残業手当を含む)当該手当の支払いが、時間外労働等に対する対価として支払われていたといえるかについても、契約書等の記載のほか、会社の説明、従業員の勤務内容等その他を考慮して判断されることを示した判例です。 (判例タイムズ1459号30頁の判例評釈)
民集259号77頁
判例タイムズ1459号30頁
まとめ
(1)最判平成30年7月19日(判例タイムズ1459号30頁)は、固定残業代の要件が以下のように整理しました。
(2)固定残業が残業代の支払いとして認められるための要件は、①基本給と残業代の区分けが明確であること(判別要件・明確区分性)、②当該手当が残業代として支払われているとの合意があること(対価性)です。
(3)また、②の対価性の判断については、「(固定残業手当を含む)当該手当の支払いが、時間外労働等に対する対価として支払われていたといえるかについても、契約書等の記載のほか、会社の説明、従業員の勤務内容等その他を考慮して判断されることが明確になりました。