固定残業代の有効、無効(ケース2)
2023/08/02 更新
固定残業代とケース
(1)固定残業とは、会社と従業員の合意に基づき、合意に基づいて決めた手当を残業代として支払うものです。
(2)以下のケースで、固定残業代が有効になるか、考えてみましょう。
設問1
事例
(1)雇用契約書が締結されていた。
雇用契約書は、月給制である。
雇用契約書は、「基本給17万円」と記載されていた。
雇用契約書は、「定額残業代2万円」と記載されていた。
(2)毎月の時間外労働は、50時間になっていた。
(3)しかし、会社は、毎月19万円しか支払っていなかった。
質問
「定額残業代2万円」は残業代の支払いとして認められるか。
回答
(1)毎月固定残業代として定額を支払うタイプの場合、法律上で計算した額との差額が大きい場合には無効となりやすいといえます。不足があるのに支払っていない場合には、単に基本給を分割して、基本給と残業代に分けたに過ぎないからです。
(2)本件の場合、例えば、1時間当たりの単価が1000円であるとして、50時間の割増賃金は、6万2500円です。この差額を毎月放置していたのですから、経営者の意図としては、単に基本給を分割して、基本給と残業代に分けたに過ぎないと判断されるでしょう。
(3)したがって、「定額残業代2万円」は残業代の支払いとして認められません。
設問2
事例
(1)雇用契約書が締結されていた。
雇用契約書は、月給制である。
雇用契約書は、「①基本給17万円」「②定額残業代13万円」「①+②の合計30万円」と記載されていた。
(2)毎月の時間外労働は、30時間になっていた。
(3)会社は、従業員の時間管理をしておらず、毎月30万円を支払っていた。
質問
「定額残業代13万円」は残業代の支払いとして認められるか。
回答
(1)毎月固定残業代として定額を支払うタイプの場合、法律上で計算した額との差額が大きい場合には無効となりやすいといえます。不足があるのに支払っていない場合には、単に基本給を分割して、基本給と残業代に分けたに過ぎないからです。
(2)本件の場合、例えば、1時間当たりの単価が1000円であるとして、30時間の割増賃金は、3万7500円です。
(3)このような会社の多くでは、過不足計算をして、残業の未払いの有無もチェックしていません。そのような場合、経営者の意図としては、残業代の支払いを免れるために、単に基本給を分割して、基本給と残業代に分けたに過ぎないと判断されるでしょう。
(4)したがって、「定額残業代13万円」は残業代の支払いとして認められません。